税理士の広告の決まりは、名前ははっきりしているのに、本文が外から読めません。各税理士会には「会員の業務の広告に関する細則」があり、関東信越税理士会の公開のお知らせでは、その一部変更が平成31年1月1日に施行されています。ただ、本文は会員専用のサイトの「会則等」で確かめるよう案内されていて、当社は2026年9月24日の時点で、現行の本文を公開の場所で読めませんでした。
当社は法律の専門家ではありません。この記事は、公開されている公式の資料を読み比べ、ホームページを運営する側として気をつけていることをまとめたものです。迷う書き方は、所属の税理士会で確かめてください。
読んでみて、当社がいちばん先に伝えたいのは、広告の細則ではない条文のことです。国税庁の税理士制度のQ&Aは、ウェブサイトへの表示を、二ヶ所事務所の禁止にかかわる「外部に対する表示」に含めています。周辺の市町のページや、創業向けの別のサイトを増やしていくとき、その作り方しだいでは、広告の細則より先にこちらに触れます。
何の決まりがあるか:税理士法、通達、税理士会の会則と細則
拘束力の強いほうから並べます。
一つ目は税理士法です。第37条は「税理士は、税理士の信用又は品位を害するような行為をしてはならない。」、第37条の2は非税理士に対する名義貸しの禁止、第38条は税理士業務に関して知り得た秘密を他に洩らし又は窃用することの禁止(税理士でなくなった後も同じ)です。第39条は「税理士は、所属税理士会及び日本税理士会連合会の会則を守らなければならない。」と定めています。会則を守ることが法律の義務になっているので、会則に基づく広告の細則も、法の裏づけを持った決まりとして読むことになります。第40条第3項は「税理士は、税理士事務所を二以上設けてはならない。」、第52条は税理士でない者が税理士業務を行うことを禁じています。
二つ目は国税庁の税理士法基本通達と、それを説明する「税理士制度のQ&A」です。Q&Aは、基本通達40-1を引いて、「外部に対する表示」には「看板等物理的な表示、ウェブサイトへの表示、契約書等への記載など」が含まれるとしています。問5-3の答えには、「『○○○税理士事務所□□□分室』、『○○○税理士事務所□□□オフィス』など税理士事務所と誤認されるおそれのある外部に対する表示がなされている場合は、税理士事務所と判定されることになります。」とあります。日本税理士会連合会(以下、日税連)の資料も、「業務広告の注意点」の項で、令和5年4月施行の通達により外部に対する表示が二ヶ所事務所の禁止の対象になりうることに触れていました。
三つ目は税理士会の会則と「会員の業務の広告に関する細則」、その運用指針です。日税連の資料によれば、細則には「禁止される広告」「表示できない広告事項」「有価物等の供与の禁止」が定められています。現行の本文は読めていないので、当社が読めたのは古い版だけです。税務の出版社のサイトに、日税連の名義の「税理士会会員の業務の広告に関する運用指針」(平成14年4月18日制定、同年9月4日変更)の写しが載っていました。平成31年の変更より前の版で、現行と同じとは限りません。この記事では、その版に書かれていたことを、そう断ったうえで使います。
その版では、禁止される広告として、事実に合致していない広告、誤導又は誤認のおそれのある広告、誇大又は過度な期待を抱かせる広告、特定の会員又は会員事務所と比較した広告、法令又は会則・規則に違反する広告、税理士の品位又は信用を損なうおそれのある広告が挙がっています。誤導の例としては「割安な報酬で引き受けます」「巧みに節税します」「最高の税務知識を提供します」「たちどころに解決します」「税務調査省略になります」が並んでいました。
四つ目に、税理士に限らない景品表示法があります。消費者庁の比較広告の考え方と、令和5年10月1日に施行されたステルスマーケティングの規制です。
ホームページの項目ごとに当てはめる
項目ごとに「書ける」「条件つき」「避ける」を書き、根拠のあとに当社の判断を添えます。古い運用指針に拠るところは、そう書いています。
料金(「〜円より」、無料相談、無料の会社設立)
書けます。古い運用指針は「報酬金額を明示することを禁止するものではない」としています。条件つきなのは書き方で、同じ指針は、報酬についての曖昧かつ不正確な表現を誤導の例に入れています。「月額〇円より」と書くなら、年商や仕訳の量の区分、決算料や年末調整が別かどうかを同じ場所に書きます。無料相談は書けます。気をつけたいのは、顧問契約を条件に会社設立の手数料を無料にするような書き方です。細則の「有価物等の供与の禁止」の中身を当社は読めていないので、この形を載せる前に所属の会で確かめてください。
事例・実績の件数、顧問先の数
条件つきです。事実に合致しない表示、誇大な表示にならないよう、何を数えたのか、いつ時点かを書きます。事例は第38条の守秘があるので、委嘱者の了解と、委嘱者が特定されない書き方が前提です。
お客様の声
