当社は法律の専門家ではありません。この記事は、日本弁護士連合会の公開資料を当社が読んで整理したものです。書く前に、所属の弁護士会で確かめてください。
「弁護士 広告規程」で出てくる記事の多くは、使ってはいけない言葉の一覧です。「専門」「No.1」「完璧」を避ける、という話は、たしかに規程と指針に沿っています。ただ、2026年9月にこの記事のために公開資料を読み直して、言葉の一覧より先に確かめてほしいことがあると考えるようになりました。お金の流れと、相談の受付です。
理由は日付にあります。規程は2025年12月に改正され、2026年7月1日からは、広告に関する業務を頼んだ業者との契約書と、その契約の入出金の記録も、3年保存する対象になりました。ホームページの制作や運用を外に頼んでいる事務所には、言葉を直すだけでは済まない決まりです。
決まりは三つの文書と、ポータルについての指針
弁護士の広告の線を引いているのは、日弁連の次の文書です。どれも日弁連または弁護士会が公開している資料で読みました(要約を介して読んだ部分があり、条文の番号は読めた範囲で書いています)。
- 弁護士等の業務広告に関する規程(会規第44号。平成12年3月24日制定、最終改正は令和7年12月5日)。会規なので、守る義務のある決まりです。禁止される広告(第3条)、表示できない事項(第4条)、訪問や電話による広告の禁止(第5条)、表示しなければならない事項(第9条、第9条の2)、記録の保存(第11条)、弁護士会の調査と中止の命令(第12条)などを定めています。
- 業務広告に関する指針(平成24年3月15日理事会議決。改正は平成26年、平成30年、令和3年、令和7年2月20日、令和8年2月19日)。規程をどう読むかを、例を挙げて示した解釈の文書です。「専門」の表示や報酬の書き方の具体例は、ほとんどこちらにあります。
- 弁護士職務基本規程(会規第70号)。広告で虚偽や誤導にわたる情報を出さないこと(第9条)のほか、報酬を弁護士でない者と分けないこと(第12条)、依頼者の紹介を受けたことへの対価を払わないこと(第13条)を定めています。外に払うお金の形は、ここに関わります。
- 弁護士情報提供ウェブサイトへの掲載に関する指針(平成30年1月18日議決・施行)。弁護士を探すポータルに載るときの線です。
規程の題名は、以前の長い題名(弁護士及び弁護士法人並びに外国法事務弁護士及び外国法事務弁護士法人の業務広告に関する規程)で紹介されていることがあります。当社の社内の資料も、最初はその題名で書いていました。日弁連が現在公開しているPDFの題名は「弁護士等の業務広告に関する規程」で、会規の一覧には、これとは別に「外国法事務弁護士等の業務広告に関する規程」が載っています。改称の時期は確かめていません。
各地の弁護士会が独自の定めや運用を持っていることもありえます。当社が数えた三つの市の弁護士会については、確かめていません。
ホームページの項目ごとに:書ける、条件つき、避ける
料金と相談料
料金は書けます。指針は、着手金の金額と支払時期、報酬金の割合と算定の方法、支払時期まで書いた表示例を挙げています。
条件つきになるのは「〜」と「0円」です。「着手金◯万円〜」は、実際には表示を著しく超える着手金を受け取っている場合に誤導に当たるとされています。「着手金0円」は、手数料や管理料などの名目で別に受け取るなら、その旨を明瞭に書かないかぎり誤導の例です。実費を別に受け取るなら、その旨を明記することが望ましいとされています。
避けるのは、「割安な報酬で事件を受けます」「業界最低水準の弁護士報酬」の形で、指針に例として挙がっています。
相談料を取らない案内も、広告です。指針は、無料の法律相談に限る相談会であっても、その後の相談や依頼につながりうるので顧客を誘う目的があり、広告に当たるとしています。取らないと書くなら、取らない範囲を実際のとおりに書くことになります。
事例、実績、お客様の声
過去の事件は、依頼者の書面か電磁的方法による同意がある場合、広く一般に知られている事件、または依頼者が特定されず、かつ依頼者の利益を損なうおそれがない場合を除いて、表示できません(規程第4条第4号)。受任中の事件も同じ形の線です(第3号)。顧問先や依頼者の名前は、同意がなければ出せません(第2号)。訴訟の勝訴率は表示できません(第1号)。
指針は、表示どおりの解決にならなかった事例を脚色して載せること、実在の依頼者が関わっていない文章を「お客様の声」として載せることを、事実に合致しない広告の例に挙げています。高額の獲得例に「あなたも可能です」と添える書き方や、件数を延べでふくらませる書き方は、誇大な広告の例です。
弁護士会は、事実に合致しない疑いのある広告について、事実であることの証明を求めることができます(規程第12条)。件数や金額を書くなら、その根拠を手元に残しておく前提です。
専門、比較、最上級の言葉
