「行政書士 広告規程」と検索して、弁護士の「業務広告に関する規程」にあたるものを探すと、見つからないまま終わると思います。当社が2026年9月24日に公開の資料を読んだ範囲では、行政書士には、広告だけを定めた全国の規程が見当たりませんでした。あるのは、行政書士法の一般的な条文と、日本行政書士会連合会(以下、日行連)の会則と「行政書士倫理」、そして所属する各都道府県の会の定めです。
当社は法律の専門家ではありません。この記事は、公式の資料を読み比べたうえで、ホームページを運営する側として気をつけていることをまとめたものです。迷う書き方は、所属の会で確かめてください。
立場も一つ書いておきます。細かい規程がないことは、何を書いてもよいという意味ではありません。拠り所が「品位」という広い言葉と、事業者一般にかかる景品表示法になるぶん、線は自分で引くことになります。そして、当社が三つの市で行政書士のサイトを読んだ範囲で、引き直したほうがよいと思ったのは、料金の書き方より実績の言い方でした。
何の決まりがあるか:法律、連合会の会則と倫理、所属の会
拘束力の強いほうから並べます。
一つ目は行政書士法です。第10条は「行政書士は、行政書士の信用又は品位を害するような行為をしてはならない。」と定めています。広告の条文ではありませんが、ホームページの表示もこの「行為」の中で読まれます。第10条の2第1項は「その事務所の見やすい場所に、その業務に関し受ける報酬の額を掲示しなければならない。」とし、第12条は業務上知り得た秘密を漏らすことを、行政書士でなくなった後も含めて禁じています。
二つ目は日行連の会則です(日行連のサイトに掲載の、令和4年8月31日総務大臣認可の版)。第59条で信用・品位を害する行為を禁じ、第60条の2で事務所の名称を制限し(他の法律で使用を制限されている名称、行政書士の事務所であることについて誤認混同を生じるおそれがある名称、品位を害する名称)、第61条で名義貸しを禁じています。この版には「広告」「宣伝」の語を含む条文はありませんでした。
三つ目は日行連の「行政書士倫理」です(平成18年1月19日理事会承認、令和2年4月24日まで改正)。広告に直接触れるのは第10条「行政書士は、不当な目的を意図し、又は品位を損なうおそれのある広告宣伝を行ってはならない。」です。ほかに第3条(秘密保持)、第7条(不正又は不当な手段で依頼を誘致する行為の禁止)、第8条(名義貸しの禁止)、第16条(受任に際して適正かつ妥当な報酬を提示すること、みだりに報酬の増加を図らないこと)、第26条(他の行政書士の誹謗中傷等の禁止)が、ホームページの書き方に関わります。倫理第25条は、法令と、日行連および所属の会が定める規律を守ることを求めています。
四つ目が所属の会の定めです。都道府県の会が、会則や規則、会員向けの指針で独自に定めていることがあります。東京都行政書士会に会員のWebサイト作成の指針があると紹介する記事は見ましたが、会の公開のページからは本文にたどり着けませんでした。熊本県行政書士会の会則・規則も、公開の資料では見つけられていません。御事務所の会に指針があるかどうかは、会に聞くのがいちばん早い確かめ方です。
行政書士に限らない決まりとして、景品表示法もかかります。消費者庁の「比較広告に関する景品表示法上の考え方」と、令和5年10月1日に施行されたステルスマーケティングの規制(告示「一般消費者が事業者の表示であることを判別することが困難である表示」)です。
もう一つ、令和8年1月1日に改正行政書士法が施行され、第19条第1項に「他人の依頼を受けいかなる名目によるかを問わず報酬を得て」の文言が加わりました。総務省の通知は、行政書士でない者が「手数料」や「コンサルタント料」等どのような名目でも対価を受けて官公署に出す書類を作ることは違法だという解釈を、条文に明示したものと説明しています。広告の条文ではありませんが、あとで書く外部の業者との関わり方に効いてきます。
ホームページの項目ごとに当てはめる
項目ごとに「書ける」「条件つき」「避ける」を書き、根拠のあとに当社の判断を添えます。
料金(「〜円から」、無料相談)
書けます。法は事務所での報酬額の掲示を義務づけていて、料金表はその延長として載せやすいものです。条件つきなのは「〜円から」です。倫理第16条は事案に照らした適正な報酬の提示を求め、消費者庁の価格表示の考え方には、幅のある価格の表示で実際の価格がそれを大きく上回っていた例が、不当な表示として挙がっています。「〜円から」と書くなら、その金額で済む条件と上がる条件を同じ場所に書き、税込か税別か、法定の手数料や証紙代が別かも書きます。無料相談を書くことを禁じる条文は見当たりません。何分まで、どこまでが無料かを書けば足ります。
事例・実績の件数
条件つきです。件数を出すこと自体を禁じる条文は見当たりません。ただ、根拠のない件数や率は、倫理第10条の品位にも、景品表示法の優良誤認(実際よりよく見せる表示)にも触れえます。何を数えたのか(申請か許可か、相談か受任か)、いつ時点かを書きます。事例は守秘(法第12条、倫理第3条)があるので、依頼者の了解を取り、依頼者が分からない書き方にします。
