当社は2026年9月24日に、九つの業種で、地元の事業者のサイトを同じ項目で開きました。お客様の声を載せている事業者が少なかったのは、士業の側でした。
弁護士は新潟市・松江市・旭川市の24事務所のうち5、司法書士は岡山市・富山市・甲府市の20事務所のうち6、行政書士は熊本市・静岡市・宇都宮市の24事務所のうち5、社会保険労務士(以下、社労士)は福井市・仙台市・沼津市の19事務所のうち2が、声を載せていました。税理士は金沢市・大分市・松山市の24事務所のうち、声か事例を載せていたのが13です。同じ日に開いた工務店は24社のうち16、不動産会社は21社のうち14が声を載せていました。業種ごとに確かめ方が少しずつ違うので割合での比較はしませんが、差の向きははっきりしています。
士業の声が少ないのは守秘の義務があるからだ、とよく言われます。決まりを並べてみると、半分は当たっていて、半分は違いました。当社の立場を先に書きます。士業のサイトは、声を集めることから始めない。事務所の言葉で、依頼者が特定されない事例を書くことから始め、声は本人の了解が取れたものだけを、手を入れずに載せる。
社労士に絞った話は社労士のホームページに事例と声がないときに書いたので、ここでは五つの士業を並べます。
五つの決まりが、声と事例に求めていること
当社は法律の専門家ではありません。以下は、公開の資料を当社が読んだ範囲で、詳しくは士業ごとの規程のページにあります。
行政書士法第12条、社会保険労務士法第21条、税理士法第38条は、業務で知った秘密を漏らすことを、その資格でなくなった後も含めて禁じています。この三つの士業では、事例や声を名指しした決まりは、当社が読んだ範囲に見当たりませんでした。守秘の義務から、依頼者の了解と、特定されない書き方が前提になります。税理士は、古い版の運用指針(平成14年版の写しで、現行と同じとは限りません)に、委嘱者の氏名は書面による同意を得れば表示できるという箇所がありました。
弁護士と司法書士は、広告の規程の中に、事例を載せる条件が書かれています。
弁護士は、日本弁護士連合会の業務広告に関する規程第4条が、過去の事件と受任中の事件を、依頼者の書面か電磁的方法による同意がある場合、広く知られた事件である場合、または依頼者が特定されず、かつ依頼者の利益を損なうおそれがない場合を除いて表示できないとしています。顧問先や依頼者の名前は、同意がなければ出せません。
司法書士は、読めた福岡県司法書士会の規則の新しい版(令和6年10月の改正までを含むもの)が、依頼者の書面の同意がある場合と、依頼者が特定されず利益を損なうおそれがない場合に表示できるとしています。古い版は、同意がある場合に限る書き方でした。会ごと、版ごとに違いうるところです。
声そのものについては、弁護士の指針が、実在の依頼者が関わっていない文章を「お客様の声」として載せること、表示どおりに解決しなかった事例を脚色して載せることを、事実に合致しない広告の例に挙げています。司法書士の山形県司法書士会の運用指針も、実在しない推薦文や体験談の虚偽を、同じ例に挙げています。
並べると、事例には「特定されない書き方なら載せられる」という道が、弁護士と司法書士では条文に書かれています。声には、その道がありません。声は依頼者本人の言葉なので、本人が関わらなければ作れないからです。
ステマの告示と、事務所が選んで載せる声
士業に限らない決まりもあります。景品表示法の告示「一般消費者が事業者の表示であることを判別することが困難である表示」で、2023年10月1日に施行されたステルスマーケティングの規制です。
当社がこの告示との関係を確かめたのは、行政書士、社労士、税理士の規程のページを書いたときです。その範囲で言えるのは、次のことです。事務所が選んで自分のサイトに載せた声は、事務所の表示として扱われます。作った声や、都合のよい部分だけを切り取った声は、景品表示法の問題になりえます。依頼者に頼んで口コミを書いてもらうと、この規制の対象になりえます。弁護士と司法書士について、当社は会の規程の側の線だけを読んでいて、この告示との関係は確かめていません。