「専門」「専門分野」の表示は、客観性が担保されないまま表示すると誤導のおそれがあるので、控えるのが望ましいとされています。「スペシャリスト」「プロ」「エキスパート」も同じ扱いです。「取扱い分野」「取扱い業務」は評価を伴わない表示として認められ、「積極的に取り組んでいる分野」「関心のある分野」という言い方が勧められています。「得意分野」は主観の表示として認められますが、実際に得意でない分野を書けば別です。
「最も」「一番」、「完璧」「パーフェクト」は注意が要る語、「常勝」「不敗」のように結果を保証させる語は使えない語として挙がっています。特定の事務所と比べる広告は禁じられていて(規程第3条第5号)、名前を出さなくても特定の事務所を指すと分かれば当たります。
不安をあおる書き方と、診断の仕組み
困惑させたり、過度な不安をあおったりする広告は禁じられています(規程第3条第4号)。指針の例は「今すぐ請求しないとあなたの過払金は失われます」や、強硬な取立ての体験記を載せて、依頼しなければ同じ目に遭うかのように思わせる債務整理の広告です。
借金の減額や慰謝料を計算させるページで連絡先を入力させても、その人は「面識のない者」のままで、承諾を得たことにもならないとされています。あとから電話や訪問をすれば第5条第1項、メールやメッセージを送れば第5条第2項に反します。
弁護士に特有の表示の義務
氏名と所属弁護士会の表示が要ります(第9条)。弁護士法人は、名称、主たる法律事務所の名称、所属弁護士会です。分野ごとに別のサイトを立てているなら、その一つ一つが広告です。
電話や電子メールなどの通信手段で受任する事務を広告するときは、受任する事務の範囲、報酬の種類・金額・算定方法・支払時期、途中で契約を解除できることと、そのときの清算の方法を表示しなければなりません(第9条の2)。来所せずに受ける債務整理などを案内するページは、これに当たりえます。
ポータル、外部の業者、記録の保存
ポータルの掲載料は、紹介を受けた事件の数や、その事件の着手金・報酬金の額に応じて決まる形なら、報酬目的があるものとして掲載してはならない類型です。登録や掲載の期間、スペースに従って客観的かつ定額に決まる対価にとどまるなら、報酬目的があるとは推定されません(情報提供ウェブサイトの指針)。
規程に反する情報発信を第三者がしているとき、そこにお金を払ったり協力したりすることも禁じられています(規程第8条)。指針は、成果に応じて報酬が生じるインターネット広告や、検索対策のために第三者が管理するサイトを使う場合、その広告配信の方針や報酬が生じる条件を書いた資料を保存するものとしています。
保存の対象は、広告物かその複製、広告の日時や方法の記録、広告業者との契約書などと入出金の記録、事例や依頼者の表示の同意を示す書面か電磁的記録で、期間は広告を終えてから3年です(規程第11条)。契約書と入出金の記録の部分は、令和8年7月1日から施行されています。
三つの市の24事務所で見た書き方
当社はこれまで9つの業種、27の商圏で、検索結果と地元の事業者のサイトを同じ項目で数えてきました。弁護士はそのうち新潟市、松江市、旭川市の三つで、各8事務所、合わせて24事務所のサイトを2026年9月24日に開いています。規程に照らして適否を判断したのではなく、書き方の傾向として見たものです。
相談料の書き方は、ほかの士業とはっきり違いました。24のうち13が、借金、交通事故、相続などの分野を限って、初回の相談料をいただかないと書いていました。分野を限らない書き方は一つだけで、それも初回の30分までです。確かめられた範囲では、条件をまったく書かずに相談料を取らないと書いた事務所は、24の中にありませんでした。同じ日に数えた司法書士の20事務所では、相談に費用がかからないと書いたのが14、そのうち少なくとも6は条件を書いていませんでした。弁護士のサイトでは、取らない範囲を書く形がほぼ定着しています。
料金は、24のうち11が着手金・報酬金を金額で載せていて、そのうち少なくとも8は「〜」の付く金額を含んでいました。多くは、経済的利益の割合による段階表に最低の着手金を添える形か、分野ごとの定額です。交通事故で「着手金なし」と書く事務所も二つありました。指針に照らして見るのは、その場合に報酬の側がどこまで書かれているかです。
解決事例は24のうち6、お客様の声は5で、事例の件数を数字で掲げる事務所はありませんでした。三つの市の1ページ目には「◯◯に強い弁護士」という題が多く並びましたが、その多くはポータルの題です。地元の事務所の分野の専用サイトにも、題に「強い」を使うものがありました。分野の専用サイトを持つ事務所は24のうち4つです。
外に運用を頼むときに確かめること
言葉は、書いたあとに読み返せば直せます。お金の形と受付の形は、契約を結んだ時点で決まっていて、あとから一文を直しても変わりません。