お客様の声
条件つきです。守秘の点は事例と同じです。事務所が選んで載せた声は事務所の表示で、作った声や都合のよい部分だけを切り取った声は、景品表示法の問題になりえます。口コミを頼んで書いてもらうなら、ステルスマーケティングの規制の対象になりうることも頭に置きます。
専門・得意の表示
条件つきです。「専門」「得意」を名指しした条文は、読んだ範囲にはありません。業務を絞って書くこと自体は問題にならないと考えますが、扱った件数や年数の裏づけがない「専門」は、優良誤認の側に寄ります。紛争になっている案件や登記、税務申告のように他の士業の業務にあたるものを、自分で扱えるように読める書き方も避けます(各士業法の条文は今回確かめていません)。
比較・最上級の言葉
避けます。倫理第26条は他の行政書士の誹謗中傷を禁じ、消費者庁の考え方は、比較広告が認められる要件として「比較広告で主張する内容が客観的に実証されていること」「実証されている数値や事実を正確かつ適正に引用すること」「比較の方法が公正であること」の三つを挙げています。「他より安い」「地域で一番」「No.1」は、この三つを示せないなら書かないのが無難です。
不安をあおる書き方
避けます。名指しした条文はありませんが、倫理第7条の不当な誘致と、第10条の品位に触れうるところです。期限や罰則を伝えるのは役に立つ情報です。ただ、依頼を急がせるための書き方にはしません。
事務所の名称とサイトの名前
条件つきです。会則第60条の2は事務所の名称の制限です。「〜センター」「〜サポート」のように事務所名と別の名前でサイトを立てるとき、この条文がサイトの名前まで対象にするのかは確かめていません。立てる前に所属の会に聞き、どのページにも事務所の正式な名前と所在地を書いておきます。
ポータル・紹介サイトへの掲載料
条件つきです。掲載料や紹介料を名指しした条文は、読んだ範囲の法・会則・倫理にはありませんでした。掲載の枠に定額を払うことと、依頼が決まるたびに払うことは性質が違います。後者は、倫理第7条の「不正又は不当な手段」にあたらないかを所属の会で確かめてから決めます。
記録の保存
広告の記録の保存を定めた条文は、読んだ範囲では見つかりませんでした。法第9条の二年の保存は業務の帳簿の話です。それでも当社は、公開したページの文面と日付を残すことを勧めます。問い合わせた人が読んだときの料金や表現を、あとから示せるからです。
3つの市の24事務所で見た書き方
当社は9業種・27の商圏で検索結果と事業者のサイトを数えました(まとめは9業種・27の商圏のデータ)。そのうち行政書士は、熊本市、静岡市、宇都宮市で、よく出てくる事務所を八つずつ、24事務所のサイトを同じ項目で見ています。広告の決まりの目で読み直すと、次のことが目につきます。
料金は24のうち16が載せていました。熊本で金額を載せていた六つのうち二つは、税込か税別かの書き方が見当たりません。静岡の車庫証明の言葉では、1ページ目に出た市内の四件のうち三件が、検索結果に出る題そのものに「税込〇円から」と入れていました。題に金額を入れると検索結果の画面だけで比べてもらえますが、そのぶん題とページの中の金額がずれていないかを、直すたびに見ることになります。検索結果の金額とページの金額が食い違って見えた事務所も一つありました(読み取りの違いの可能性はあります)。
相談料の書き方は分かれていました。宇都宮の八つのうち六つが、初回や相談が無料だと書いていて、そのうち一つは、紹介者がいれば無料、いなければ有料と分けていました。熊本には、相談料を税別の金額で書いている事務所がありました。無料か有料かより、条件が一行で読めるかどうかのほうが、読む人には効くと当社は見ています。
事例や実績の件数を書いていたのは24のうち6です。静岡では、件数の代わりに「100%」「多数」「NO.1」という言い方をしている事務所が三つありました。何を分母にした率なのか、何の順位なのかが書かれていなければ、上の比較・最上級の項目にそのまま当たります。熊本では、グループの別の組織の相談件数を載せている事務所がありました。事務所そのものの実績と読まれうる置き方です。同じサイトの中で、実績の数が二通りに書かれていた例もありました。
お客様の声は24のうち5で、熊本の二つはどちらも会社名を出していました。了解は取っているのだと思いますが、了解がどこまでを含むのかは外からは分かりません。
事務所名と別の名前でサイトを立てているところは、どの市にもありました。静岡には事務所名とは別に、業務の名前に「センター」を付けた名前を掲げるサイトがあり、熊本のビザの言葉では、熊本の名前を冠したサイトを県外に本拠のある事務所が運営していました。宇都宮では、市外の事務所が題に「宇都宮で」と入れていました。違反だと言うつもりはありません。読む人が所在地や事務所の名前を取り違えないよう、正式な名前と所在地がどのページからも読めるかは、確かめておく場所です。
