当社は法律の専門家ではありません。この記事は、公開されている資料を当社が読んで整理したものです。書く前に、所属の司法書士会で確かめてください。
司法書士の広告の決まりを調べて、最初につまずいたのは、全国で一つの規則を読めば済む仕組みではないことでした。弁護士なら日本弁護士連合会の規程と指針を読めば全体の線が見えます。司法書士は、日本司法書士会連合会が基準を示し、各地の司法書士会がそれぞれ規則を定めています。しかも、同じ会の規則でも、検索で先に出てくるのが古い版のことがあります。当社も、2026年9月24日に司法書士の記事を書いたときは、ある会の古い版を読んでいました。
この記事では、読めた資料と読めなかった資料を分けて書き、そのうえでホームページの項目ごとの線を整理します。
決まりは四つの層にあり、ホームページの線は各会の規則が引いている
- 司法書士法。第2条は職責として、常に品位を保持し、公正かつ誠実に業務を行うことを求めています。
- 司法書士法施行規則。第26条は「司法書士は、不当な手段によつて依頼を誘致するような行為をしてはならない。」と定めています。どちらも e-Gov の法令の条文で読みました。
- 日本司法書士会連合会の定め。日司連の規程の一覧には会則と「司法書士行為規範」が載っていますが、PDFの取得が機械的に拒否され、本文は読めていません。日司連の2024年6月21日の総会決議は、債務整理の被害に触れる中で「司法書士の業務広告に関する規則基準」に沿って各会が規則を制定していると書いています。基準そのものの本文は、公開の場所を見つけられませんでした。広告は平成13年から自由化されていることが、2009年の会長談話に書かれています。
- 各司法書士会の規則と運用指針。ホームページに何を書けるかの具体的な線は、ここにあります。
各会の資料で、今回読めたのは二つです。福岡県司法書士会の「福岡県司法書士会会員の業務広告に関する規則」と、山形県司法書士会の「司法書士の業務広告に関する規則の運用指針」です。大阪司法書士会の規則と運用指針はPDFの所在までは分かりましたが、接続の暗号の設定が合わず開けませんでした。当社が検索結果を数えた三つの市の会、岡山県、富山県、山梨県の司法書士会の規則は、会のサイトに接続できないか、公開のページを見つけられず、読めていません。
福岡の規則には新旧二つのPDFがあり、中身が違いました。古い版は平成27年の改正までのもので、司法書士倫理第16条に基づき、広告の記録を広告の終了から5年保存するとし、受任中や過去の事件は依頼者の同意がある場合に限って表示できる書き方でした。令和6年10月1日の改正までを含む新しい版は、会則第86条と司法書士行為規範第17条に基づくとし、保存は3年、過去の事件は依頼者の書面の同意がある場合のほか、依頼者が特定されず、かつ依頼者の利益を損なうおそれがない場合も表示できるとしています。まとめ記事の中で規則の名前や年数が食い違って見えるのは、こうした版の違いが混ざっているためかもしれません。所属の会の規則は、会から最新の版を受け取って読むのが確かです。
ホームページの項目ごとに:書ける、条件つき、避ける
以下は、福岡の規則(令和6年10月の版)と山形の運用指針(令和2年8月1日改正施行)から見た線です。
料金と相談料
料金は書けます。避けるのは、山形の運用指針に誤導・誤認の例として挙がっている「割安な報酬で事件を受託します」「この地域で最も安価な報酬で登記手続きを行います」の形と、不当な誘致として挙がっている「他の事務所の見積より報酬を下げます」の形です。報酬についてのあいまいで不正確な表現も、誤導の例に入っています。「〜円から」と書くなら、何を含み、どういうときに加算されるかを添えると誤解が生じにくくなります。
相談料は、実際に取らないなら取らないと書けます。山形の運用指針は、実際には相談料を請求するのに集客のために相談無料と書くことを、事実に合致しない広告の例に挙げています。初回だけ、30分まで、といった条件があるなら、条件まで書きます。
事例、実績、お客様の声
受任中と過去の事件は、依頼者の書面の同意がある場合と、依頼者が特定されず、かつ利益を損なうおそれがない場合に限って表示できます(福岡の規則第4条第3号。山形の運用指針も同じ書き方)。山形の運用指針は、ここでいう「事件」に登記や供託、書類の作成も含めています。
取扱件数や実績を過大に表すこと、実際にない事件を事例として載せること、体験談に虚偽があること、実在しない推薦文は、事実に合致しない広告の例です。会は、広告が事実に合致していることの証明を求めることができ、証明できなければ事実に合致しない広告とみなしうるとされています(山形の運用指針)。件数を書くなら、数えた記録を残しておく前提です。
専門、比較、最上級の言葉
山形の運用指針は、「専門分野」の表示を控えるのが望ましいとし、「スペシャリスト」「プロ」「エキスパート」も同じ扱いにしています。勧めているのは「積極的に取り組んでいる分野」「関心のある分野」という言い方です。「得意分野」は主観の表示として許されますが、得意でない分野を書けば別です。
