「税理士 集客」と打って出てくる記事の多くは、得意分野を絞る、ブログを続ける、口コミを集める、といった内容です。間違ってはいませんが、業種の名前を差し替えれば社労士にも司法書士にもそのまま当てはまります。御事務所の町で顧問先になりうる経営者が何と打ち、その1ページ目に誰のページが並んでいるかは、そうした記事からは分かりません。集客できないと感じているときに知りたいのは、たぶんそちらのほうです。
当社はホームページの運営を引き受ける前に、その商圏で検索結果を数えます。税理士事務所について、2026年9月24日に、石川県金沢市、大分県大分市、愛媛県松山市の三つの市で同じやり方を試しました。人口はどれも45万人から50万人の間で、税務署の管内で法人税の申告をした普通法人は、どれも1万2千から1万4千あまりです。規模の近い三つの市を選んでいます。
数えたのは、記帳・申告・顧問・創業の相談先を探す人が打ちそうな九つの言葉の1ページ目と、そこによく出てくる地元の事務所を市ごとに八つ、合わせて24事務所のサイトです。金沢は商圏調査の見本として一本にまとめてあり、この記事では三つの市を並べます。相続税の申告は、同じ税理士の仕事でも探され方がまったく違うので、ここでは扱いません。
限界も先に書きます。使った検索の道具は一つの言葉につき9件か10件を返し、見えるのは題とアドレスだけです。地図枠(地図と事務所の一覧が出る枠)と広告は、三つの市の27回の検索すべてで見えていません。どの言葉が月に何回検索されているかも分かりません。結果は、見る人、時点、地域の設定でも変わります。数え方そのものは検索結果の1ページ目を数えるに書きました。以下は、その範囲で見えた話です。
中心の言葉は三つの市ともポータルが厚く、残った枠の取られ方が違った
地名に「税理士」を付けた言葉と、そこに「顧問料」「確定申告」「会社設立」を足した言葉の四つを、中心の言葉としました。
三つの市でいちばん揃っていたのは「顧問料」です。9件のうち、金沢で6件、大分で7件、松山で6件が、税理士の紹介サイト、比較サイト、会計ソフト会社の税理士検索でした。以下、まとめてポータルと呼びます。地元の事務所に残っていたのは、どの市でも2〜3枠です。
「地名 税理士」だけの言葉では、10件のうち地元の事務所が金沢で4件、大分で3件、松山で5件でした。どの市でも半分に届くかどうかで、残りをポータルと税理士会の検索サイトが分けています。九つ全体で見ると、ポータルが1ページ目の過半を取った言葉は、金沢で五つ、大分と松山で四つずつです。地元が過半を取ったのは、金沢と大分では「記帳代行」だけ、松山ではそれに「会社設立」が加わった二つでした。ただし松山の「会社設立」は、地元の5件のうち4件が二つの事務所によるもので、どちらも事務所名ではなく「会社設立」を名前に掲げた創業専用のサイトを持っていました。同じ形の創業専用サイトは、金沢にも大分にもありました。
市ごとの違いがはっきり出たのは、残った枠を誰が取っているかです。金沢では、一つの事務所が九つの言葉のうち七つに出ていました。大分でいちばん多く出た事務所は四つ、松山は五つです。金沢は少ない枠を一つの事務所が繰り返し取り、大分は枠が散らばっている。この差は、欄ごとの件数を足しただけでは見えません。同じ事務所に印を付けながら数えて、はじめて出てきました。
後から入る事務所にとって、この違いは小さくありません。ポータルは全国の地名ごとに同じ形のページを持っていて、ホームページだけで上から抜くのは現実的ではありません(この向き合い方は地方の会社と全国ポータルに書きました)。そのうえ金沢のように、残った枠を一つの先行者が押さえている町では、中心の言葉で勝負する余地はさらに狭くなります。大分のように散らばっている町なら、同じ言葉でも入り方を考える余地は残ります。
料金を載せていても、「顧問料」で出るのは料金のページとはかぎらない