外部に運用を頼むときに確かめること
制作や運用、広告を外に頼むときに当社が確かめている三つを書きます。
一つ目は報酬の形です。業者への支払いを問い合わせや受任の件数、受けた報酬の額に連動させると、業者は依頼を誘う側に立ち、倫理第7条の不当な誘致や、名義貸し(倫理第8条、会則第61条)との境目に近づきます。行政書士の決まりで、この点を名指しした条文は見つけられませんでした。報酬を件数に連動させない形にするかどうかは、所属の会で確かめてから契約してください。
二つ目は、相談の受付を業者に渡さないことです。問い合わせの中身の多くは依頼者の秘密です。フォームの通知や電話の転送先は事務所にし、業者が見るのは件数と、どのページから来たかまでに絞ります。業者が相談に答えたり書類の下書きを作ったりする形は、改正後の第19条第1項の「いかなる名目によるかを問わず」に近づきます。補助金や許認可の申請支援をうたう業者と組むときは、特に気をつけてください。
三つ目は原稿の確認の流れです。業者が書いた文章でも、公開すれば事務所の広告です。料金、件数、声、比較の言葉が入ったページは公開の前に行政書士本人が読む、という順番を契約に書いておきます。契約で決めておくことは運用代行を頼む前に契約で決めておくことにまとめています。
公開前に確かめる順番
一枚を公開する前に、当社はこの順で読みます。所属の会に独自の指針があるなら、それを先に読みます。
- 金額の横に、税込か税別か、法定の手数料や証紙代が別か、上がる条件が書いてあるか。
- 件数・率・年数に、数えたものと時点が書いてあるか。根拠を示せない「100%」「No.1」が残っていないか。
- 事例と声に依頼者の了解があり、その了解に名前や業種を出すことまで含まれているか。
- 他の事務所を下げる言い方、依頼を急がせる言い方がないか。
- 他の士業の業務を自分で扱えるように読める箇所がないか。
- 事務所の正式な名前と所在地が、どのページからも読めるか。
- 公開した日付と文面を残したか。
所属の会の指針が公開されていなくても、この七つは、法と倫理と景品表示法から引ける範囲の線です。
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行政書士のホームページで、どの業務を誰に向けて書くかは行政書士のホームページ集客:3つの市で検索結果と24事務所のサイトを数えたに書きました。他の士業の広告の決まりは、弁護士の広告規程、司法書士の広告規則、社労士の広告規制、税理士の広告規制にまとめています。
出典
- 行政書士法(e-Gov 法令検索、第1条・第9条・第10条・第10条の2・第12条・第19条)https://laws.e-gov.go.jp/law/326AC1000000004
- 日本行政書士会連合会「日本行政書士会連合会会則」(令和4年8月31日総務大臣認可の版)https://www.gyosei.or.jp/sites/default/files/1697501737/2-01%E6%97%A5%E6%9C%AC%E8%A1%8C%E6%94%BF%E6%9B%B8%E5%A3%AB%E4%BC%9A%E9%80%A3%E5%90%88%E4%BC%9A%E4%BC%9A%E5%89%87(22.8.31).pdf
- 日本行政書士会連合会「行政書士倫理」https://www.gyosei.or.jp/sites/default/files/2016/03/67802fb07fb14bca3f834134942e4491-2.pdf
- 総務省「行政書士法の一部を改正する法律の公布について(通知)」(令和7年6月13日)https://www.soumu.go.jp/main_content/001014708.pdf
- 日本行政書士会連合会「【会長談話】行政書士法第19条第1項及び第23条の3の改正の趣旨等について」https://www.gyosei.or.jp/news/20251101
- 消費者庁「比較広告に関する景品表示法上の考え方」https://www.caa.go.jp/policies/policy/representation/fair_labeling/guideline/pdf/100121premiums_37.pdf
- 消費者庁「不当な価格表示についての景品表示法上の考え方」https://www.caa.go.jp/policies/policy/representation/fair_labeling/guideline/pdf/100121premiums_35.pdf
- 消費者庁「ステルスマーケティング規制について」https://www.caa.go.jp/policies/policy/representation/fair_labeling/stealth_marketing/