一つ目は報酬の形です。業者への支払いを、問い合わせの件数、受任の件数や額、売上に連動させない。職務基本規程は、依頼者の紹介を受けたことへの対価(第13条)と、報酬を弁護士でない者と分けること(第12条)を禁じています。ポータルの指針は、事件の数や報酬の額に応じた対価を報酬目的の例に挙げ、期間とスペースで決まる定額を別に扱っています。ポータルについての指針で、事務所が自分のサイトの運営を頼む場合を扱ったものではありませんが、線の向きは読み取れます。
二つ目は相談の受付です。電話やフォームの一次対応を業者に任せ、業者が相談の日時を調整したり、相談の内容を聞いて振り分けたりする形は避けてください。ポータルの指針は、事業者が面談の日時の調整などをすることを、依頼者と弁護士の間に入る「周旋」の例に挙げています。
三つ目は原稿の確認の流れです。業者が書いた文章も、御事務所の広告として出ます。公開の前に弁護士が読み、公開した画面と変えた画面を残す。制作や運用の業者は、契約の形や名前を問わず、指針のいう「広告業者」に当たりえます。指針は保存する書類の例として、契約書、業務委託契約書、注文書、見積書などを挙げています。業者から届く請求書と支払いの記録も、令和8年7月からは3年残す対象です。
当社は、弁護士と司法書士の事務所には、成果に応じた報酬ではなく、期間で決まる月額制のプランを用意しています。問い合わせや面談の件数は毎月数えて報告しますが、報酬の額には結びつけません。当社が書いた文章に所属の会の業務広告の規程に反する表現があった場合は、無償で直し、その月の報酬をお返しします(料金)。契約で決めておく項目の全体は運用代行を頼む前に契約で決めておくことに書いています。
公開前の確かめ方
当社が事務所のサイトを開いたときに見ている順です。スマートフォンの「ページ内検索」があれば足ります。
- 本体と、分野ごとの専用サイトのすべてで、氏名と所属弁護士会(法人は名称、主たる法律事務所の名称、所属弁護士会)が表示されているかを見ます。専用サイトは見落とされやすい場所です。
- 料金のページで「〜」と「0円」「なし」をページ内検索し、一つずつ、算定の方法と支払時期、別に受け取る手数料や実費が同じページに書いてあるかを見ます。
- 相談料を取らないと書いた箇所を探し、分野、初回、時間の条件が、実際の運用と合っているかを受付の担当の方と確かめます。
- 「専門」「プロ」「エキスパート」「最も」「一番」「完璧」「No.1」をページ内検索します。題やボタン、画像の中の文字も見ます。
- 解決事例とお客様の声を一件ずつ開き、同意を書面か電磁的方法で得ているか、依頼者が特定されない書き方になっているかを確かめます。件数や金額を書いた箇所には、根拠の記録があるかを見ます。
- 電話やメールだけで受ける分野があるなら、そのページに第9条の2の三つ(事務の範囲、報酬の種類・金額・算定方法・支払時期、途中の解除と清算)がそろっているかを見ます。
- 外に頼んでいる業者との契約書、見積書、請求書、支払いの記録を一つのフォルダにまとめ、支払いの計算が件数や受任の額で変わる形になっていないかを読みます。
- 公開した日の画面を保存します。変えるたびに、変える前と後を残します。
2と5で迷う箇所が出たら、そこを所属の弁護士会に持っていくのが近道です。弁護士の事務所のホームページが検索でどう見えているかは弁護士のホームページ集客:3つの市で検索結果と24事務所のサイトを数えたに、料金を載せるかどうかの考え方は料金を載せるべきかに書いています。ほかの士業の決まりは、司法書士の広告規則、行政書士の広告の決まり、社労士の広告の決まり、税理士の広告の決まりにまとめています。
業者との契約書を開いて、支払いの計算式に「件数」「受任」「売上」の語があれば、言葉の見直しより先に、そこを所属の会に相談してください。
出典
- 日本弁護士連合会「弁護士等の業務広告に関する規程」(会規第44号) https://www.nichibenren.or.jp/library/pdf/jfba_info/rules/kaiki/kaiki_no_044.pdf
- 日本弁護士連合会「業務広告に関する指針」 https://www.nichibenren.or.jp/library/pdf/jfba_info/rules/other/shishin_kaiki_44.pdf
- 日本弁護士連合会「弁護士職務基本規程」(会規第70号) https://www.nichibenren.or.jp/library/pdf/jfba_info/rules/kaiki/kaiki_no_070.pdf
- 日本弁護士連合会「弁護士情報提供ウェブサイトへの掲載に関する指針」(東京弁護士会のサイトに掲載のPDF) https://www.toben.or.jp/know/iinkai/hibenteikei/pdf/kaiki_no_70_02.pdf
- 日本弁護士連合会「第3部:会規」(会規の一覧) https://www.nichibenren.or.jp/jfba_info/rules/society-laws.html