三つの市を並べていちばん意外だったのは、料金の言葉です。
金沢で開いた八つのうち、顧問料と決算料を表やモデルケースで示していたのは三つだけでした。それなのに「金沢市 税理士 顧問料」でポータルの間に入っていた地元の3件は、三つとも料金のページでした。「確定申告」でも、地元の2件のうち1件は確定申告の料金ページです。金沢の見本では、ここを「金額を具体的に出したページは、ポータルの多い言葉でも地元から入り込めている」と書きました。
大分と松山では、それが見えませんでした。大分の「顧問料」で出ていた地元の2件は、どちらも料金を載せていない事務所のトップページです。料金表を載せている三つの事務所は、この言葉の1ページ目に一件も入っていません。松山はもっとはっきりしていて、八つのうち七つが顧問料の金額を載せていたのに、「顧問料」の地元3件も「確定申告」の地元2件も、すべてトップページでした。
松山では、読み取りの途中でもう一つ気づいたことがあります。金額を載せていた七つのうち五つは、当社がトップページを読んだ段階では金額が見えず、料金のページを開いてはじめて出てきました。「顧問料」と打ってトップページに着いた経営者は、そこから料金のページを自分で探しにいくことになります。
ここから当社が考えているのは、料金を載せるかどうかの先に、もう一つ分かれ目があるということです。料金のページが、「地名と顧問料」で探す人が最初に着くページになっているかどうか。金沢では料金のページが出て、大分と松山では出なかった理由は、外から見ただけでは分かりません。ページの題の付け方なのか、中身なのか、事務所ごとの積み重ねなのか。ただ、「料金を載せたのだから、探している人に届いている」とは言えないことは、三つの市を並べるとはっきりします。料金を載せるかどうかの判断そのものは料金を載せるべきかに、税理士事務所の顧問料のページをどう作るかは顧問料のページについての記事に分けて書きました。
「変更したい」「頼むべきか」に正面から答える地元のページは、どの市にもなかった
迷っている段階の言葉を二つ入れています。「地名 税理士 変更したい」と「地名 個人事業主 税理士 頼むべきか」です。
ポータルの厚さは、中心の言葉と同じか、それ以上でした。「頼むべきか」は、金沢と大分で9件中8件、松山で6件がポータルです。「変更したい」は、金沢と大分で7件、松山で5件。地元の枠は、金沢と大分がどちらの言葉も1件ずつ、松山が「変更したい」で4件、「頼むべきか」で3件と、松山だけ少し広くなっていました。
その地元の枠を開くと、三つの市で同じことが起きていました。出ていたのは事務所のトップページか料金表で、税理士を変えるにはどうすればよいか、個人事業主が税理士に頼むべきかどうか、という問いそのものに答えるページは、二つの言葉と三つの市、六つの1ページ目のどこにもありませんでした。
事務所の側に、そのページがないわけではありません。税理士の変更についての専用ページを持っていたのは、金沢で八つのうち四つ、松山で一つ、大分ではゼロでした。金沢の四つは、どれも「変更したい」の1ページ目に出ていません。松山の一つも、トップページが4件並んだその言葉に入っていません。ページはあるのに、その言葉では出てこない。ポータルの「おすすめ◯選」に押し出されているのか、探す人の言葉で書かれていないのかは、この範囲では分かりません。
当社は、ここが税理士事務所のホームページで、地元からいちばん答えやすい場所だと考えています。ポータルは、おすすめの税理士を並べることはできても、「いまの税理士を変えないほうがいい場合」や「まだ頼まなくてもよい段階」を書く理由を持ちません。事務所なら、自分に不利な答えも含めて書けます。変えないほうがいい場合まで書いてある事務所にこそ、変えたい人は相談しやすくなる、というのが当社の見立てです。書き方は税理士の変更のページについての記事で具体的に扱いました。
