相続の事務所のホームページで、二年のあいだにやったこと

先に、数字を出します

私たちが運営に携わっている相続の事務所のサイトの話です。伴走を始めたのは2023年7月でした。

年間の反響は、2022年の447件から、2025年には645件になっています。同じ期間に、広告費は15%減りました。月間のアクセスは、始めた頃の約4,000ページビュー・3,000ユーザーから、約18,000ページビュー・13,000ユーザーになっています。

ただし、この変化がすべて私たちの仕事によるものだとは申しません。事務所ご自身の取り組みもあります。ホームページの外で起きたことも、分野そのものの動きもあるでしょう。どこまでが何の結果かを、私たちは切り分けられていません。

ですので、この記事は成功事例としては書きません。二年のあいだに何をして、何をやめて、何がうまくいかなかったかという記録として書きます。事務所名と地域は出しません。読んでいただきたいのは、ホームページの運営を誰かに任せようとしている事業者の方と、同じことを自分の事務所でやろうか迷っている所長の方です。

最初にやったのは、直すことではなく数えることでした

始める前、この事務所では反響を「なんとなく」把握している状態でした。電話が今月は多かった、少なかった。そういう感覚です。

これは珍しいことではなく、多くの事務所が同じ状態だと見ています。目の前の案件を回すことが先になるので、何件来たかを記録する時間が後回しになります。

そこで最初にしたのは、ページを直すことでも、デザインを変えることでもありませんでした。数え方を決めることです。

決めたのは、次のことでした。電話と問い合わせフォームから、実際に何件来たのか。そのうち、広告を経由して問い合わせてきた方が何人いたのか。そして、その方たちのうち、どれだけが面談まで進んだのか。記録は、表計算ソフトと、事務所で使っている顧客管理のシステムで管理しました。

特別な道具は使っていません。数え方を決めて、記録して、見返す、というだけのことです。

今日から確かめられること

もし御社でも同じ状態に心当たりがあるなら、今日から始められることがあります。

  • 今月、電話とフォームから何件来たかを、その場で言えるかどうか
  • そのうち、何件が見積もりや面談まで進んだかを、その場で言えるかどうか
  • 問い合わせてきた方が、どこを経由して来たか(広告か、検索か、紹介か)が分かるかどうか

三つとも即答できないなら、数えることから始めたほうが早いと思います。何を直すかを決める材料が、まだ手元にないということだからです。数え方の具体的な手順はホームページからの問い合わせの数え方と、直す前に見るべき数字に別途まとめました。

数えてみると、思っていたのと違っていました

記録を続けていくうちに、一つ分かったことがあります。

広告のキーワードのうち、単価が安いものは、たしかに問い合わせの件数だけは取れていました。ところが、その入口から来た方は離脱が目立ちました。問い合わせはするけれど、面談まで進まない。費用対効果でいうと、微妙でした。

件数だけを見ていたときは、安い言葉は「効率がいい」ように見えていました。一件あたりの単価が低いので、当然そう見えます。面談まで数えるようにして、初めて見え方が変わりました。

これは、この事務所が間違っていたという話ではありません。問い合わせの件数までしか数えていなければ、誰が見てもそう判断します。数えるものを一段先まで伸ばしたから、見え方が変わった。それだけのことです。

逆に言えば、数える範囲を変えない限り、どれだけ広告を調整しても、同じ判断を繰り返すことになります。

やめたことのほうが先でした

分かったあと、最初にしたのは増やすことではなく、やめることでした。

広告費を増やしていく方針をやめました。そのうえで、面談につながっているキーワードだけに絞りました。確度の薄い言葉は、広告から外しています。

外して大丈夫かという話は、当然ありました。件数だけを見れば、減るからです。ここで考えたのは、確度の薄い言葉は、広告ではなく検索の側で受けておけば十分にカバーできるのではないか、ということでした。すぐ依頼にはならないけれど、調べている段階の方。その方たちは、費用をかけて広告で連れてくるよりも、記事を上位に表示させて読んでもらうほうが、構造として合っているという印象を持っています。

結果として、広告費は15%下がりました。ただ、広告を絞るときに気をつけたいのは、一気に止めないことです。一気に止めると、何が原因で数字が動いたのか分からなくなりますし、そもそも相談が途切れる危険があります。広告との距離の取り方については広告を止めると問い合わせが止まる状態から抜け出すにも書きました。

やらないことを決めるのも、判断のうちだと思っています。やることのリストばかりが長くなって、どれも中途半端になる、ということは起こりがちです。減らせるものを先に減らしたほうが、残ったものに手をかけられます。

増やしたのは、書き直しと、相談への道でした

やめたぶんを、どこに回したか。

一つは、記事の書き直しです。サイトの中を確認すると、検索に出ない設定のまま置かれている記事がありました。また、内容が薄いまま公開されている記事もありました。新しく書くより先に、すでにあるものを一本ずつ書き直して、品質を上げていきました。その順番の理由は過去の記事を書き直すべきか、新しく書くべきかに書いています。

もう一つは、相談への導線です。相談への案内を置く、画面に追従する案内を出す、相談用のチャットを設置する。こうしたことを、少しずつ変えていきました。

「少しずつ」と書いたのは、そこが大事だと思っているからです。一度に全部を変えると、数字が動いたときに何が効いたのか分からなくなるからです。

ですので、何が効いたのかを一つに断定することは、私たちにはできません。記事の書き直しが効いたのか、導線が効いたのか、広告を絞ったことで相性のよい方だけが残ったのか。おそらくどれも少しずつ関係しているのだろう、という以上のことは言えません。相続という分野でのWebからの相談の増やし方は相続の事務所がホームページから相談を増やすにはにまとめています。

動き始めるまでに半年、ここまでに二年以上

正直に書いておきたいのは、時間の話です。

数字が動き始めたと感じたのは、始めてから半年ほど経ってからでした。それまでのあいだは、記録を取り、書き直しを続けていても、目に見える変化は多くありませんでした。

そして、先ほど挙げた数字になるまでには、二年以上かかっています。2023年7月に始めて、2025年の集計でそうなった、という話です。

この半年間が、いちばん苦しいところだと思います。費用は出ていくのに、数字は動かない。自分でやっている場合も同じで、記事を書いているのに順位が付かない時期が続きます。ここで止めてしまうと、それまでの分も含めてほとんど残りません。

御社がホームページの運営を誰かに任せようとしているなら、この時間を見込めるかどうかが、実際のところいちばん大きな分かれ目になります。半年で変わる話として提案してくる相手がいたら、何をもって変わると言っているのかを聞いてみてください。

うまくいかなかったこと

うまくいっていないこともあります。

途中で、事務所の中から「SNSもやったほうがよいのではないか」という話が出て、事務所側の判断で始めました。いまのところ、実際の相談にはなかなかつながっていません。担当された方の努力の問題ではなく、相続が中心の事務所とSNSとの相性という構造の問題だと見ています。その構造は士業の事務所は集客のためにSNSをやるべきかに書きました。

この事例から言えることは、あまり多くありません

ここまで書いておいて申し上げにくいのですが、この記録から一般化できることは、そう多くありません。

一つの事務所の、一つの商圏の、相続という一つの分野での話です。同じことを別の商圏でやって同じようになるかは、やってみないと分かりません。相続でも、商圏に十分な世帯数がなければ、書き直しても読む人がいません。すでに強い事務所が何年もかけて情報を積み上げている商圏なら、後から同じ土俵に入っても届かないということもあります。

一つの事務所の二年から言えるのは、半年は動かないと知ったうえで始めるかどうかが、何を直すかより先に決まる、ということだけです。