相続の相談は、一つの事務所だけで終わらないことがよくあります。2026年9月に、相続に関わる業種ごとに三つの市の検索結果と地元の事業者のサイトを数えた記録があります。登記は司法書士、申告は税理士、争いになれば弁護士、相続した家の売却は不動産会社の記事にまとめています。九つの業種を横に並べた数字はデータのページにあります。
御事務所に先月来た相談を、一件ずつ「どこから来たか」で分けてみてください。葬儀社から、金融機関の担当者から、顧問先から、広告から、そしてホームページを検索で見つけて直接。最後の箱がほとんど空で、ほかの箱の中身が月によって大きく違うなら、ここに書くのはその状態のことです。分け方を決めていなければ、問い合わせの数え方から始めてください。
紹介と広告の相談は、量を決めているのが事務所ではない
紹介で来る相談は、紹介する側の事情で増えたり減ったりします。葬儀社や金融機関の担当者が替われば、その経路は細くなることがあります。先方が別の事務所とも付き合い始めれば、順番が回ってこなくなることもあります。どちらも、御事務所の仕事の質とは関係のないところで起きます。
広告は、出している間は相談が来て、止めればその月から止まります。量を増やそうとすれば、単価の安い言葉へ広げたくなります。運営に携わっている相続の事務所で数えてみると、単価の安い、確度の低い言葉でいくら問い合わせを取っても、面談に進まずに離れていく相談ばかりが目立ちました(その後どの言葉を残したかは検索広告で、どの言葉にお金を使うかに書きました)。
紹介も広告も、悪いものではありません。問題は一点だけです。相談の入口の蛇口を握っているのが、事務所の外の誰かだということ。紹介は先方の都合で、広告は出稿費と入札の相場で、量が決まります。御事務所の側にできるのは、頼むことと、払うことだけです。
検索から直接来る相談だけが、事務所の側に積み上がる
入口を自分の手に戻す方法は、ほかにもありそうに見えます。紹介元を増やす。広告の出し方を工夫する。けれども紹介元を増やしても、蛇口を握る人の数が増えるだけで、握っているのが外であることは変わりません。広告の工夫は、払い続けることが前提の話です。
残るのは、検索で御事務所のページを読んだ人が、誰も介さずに連絡してくる相談です。この相談の入口は、御事務所が書いたページそのものです。ページは事務所のものとして残り、書いた分だけ入口が増え、誰かの異動でも出稿の停止でも止まりません。紹介と広告への依存から抜ける道は、これしかないと当社は考えています。
反対の立場もあり得ます。紹介だけで受けきれないほど仕事が回っているなら、入口を増やす理由はありません。また、商圏に相続の相談そのものが少なければ、ページを書いても数字は動きません。ここでの話は、紹介と広告の波に振り回されている事務所、あるいは広告費だけが上がっていく事務所の話です。
代わりに、時間がかかります。書いたページが検索に出て、相談につながり始めるまでは月単位です。その間は広告でつなぐ順番になります。実際にどれだけかかったかは、相続の事務所のホームページで、二年のあいだにやったことに数字と時系列で書きました。
相談する人は、「相続」とは検索しない
では、何を書けば検索から相談が来るのか。当社が商圏調査の見本として、浜松市の相続分野を公開情報だけで調べたときの記録(商圏調査の見本:浜松市×相続)に、手がかりがあります。
「浜松 実家 名義変更」と検索すると、1ページ目の三分の一ほどが自動車の名義変更のページでした。親の家を相続したあとの手続きに正面から答えているページは、実質一つか二つしかありません。「相続登記」と入れれば事務所のページが並ぶのに、生活の言葉で入れると、事務所はほとんど出てこないのです。
手続きの名前を知っているのは、専門家の側です。親を亡くしたばかりの人は、自分の状態が何という手続きに当たるのかを、まだ知りません。知らないまま、「実家」「名義」「銀行」といった目の前の困りごとの言葉で探します。事務所のサイトが手続きの名前でページを並べているかぎり、この人たちとは入口ですれ違います。
期限のある手続きでも、同じことが見えました。相続放棄には三か月の期限があり、探す人は急いでいます。それでも「浜松 相続放棄」の上位で、相続放棄の専用ページを持っていた地元の事務所は、確認できた範囲で一つだけでした。ほかは相続全般のページの中の一項目です。
御事務所でも、いま確かめられます。
- 直近の相談を三件思い出して、その方が最初の電話で口にした困りごとを、その方の言葉のまま書き出す。
- その言葉を、まず地域名なしで、次に地域名を付けて、スマートフォンで検索する。御事務所は出てくるか。代わりに出てくるのは、誰のどんなページか。
- 検索窓に「site:御事務所のドメイン その言葉」と入れる。一件も出なければ、その言葉で御事務所にたどり着く入口は、サイトの中にありません。
Search Console を入れているなら、「検索パフォーマンス」のクエリの一覧に、すでに来ている人の言葉が出ています。入れていなくても、上の三つは今日できます。
上位の八つのどれにも、遠方に住む子に向けたページがなかった
見本の調査では、検索結果に繰り返し出てきた地元の事務所を八つ開いて、作りを確かめました。手続きごとのページは、八つのうち七つが持っていました。ところが、県外に住むお子さん向け、遠方から手続きを進めたい人向けのページは、八つのどれにもありませんでした。
相続人が、亡くなった親と同じ町に住んでいるとは限りません。親の家と預金は地元にあり、手続きをする子は遠くにいる。その人が親の地元で事務所を探すとき、手続きの説明より先に知りたいのは「行かなくても進むのか」のはずです。来所は一度は要るのか。郵送と電話でどこまで進むのか。戸籍などの書類は、事務所の側で集めてもらえるのか。平日に休めない人は、いつ相談できるのか。
これを書いている事務所がない、ということは、書いた事務所がその商圏で最初の一つになるということです。上位の事務所と同じ手続きの名前で七つ目、八つ目のページを足しても、差はつきません。誰も答えていない問いに先に答えたページは、紹介元も広告も通らずに、遠くにいる相続人と御事務所を直接つなぎます。検索から直接来る相談を持つ、というのは、具体的にはこういうページを一本持つことです。
ただし、書いてよいのは御事務所が実際にできることだけです。郵送で進められない手続きを進められるかのように書けば、相談は来ても受任で困ります。来所が一度は必要なら、必要だと書いたうえで、その一度で何が済むのかを書けば足ります。
御事務所のサイトに「来所しなくてもどこまで進むか」が一行もないなら、遠方に住む子から見れば、その事務所はまだ候補に入っていません。