数えた事務所の中には、Googleの口コミの件数を自分のサイトに表示している行政書士の事務所が一つありました。外の口コミを自分のサイトに引いてくるなら、どの口コミを選んで載せているのか、頼んで書いてもらったものが混ざっていないかを、事務所の側で説明できることが前提になります。
数えた事務所の、声と事例の載せ方
同じ士業でも、市によって差がありました。
弁護士は、新潟の8事務所のうち4が声を載せていたのに対し、松江はゼロでした。新潟には、依頼者が特定されない書き方で、金額を書かずに数十件の解決事例をページ送りで並べる事務所がありました。規程第4条の「特定されず」の道を、そのまま使っている形です。
司法書士は、岡山の8事務所のうち4が声を載せ、そのうち一つは、本体と相続の専用サイトに分けて載せていました。富山では、事例と声を載せていた一つの事務所の話が、どちらも県外に住む相続人が、富山にある親の不動産の相続登記を頼んだものでした。どういう人がこの事務所に頼んでいるのかが、事例一つで伝わります。
行政書士は、熊本で声を載せていた二つが、どちらも会社名を出していて、一つは代表者の名前まで載せていました。
税理士は、声のページを作ったものの中身が表示されていない事務所が、金沢と大分に一つずつありました。依頼した会社の所在の市まで書いた事例もありました。
社労士は、仙台の二つだけで、業種と従業員数だけの匿名の声を数多く並べる形と、会社名と代表者名を出す実名の形でした。
実名の声は、読む人にとって確かめようのある声です。そのぶん、同意の範囲は広くなります。名前を出すこと、文面、載せておく期間まで、書面で了解を取っておくことになります。
声より先に、事務所の言葉で事例を書く
当社が、声より事例を先に勧める理由は三つあります。
一つ目は、上に書いたとおり、決まりの上で道が開いていることです。事例は事務所の言葉で書け、特定されない書き方にできます。声は、本人の了解と本人の言葉がなければ載せられません。
二つ目は、手を入れられるかどうかです。事例は、特定につながる細部を削り、金額を幅にし、時期を年や季節にぼかすことができます。声は、手を入れた時点で本人の言葉ではなくなり、脚色の側に寄ります。
三つ目は、読む人が知りたいことに近いことです。相談を迷っている人が知りたいのは、自分と同じような状況の人が、何を頼み、どのくらいの期間と費用で、どうなったかです。事例なら、その順に書けます。
書くときに当社が先に決めるのは、削る項目です。名前、町の名前、日付、金額の端数、珍しい職業や家族の構成。小さな市ほど、組み合わせで人が分かりやすくなります。削ったあとに残ったものが、事例の本文になります。
声を載せるのは、そのあとで間に合います。事例を読んだ依頼者から「自分の話を載せてもよい」と言われたときに、同意を書面で取り、本人の言葉のまま載せます。
公開前に確かめること
- 御事務所のサイトで、声と事例の件数を数えます。本体と専用サイトの両方で数えます。
- 声の一件ずつについて、同意の書面か記録があるかを見ます。実名なら、名前を出すことまで同意に含まれているかを見ます。
- 事例の一件ずつについて、名前、町、日付、金額、職業の組み合わせで依頼者が分からないかを、地元の人の目で読みます。
- 頼んで書いてもらった口コミや、外のサイトから引いた口コミが載っていないかを見ます。
- 声や事例のページが、中身のないまま公開されていないかを見ます。
士業ごとの決まりは、弁護士の広告規程、司法書士の広告規則、行政書士の広告規制、社労士の広告規制、税理士の広告規制にまとめています。業種ごとの数の全体は9業種・27の商圏のデータに、三つの市の司法書士の事務所の様子は司法書士のホームページ集客に書きました。
1で数えた声がゼロなら、声を頼むより先に、最近終わった一件を、削る項目を決めてから事例として下書きしてみてください。