ただし、この二つの言葉を月に探す人は、町によっては数人しかいない可能性があります。検索回数を見ていない以上、「空いている」と「探す人が少ない」を、まだ区別できていません。
創業と法人化の言葉には、地元の事務所がゼロの市があった
顧問先が生まれる変わり目の言葉として、「地名 創業融資 相談」と「地名 法人化 タイミング 相談」も数えました。
金沢では、どちらの言葉にも地元の事務所が3件ずつ入っていました。大分と松山では、どちらもゼロです。大分の「創業融資 相談」には地元から2件出ていますが、金融機関と共有オフィスのページで、税理士事務所ではありません。
空いた場所を何が埋めているかは、言葉によって違いました。「創業融資 相談」は、三つの市とも、市役所や商工会議所、公庫などの公的なページが4〜5件を占めています。この言葉の1ページ目は、もともと公的な窓口の場所です。
「法人化 タイミング 相談」は様子が違います。大分では9件中5件、松山では8件が、福岡、大阪、名古屋、東京、京都、神戸といった他の町の事業者の記事でした。地名を入れて検索しても地元の事務所の答えは一つもなく、他の町の税理士が全国向けに書いた記事が並んでいる。個人事業主が、法人にするかどうかを近くの税理士に聞きたいと思って打つ言葉に、その町から答えているページがない、ということです。
金沢の見本では、創業の言葉を「余地が狭い」と書きました。会社設立は9件中7件がポータルで、創業融資は公的機関が過半を占め、地元から入っていたのは創業専用のサイトを別に立てた事務所だったからです。大分と松山の「法人化」は、それとは違う空き方をしています。ポータルでも公的機関でもなく、他の町の一般論が埋めている。探す人の数が分からないという留保はここにも付きますが、自分の町で実際に受けてきた法人化の相談の中身で答えられる事務所なら、並んでいる記事との違いを出せる場所です。
24の事務所を並べると、市ごとに「当たり前」が違った
八つずつ、同じ項目でサイトを確かめました。
顧問料の金額が読み取れたのは、金沢で三つ(ほかに一部の金額だけを出していたのが二つ)、大分で三つ(一部だけが一つ)、松山で七つです。相談の入口は、電話とフォームならほぼすべての事務所にありました。LINEで相談を受けていると確かめられたのは、金沢と大分でゼロ、松山で三つ。オンライン面談の明記は、金沢で一つ、大分でゼロ、松山で五つでした。税理士の変更についての専用ページは、先に書いたとおり、金沢四つ、大分ゼロ、松山一つです。
クラウド会計は、会計ソフトの名前を挙げて対応を書いていたのが、金沢で三つ、大分で二つ、松山で四つ。大分の二つは、どちらも同じ会計システムの会社の製品名だけでした。2026年9月に入ってからの記事が確かめられたのは、金沢で三つ、大分で一つ、松山で三つ。お客様の声や事例の掲載が見当たらない事務所は、金沢で二つ、大分で五つ、松山で四つありました。
同じ税理士事務所でも、町によって「当たり前」の水準がこれだけ違います。松山では、料金も、LINEも、オンライン面談も、もう珍しくありません。そこで料金を載せても、隣の事務所との差にはなりにくい。大分では、変更のページを持つ事務所が一つもなく、料金を載せているのも三つだけです。どこかの町でうまくいった形をそのまま持ち込むより、御事務所の町でよく出てくる八つを並べて、その町で何が欠けているかを見るほうが、次に作る一枚を決めやすいと考えています。
24の事務所に共通していた空白もあります。周辺の市町ごとの専用ページを持つ事務所は、24のうちゼロでした。対応地域として周辺の市町名を並べる事務所は、どの市にも二つか三つあります。ただ、この空白の価値は町によって違います。金沢には人口も世帯も増えている隣の市町がありますが、大分と松山の周辺では、確かめた範囲で人口の増えている市町は見当たりませんでした。周辺市町の言葉では検索していないので、ここは仮説のままです。