特定の事務所と比べる広告は、どちらの会でも禁じられています。山形の運用指針は、名前を出さなくても特定の事務所を思い起こさせれば当たるとしています。「最も」「一番」「完璧」「信頼性抜群」「顧客満足度」は注意が要る語、「常勝」「不敗」は結果を保証させる語として挙がっています。
義務化の書き方と、不安をあおる表現
困惑させたり、過度な不安をあおったりする広告は、どちらの会でも禁じられています。山形の運用指針の例は「今すぐ請求しないと貴方の過払金は失われます」です。
司法書士のサイトでこの線に近づきやすいのは、相続登記(2024年4月1日から)と住所等の変更登記(2026年4月1日から)の義務化の書き方だと当社は見ています。過料の額だけを大きく掲げる書き方が当たるかどうかは会の判断ですが、期限と手順を先に書き、過料は事実として添える順番のほうが無理がありません。制度の説明が施行前のまま残っていれば、それは読んだ人を誤らせます。
司法書士に特有のもの
山形の運用指針には、ほかの士業の規程では見かけない例があります。「山形県司法書士○○センター」のように公的な団体を思い起こさせる表示、実体が伴わないのに「ワンストップサービス」を掲げること、面談が不要であるかのような表現です。郵送だけで完結すると読める書き方は、所属の会の扱いを確かめておきたい箇所です。
表示の義務は、福岡の新しい版では、個人は事務所の所在地、氏名、司法書士であること、法人は事務所の所在地と名称です。古い版では所属の会と電話番号も挙がっていました。会によって違いうる項目です。
ポータル、外部の業者、記録の保存
ほかのサイトの開設者に広告を頼む場合、正当な広告掲載料金のほかに金銭などを払う形、閲覧した人が紹介に対して開設者にお金を払う形、開設者が報酬の決定や事件の処理に関与できる形は、広告をしてはならない類型です(福岡の規則第5条)。山形の運用指針は、成果報酬で課金する形などを司法書士倫理第13条第2項に反するとしています(山形の運用指針は、現在の行為規範ではなく、以前の司法書士倫理の条番号で書いています)。規則に反する第三者の情報発信に協力することも禁じられています(福岡の規則第9条)。
記録は、広告物かその複製、広告の日時や方法の記録、事例などの同意の書面を、広告の終了から3年保存します(福岡の規則第12条)。山形の運用指針は、ホームページについて、最初の画面を残し、変えるたびに変える前と後を残すことが望ましいとしています。
三つの市の20事務所で見た書き方
当社はこれまで9つの業種、27の商圏で、検索結果と地元の事業者のサイトを同じ項目で数えてきました。司法書士はそのうち岡山市、富山市、甲府市の三つで、九つの言葉の1ページ目に出てきた地元の20事務所のサイトを、2026年9月24日に開いています。規則に照らして適否を判断したものではなく、書き方の傾向です。
相談料は、20のうち14が費用がかからないと書いていて、そのうち少なくとも6は初回や時間の条件を書いていませんでした。同じ日に数えた弁護士の24事務所では、確かめられた範囲で、相談料を取らないと書く事務所はすべて、分野か初回か時間の条件を添えていました。司法書士のサイトでは、条件を書くかどうかがまだ分かれています。同じ事務所の本体と相続の専用サイトで、相談料の書き方が食い違って見える例も一つありました。サイトを分けると、同じ事柄を二か所で直すことになります。
料金は20のうち11が金額を載せていました。相続登記の金額は4万円弱から11万円ほどまで開いていますが、報酬だけの金額も、戸籍の収集や協議書の作成を含む金額もあります。金額が何を含み、どういうときに加算されるかまで書いていたのは、少なくとも5つです。金額を載せずに「明朗会計」とだけ書くサイトもありました。
相談や処理の件数に触れる書き方は20のうち3つで見られ、事例は4つ、お客様の声は6つでした。
義務化の書き方には、はっきり差が出ました。相続登記の義務化に触れていたのは20のうち10です。過料や罰則に触れていたのは3つで、うち1つは開始日も期限もない一行でした。義務化の前の書き方が残っているページも、少なくとも2つありました。2026年4月からの住所等の変更登記の義務化に触れていたのは、20のうち0です。
外に運用を頼むときに確かめること
業者に払うお金は、期間で決まる形にし、問い合わせの件数、受任の件数、報酬の額、売上に連動させないでください。福岡の規則第5条は、ほかのサイトの開設者に広告を頼む場合の決まりですが、正当な掲載料金のほかに対価を払う形を認めていません。山形の運用指針は紹介料を法令等に反する例に挙げ、施行規則第26条は不当な手段による依頼の誘致を禁じています。
見落とされやすいのは、相続の専用サイトのように、業者がドメインを持ち、業者の名前で運営しているサイトです。その場合、業者は御事務所の外にいる「開設者」に当たりうると当社は見ています。そうなら、第5条の決まりがそのまま関わります。名義の確かめ方はドメインの名義が制作会社のままになっていないかに書きました。
相談の受付は、御事務所の手に残してください。電話やフォームの一次対応を業者が受け、報酬の見積りを伝えたり、受けるかどうかを振り分けたりする形は、開設者が報酬の決定や事件の処理に関与する類型に近づきます。