条件つきです。守秘は事例と同じです。古い運用指針では、委嘱者の氏名は書面による同意を得れば表示できるとされていました。会社名を出すなら、同意を書面で取っておきます。頼んで書いてもらった口コミは、ステルスマーケティングの規制の対象になりえます。
専門・得意の表示と、節税の言い方
条件つきです。「専門」「得意」を名指しした記述は、読んだ範囲にはありませんでした。業務を絞って書くのは問題にならないと考えますが、「〇〇に強い」の裏づけがなければ、過度な期待を抱かせる表示の側に寄ります。節税の言い方は、避けるほうに近い項目です。古い指針の誤導の例に「巧みに節税します」「税務調査省略になります」がそのまま挙がっています。何をすればいくら税が減るかではなく、どういう場合に使える制度かを書く形にします。
比較・最上級の言葉
避けます。古い運用指針は、特定の会員や会員の事務所と比較した広告を、禁止される広告に入れていました。景品表示法の三つの要件(主張が客観的に実証されている、数値や事実を正確かつ適正に引用する、比較の方法が公正)より一段厳しい線です。税理士の変更についてのページを作るとき、いまの税理士を下げる書き方にしないことが、ここに当たります。
元の職の表示
条件つきです。古い運用指針の第4条関係には、税務官公署に在職したときの「具体的役職名」を「管轄地域名を冠した官公署名と役職名の併記」と説明する箇所がありました。国税の出身であることを紹介に書くなら、どこまで書けるかを現行の細則で確かめてから書きます。
不安をあおる書き方
避けます。税務調査や加算税を知らせるのは役に立つ情報です。ただ、「このままでは調査が来る」のように依頼を急がせる言い方は、過度な期待や品位の問題に触れえます。
地域のページ、創業向けの別サイト、サイトの名前
税理士に特有の項目で、条件つきです。周辺の市町ごとのページを作るとき、そこに事務所があるように読める表示(「□□オフィス」「□□事務所」の名前、その町の住所や電話番号)を置かないことです。事務所名と別の名前でサイトを立てるなら、どのページにも税理士事務所の正式な名前と、本拠の所在地を書きます。古い運用指針にも、広告には税理士又は税理士法人の氏名又は名称を表示するという箇所がありました。
ポータル・紹介サイトへの掲載料
条件つきです。掲載料や紹介料を名指しした記述は、読んだ範囲の法・通達・資料にはありませんでした。紹介元が自分で税務相談や申告書の作成をしていないか(第52条)、事務所の名義がそこで使われていないか(第37条の2)を確かめ、依頼が決まるたびに払う形なら所属の会に確かめてから決めます。
記録の保存
古い運用指針は、広告の保存期間を3年としていて、ホームページを変えるときにもデータを残すよう書いていました。現行でも同じかは確かめていません。当社は、変えるたびに前の文面と日付を残すことを勧めます。第41条の5年の保存は業務の帳簿の話で、別のものです。
3つの市の24事務所で見た書き方
当社は9業種・27の商圏で検索結果と事業者のサイトを数えました(まとめは9業種・27の商圏のデータ)。税理士は金沢市、大分市、松山市で、よく出てくる事務所を八つずつ、24事務所のサイトを同じ項目で見ています。広告の決まりの目で読み直すと、次のことが目につきます。
料金は、顧問料の金額が読み取れたのが金沢で三つ、大分で三つ、松山で七つでした。書き方は分かれています。年商の区分ごとの表のほか、大分には、業種と年商を決めたうえで月額と決算料と年額を示すモデルケースで書く事務所と、決算の報酬を月額の何か月分と式で書く事務所がありました。どちらも、どういう場合にいくらかが読める書き方です。松山には、トップに「月次顧問料〇円より」と出している事務所がある一方で、金額を載せている七つのうち五つは、トップでは金額が見えず、料金のページを開いてはじめて出てきました。
創業向けに、事務所名ではなく「会社設立」や「開業」を前に出した名前の別サイトを持つ事務所は、三つの市のそれぞれにありました。名前に「オフィス」や「カフェ」を含むものもあります。松山には、顧問契約を結べば会社設立の手数料を無料とする事務所もありました。どれも本拠の事務所の案内として作られているのだと思いますが、上の通達の読み方からは、所在地が本拠と同じであることがどのページからも読めるかが確かめどころになります。周辺の市町ごとのページは24のうちゼロでした。作るなら、ページの名前の付け方を先に決めておきます。
お客様の声や事例の掲載が見当たらない事務所は、金沢で二つ、大分で五つ、松山で四つでした。載せている事務所には、依頼した会社の所在の市まで書いた事例もありました。了解の範囲は外からは分かりません。
税理士の変更についての専用ページは、金沢で四つ、松山で一つ、大分でゼロでした。変更を考える人に向けるページは、いまの税理士への不満を足場にしやすい種類のページです。比較の項目の線を、いちばん意識するのがここです。
題に「相続に強い」と入れていた事務所もありました。「強い」の裏づけを同じサイトで示せるかどうかが、専門・得意の項目の確かめどころです。