なお、税理士の広告に何が書けて何が書けないかは今回、公式の資料で確かめていないので、料金や事例の見せ方を変えるときは、所属する税理士会の規則を確かめてから進めてください。
ホームページが効きにくい事務所と、それを今日見分ける方法
ここまで数えて、当社の立場ははっきりしています。税理士事務所がホームページに手を入れるなら、「地名 税理士」でトップページを上げようとするより先に、料金、変更、頼むべきか、法人化という問いに、一枚ずつ正面から答えるページを置くことです。三つの市とも、中心の言葉はポータルの場所で、問いの言葉には地元の答えがありませんでした。
反対の考え方もあります。顧問先は紹介で決まるのだから、ホームページは紹介された人が確かめに来たときに安心できれば足りる、というものです。紹介が十分に回っている事務所にとっては、これが当たっていると思います。そういう事務所が、ポータルの厚い言葉に時間をかけても、紹介より早く顧問先が増えるとは言いにくいです。
ほかにも、効きにくい場面を数えた範囲で挙げておきます。料金を出したくない事務所は、料金の言葉で戦う場所がありません。金沢の「記帳代行」は9件中8件が地元で、税理士以外の事業者まで入っていて、後から入る場所ではありません。「創業融資 相談」は公的な窓口の場所です。そして、空いて見える言葉が、探す人の少ない言葉である可能性は、どこにでも残ります。どの事務所に顧問先が何件あり、紹介でどれだけ来ているかも、外からは分かりません。サイトが薄い事務所が繁盛していない、という意味ではありません。
御事務所の場合にどちらなのかは、道具がなくても、スマートフォンで今日見分けられます。当社が三つの市で差を見た順です。
- 「地名 税理士 顧問料」で検索し、1ページ目の地元の枠が、料金のページなのかトップページなのかを見ます。御事務所が料金を載せているのに出ていない、あるいはトップページで出ているなら、料金のページを開いて、最初に目に入る場所に金額があるかを確かめます。
- 「地名 税理士 変更したい」と「地名 個人事業主 税理士 頼むべきか」で検索し、問いそのものに答えている地元のページがあるかを見ます。御事務所に変更のページがあるなら、それを開き、最初の三行に、変えようか迷っている人の言葉が入っているかを読みます。
- 「地名 法人化 タイミング 相談」で検索し、地元の事務所が何件あるか、他の町の記事が何件あるかを数えます。
- 四つの検索を通して、御事務所が何回出たか、同じ事務所が何回出ていたかに印を付けます。
四つとも、地元のどこかの事務所がすでに問いに答えたページで埋まっていて、御事務所がそこに足せる中身もないなら、ホームページより紹介の流れを整えるほうに時間を使う場面です。一つでも、答えのない問いが見つかり、その問いに御事務所が実際に受けてきた相談で答えられるなら、最初に作るのはそのページです。トップページを整えるのは、その後で遅くありません。
この記事にたどり着いた道筋
この記事は、「税理士 集客」のような、業種と悩みを掛け合わせた言葉で読まれることを想定して書いています。その言葉で検索すると、上位には業種名を入れ替えただけの一般論が並びやすいものです。そこに、三つの市で実際に数えた中身のあるページを置きました。
御事務所のお客様になる経営者も、同じように探しています。「松山 税理士 変更したい」「大分 法人化 タイミング 相談」のように、地域と用件と迷いを掛け合わせた言葉です。当社が御事務所の商圏でするのは、それと同じことです。誰が上位にいて、どこが空いていて、御事務所が実際に知っていることで答えられる場所はどこかを数え、そこにページを置く。見込みが立たなければ、調べた結果とともにそうお伝えします。調べ方の中身は商圏調査に書いています。