原稿は、公開の前に司法書士が読みます。業者が書いた文章も、御事務所の広告として出ます。件数や金額を書くなら根拠の記録を御事務所が持ち、公開した画面と変えた画面を残します。
当社は、司法書士と弁護士の事務所には、成果に応じた報酬ではなく、期間で決まる月額制のプランを用意しています。問い合わせや面談の件数は毎月数えて報告しますが、報酬の額には結びつけません。当社が書いた文章に所属の会の業務広告の規程に反する表現があった場合は、無償で直し、その月の報酬をお返しします(料金)。
公開前の確かめ方
当社が事務所のサイトを開いたときに見ている順です。スマートフォンの「ページ内検索」があれば足ります。
- 所属の会に、業務広告に関する規則と運用指針の最新の版を問い合わせます。検索で出てくるPDFの改正日と見比べます。
- 本体と専用サイトのすべてで、会の規則が求める表示(所在地、氏名、司法書士であることなど)があるかを見ます。
- 「無料」をページ内検索し、見つかった箇所ごとに、初回、時間、業務の条件が、実際の運用と合っているかを受付の担当の方と確かめます。本体と専用サイトで書き方がそろっているかも見ます。
- 料金のページの「〜」を一つずつ見て、報酬と登録免許税などの実費が分けて書いてあるか、加算の条件が書いてあるかを確かめます。
- 「専門」「プロ」「最も」「一番」「地域最安」「ワンストップ」「センター」をページ内検索します。題や画像の中の文字も見ます。
- 義務化に触れたページを開き、開始日、期限、施行前の相続や変更の扱いが、法務省の案内と合っているかを見ます。住所等の変更登記に触れたページがあるかも探します。
- 事例、お客様の声、実績の件数の一つ一つについて、同意の書面と、数えた記録があるかを確かめます。
- 外に頼んでいる業者との契約書と請求書を開き、支払いの計算が件数や受任の額で変わる形になっていないか、専用サイトのドメインが誰の名義かを見ます。
- 公開した日の画面を保存します。変えるたびに、変える前と後を残します。
1で受け取った規則が、この記事で読んだ福岡や山形のものと違えば、所属の会の規則が優先します。司法書士の事務所のホームページが検索でどう見えているかは司法書士のホームページ集客:3つの市で検索結果と20事務所のサイトを数えたに、義務化の書き方は住所変更登記の義務化の書き方に書いています。ほかの士業の決まりは、弁護士の広告規程、行政書士の広告の決まり、社労士の広告の決まり、税理士の広告の決まりにまとめています。
出典
- e-Gov 法令検索「司法書士法」第2条 https://laws.e-gov.go.jp/api/1/articles;lawNum=昭和二十五年法律第百九十七号;article=2
- e-Gov 法令検索「司法書士法施行規則」第26条 https://laws.e-gov.go.jp/api/1/articles;lawNum=昭和五十三年法務省令第五十五号;article=26
- 日本司法書士会連合会「規則・規程」(会則・司法書士行為規範の掲載ページ。本文は未読) https://www.shiho-shoshi.or.jp/association/intro/reguration/
- 日本司法書士会連合会「司法書士業務の広告について(会長談話)」2009年4月13日 https://www.shiho-shoshi.or.jp/association/info_disclosure/statement_list/936/
- 日本司法書士会連合会 第89回定時総会決議(2024年6月21日) https://shiho-shoshi.or.jp/association/info_disclosure/resolution/58304
- 福岡県司法書士会「福岡県司法書士会会員の業務広告に関する規則」(令和6年10月1日改正までを含む版) https://www.fukuokashihoushoshi.net/uploads/fck/admin/file/gyoumukoukoku-kisoku_20241001.pdf
- 福岡県司法書士会 同規則(平成27年改正までの版。比較のため) https://www.fukuokashihoushoshi.net/uploads/fck/admin/gyoumukoukoku-kisoku.pdf
- 山形県司法書士会「司法書士の業務広告に関する規則の運用指針」 https://www.yamagata-shiho.jp/wp/wp-content/uploads/2017/02/bb467f4af93c23c7ac79c33d68028536.pdf
- 法務省「住所等変更登記の義務化特設ページ」 https://www.moj.go.jp/MINJI/minji05_00687.html
- 岡山地方法務局 相続登記の義務化の案内 https://houmukyoku.moj.go.jp/okayama/page000001_00222.html