もう一つ、検索結果の側のことです。「地名 税理士 顧問料」の1ページ目は、9件のうち金沢で6件、大分で7件、松山で6件が、紹介サイトや比較サイト、会計ソフト会社の税理士検索でした。この言葉で地元の事務所が並ぶために、こうした場所への掲載を考える事務所もあると思います。掲載料や紹介料の形は、上の項目のとおり所属の会で確かめてから決めます。
外部に運用を頼むときに確かめること
制作や運用、広告を外に頼むときに当社が確かめている三つを書きます。
一つ目は報酬の形です。業者への支払いを問い合わせや顧問契約の件数、顧問料の額に連動させると、業者は依頼を誘う側に立ちます。税理士の読める範囲の決まりで、この点を名指しした記述は見つけられませんでした。報酬を件数に連動させない形にするかどうかは、所属の税理士会で確かめてから契約してください。
二つ目は、相談の受付を業者に渡さないことです。問い合わせには売上や家族の事情が書かれていて、第38条の守秘がかかります。フォームの通知と電話の転送先は事務所にします。業者のチャットや電話が、税額の計算にかかわる質問に答える形は、第2条の税務相談にあたりえて、第52条の問題に近づきます。
三つ目は原稿の確認の流れです。業者が書いた文章でも、公開すれば事務所の広告です。料金、節税、件数、声、元の職、変更に触れるページは、公開の前に税理士本人が読む順番を契約に書いておきます。契約で決めておくことは運用代行を頼む前に契約で決めておくことにまとめています。
公開前に確かめる順番
一枚を公開する前に、当社はこの順で読みます。最初に、所属の税理士会から現行の細則と運用指針を取り寄せて読みます。
- 金額の横に、年商や仕訳の区分、決算料・年末調整・消費税申告が別かどうかが書いてあるか。
- 件数・顧問先数・年数に、数えたものと時点が書いてあるか。
- 事例と声に委嘱者の同意があり、名前を出すなら書面で取ってあるか。
- 「節税できます」「調査が来ない」のように、結果を約束すると読める言い方がないか。
- 他の事務所やいまの税理士を下げる言い方がないか。
- 元の職の書き方を、現行の細則で確かめたか。
- 地域のページや別サイトに、そこに事務所があるように読める名前や住所がないか。本拠の名前と所在地がどのページからも読めるか。
- 変える前の文面と日付を残したか。
7は、広告の細則が手元になくても、国税庁の公開のQ&Aだけで今日確かめられます。
あわせて読む
税理士事務所のホームページで、どの問いに誰が並んでいるかは税理士事務所のホームページ集客:3つの市で検索結果と24事務所のサイトを数えたに書きました。変更のページの作り方は税理士の変更のページについての記事、顧問料のページは顧問料のページについての記事にあります。他の士業の広告の決まりは、弁護士の広告規程、司法書士の広告規則、行政書士の広告規制、社労士の広告規制にまとめています。
出典
- 税理士法(e-Gov 法令検索、第2条・第37条・第37条の2・第38条・第39条・第40条・第41条・第52条)https://laws.e-gov.go.jp/law/326AC0000000237
- 国税庁「税理士制度のQ&A 5 税理士事務所」https://www.nta.go.jp/taxes/zeirishi/zeirishiseido/qa/05.htm
- 国税庁「『税理士法基本通達の制定について』の一部改正について(法令解釈通達)」https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kihon/zeirishi/kaisei/20230623/index.htm (一覧から確認。本文は開いていません)
- 関東信越税理士会「細則の一部変更について(お知らせ)」https://www.kzei.or.jp/news/zeirishi/2018/10/03-132315.html
- 日本税理士会連合会の資料(「24. 業務広告の注意点」を含む)https://www.nichizeiren.or.jp/suggestion/100/100_2.pdf
- 日本税理士会連合会「税理士の綱紀保持」https://www.nichizeiren.or.jp/taxaccount/kouki-hozi/
- 「税理士会会員の業務の広告に関する運用指針」(平成14年版の写し。税務の出版社のサイト掲載で、公式の掲載ではありません)http://www.taxcom.co.jp/lib/doc_zeirishi_cm.htm
- 消費者庁「比較広告に関する景品表示法上の考え方」https://www.caa.go.jp/policies/policy/representation/fair_labeling/guideline/pdf/100121premiums_37.pdf
- 消費者庁「ステルスマーケティング規制について」https://www.caa.go.jp/policies/policy/representation/fair_labeling/stealth_marketing/