公開の日に、制作会社から最後の請求書が届きます。そこで、仕事は終わったことになります。その後の半年、一年、問い合わせがほとんど来なくても、それは契約の外で起きていることです。
問い合わせが来ないと、自分の選び方を疑いたくなります。頼む会社を間違えた、予算が足りなかった、作り方が古かった。けれども、私たちはそこから考えません。来ないのは、たいていの場合、誰の失敗でもなく、そういう形の契約と、そういう形の運営の帰結だからです。
納品の日に、契約は終わっています
ホームページの制作の契約は、ふつう、ページを作って公開するところまでを約束します。問い合わせが来るかどうかは、約束の中に入っていません。制作会社が不誠実なのではなく、「作る仕事」と「来るようになるまで運営する仕事」は別の仕事で、これまで売り買いされてきたのが前者だけだった、ということです。
その結果、成果が出るかどうかのリスクは、お金を払った側が一人で持つことになります。来なかったとき、困るのは御社だけです。作った側の売上は、公開の日に確定しています。
ですから、作り直しても同じ場所で止まることがあります。新しいサイトも、同じ形の契約で作られれば、公開の日に同じように手を離れます。直すべきものは、見た目より前に、公開のあと誰が何を続けるのかという取り決めのほうにあります。
届いた問い合わせを、誰も数えていません
公開のあとに報告が届く契約でも、そこに載るのはアクセスの数や検索の順位のように、作った側から見える数字です。問い合わせの件数は、御社の電話とメールに届くので、作った側からは見えません。見えないものは報告に載りません。
御社の中でも、電話を取る人とメールを受ける人が別で、一年分の合計を持っている人がいない、ということが起こります。私たちが運営に携わっている相続の事務所でも、始める前は電話の本数などで「なんとなく」数えている状態でした。何を、どこに記録したかは問い合わせの数え方に書いています。
数えていないと、困ったことに症状が区別できません。人が来ていないのか、来ても動かないのか、届いているのに受けられない相手ばかりなのか。三つはまったく違う状態なのに、どれも「問い合わせが来ない」という同じ言葉になります。そして、違う状態に同じ手を打つことになります。
引き受ける前に、私たちはサイトより先に問い合わせを見ます
相談を受けたとき、私たちが最初に見るのはホームページの画面ではありません。この一年に届いた問い合わせです。何件あったか。電話か、フォームか。そのうち、面談や商談まで進んだのは何件か。見た目は誰でも最初に気になるところですが、見た目からは三つの症状のどれなのかが分かりません。届いた問い合わせのほうが、はるかに多くを教えてくれます。
件数がほとんどないとき
次に分けるのは、人が来ていないのか、来ても動かないのかです。ここで私たちは、社名ではなく、御社を知らないお客様が困ったときに打ちそうな言葉で検索します。そこで御社のページが出てこなければ、読まれる以前の問題です。サーチコンソールを入れているなら、検索結果に表示された回数がほとんどないかどうかで同じことが分かります。表示されているのに問い合わせがないなら、来た人が知りたいことを見つけられずに帰っています。前者について詳しくはアクセスが増えない原因と確かめ方にまとめました。
件数はあるのに、話が進まないとき
見落とされやすいのはこちらです。件数はそれなりにある。けれど中身を読むと、対応していない地域から、扱っていない仕事、折り合わない予算、業者の売り込み。数の上では「来ている」ので、放っておかれます。
原因は、サイトが誰に向けたものかを言っていないことです。何でも引き受けると読めれば、何でも届きます。選り分ける仕事を、御社が毎回手作業でしていることになります。
これは、御社の手元で直せます。扱わない仕事を一行書く。対応できる地域や規模を書く。費用が何で決まるかを書く。書けば件数は減ります。減ってよいかどうかは、書く前の三か月と後の三か月で、届いた件数と面談まで進んだ件数を並べれば分かります。届いた数が減っても、進んだ数が変わっていなければ、それは減ってよかった分です。
次に、その商圏で探している人がいるかを見ます
問い合わせを見たあとで、私たちは商圏を調べます。商圏の規模、検索されている量、検索結果の上位にどういう顔ぶれが並んでいるか、そこに入る余地があるか。
この順番にしているのは、ホームページの外に原因がある場合を、ここで見つけられるからです。その地域でその仕事を探している人が月に数えるほどしかいなければ、サイトをどれだけ直しても届く数は変わりません。上位が別の種類のページで占められていて、入る余地がないこともあります。実際に調べた結果の見本は浜松市と相続の商圏調査で公開しています。
私たちも、自分のサイトに断る一行を書きました
調べた結果、見込みが立たなければ引き受けません。それは、上で御社におすすめした「扱わない仕事を書く」を、私たち自身がしているということでもあります。当社のサイトには、同時に頸かるのは五つの事業まで、同じ商圏で同業は一社だけ、十二か月で見込みがなければ終える、と書いてあります。
どれも、さきほどの構造への答えとして決めたことです。納品で終わる仕事なら、同じ商圏の競合を手伝っても何も困りません。成果に責任を持たないからです。成果が出るまで運営するなら、競合する二社を同時に頸かることはできません。毎月の判断を続けるには、頸かる数にも上限が要ります。報酬の中心を成果が出たあとに置いているのも、来なかったときのリスクを、払った側だけに持たせないためです。
これらの一行を書けば、届く相談は減ります。それでよいと考えています。私たちが欲しいのも、件数ではなく、話が前に進む相談だからです。
御社が今日やることは一つです。この一年に届いた問い合わせを書き出して、面談まで進んだものに印をつけてください。印が一つもなければ、直す場所はサイトの画面より前にあります。印があるなら、御社のサイトは失敗作ではなく、その一件がどこから来たのかを、まだ誰も見ていないだけです。