社労士の広告規制:ホームページで書けること、避けること(労使の中立とメールまで)

日本経済新聞の見出しによれば、「100%経営者の味方」という社労士の広告が、労使の中立に反するとして是正の対象になりました。当社はこの報道の本文を読めておらず、どの規程に基づき、いつの話なのかは確かめていません。それでも、この一行は、経営者に向けたサイトなら書いてしまいそうな言い回しです。顧問料を払うのも、相談してくるのも会社だからです。

当社は法律の専門家ではありません。この記事は、2026年9月24日に公式の資料を読み比べ、ホームページを運営する側として気をつけていることをまとめたものです。迷う書き方は、所属の会で確かめてください。

読んでみて、当社の見方は一つ変わりました。社労士の決まりでいちばん具体的なのは、「広告」の条文ではなく「勧誘」の条文でした。連合会の会則の不当勧誘等の禁止は五つの項からなり、広告を名指ししているのは一つだけです。残りは、報酬などの重要な事項を告げずに勧誘すること、断った人への勧誘、承諾のない電子メールでの広告、依頼の撤回を妨げることを禁じています。ホームページの決まりは、公開したページの文面で終わらず、問い合わせのあとに送るメールまで続いている、と読むのが当社の立場です。

何の決まりがあるか:法律、連合会の会則と倫理綱領、所属の会

拘束力の強いほうから並べます。

一つ目は社会保険労務士法です。第1条は使命を定め、社労士は「適切な労務管理の確立及び個人の尊厳が保持された適正な労働環境の形成に寄与」し、「事業の健全な発達と労働者等の福祉の向上」に資するとしています。この使命の規定は、令和7年6月25日公布の改正で新しく置かれたものです(厚生労働省の説明による)。第1条の2は「常に品位を保持し、業務に関する法令及び実務に精通して、公正な立場で、誠実にその業務を行わなければならない。」、第16条は信用又は品位を害する行為の禁止、第21条は業務に関して知り得た秘密を漏らし、又は盗用することの禁止(やめた後も同じ)です。第23条の2は「非社会保険労務士との提携の禁止」で、「第二十六条又は第二十七条の規定に違反する者から事件のあつせんを受け、又はこれらの者に自己の名義を利用させてはならない。」と定めています。第26条は社労士でない者が社会保険労務士や「社労士」などの類似の名称を使うことを禁じていて、「社労士」の語を明記したのも令和7年の改正です。

二つ目は全国社会保険労務士会連合会の会則です(令和6年11月29日施行の版)。第43条で会則と細則を守ること、第43条の2で「適正な労使関係を損なう行為」の禁止、第43条の3で受任に際して業務の内容と報酬等を書面の交付等で明示し十分に説明すること、第43条の4で不当勧誘等の禁止を定めています。第43条の4第3項が「誇大若しくは虚偽の事項により相手方を欺くおそれがある方法で、広告又は宣伝を行ってはならない。」、第4項が「相手方の承諾を得ずに電子メールにより広告を送信してはならない。」です。

三つ目は連合会の倫理綱領です。「品位の保持」の項に「中立公正を旨とし」とあり、「相互の信義」「守秘の義務」の項もあります。PDFから制定・改正の日付は読み取れませんでした。

四つ目が所属の会の定めです。広告だけを扱う連合会の規程や指針は、連合会が組織のページで公開している資料と、厚生労働省が掲載している連合会の資料からは見つけられませんでした。福井県社会保険労務士会の規則も会のサイトでは見つからず、宮城県と静岡県の会の規則は確かめていません。会則第43条は「会則に基づく細則」も守るべきものとしているので、細則や会の内規があるかは所属の会に聞いてください。

社労士に限らない決まりとして、景品表示法もかかります。消費者庁の比較広告の考え方と、令和5年10月1日に施行されたステルスマーケティングの規制です。

ホームページの項目ごとに当てはめる

項目ごとに「書ける」「条件つき」「避ける」を書き、根拠のあとに当社の判断を添えます。

料金(「〜円から」、助成金の報酬、無料相談)

書けます。載せることを禁じる決まりは見当たりません。条件つきなのは書き方です。会則第43条の4第1項は、報酬等の相手方の判断に影響する重要な事項について、故意に事実を告げずに勧誘することを禁じています。「顧問料〇円から」と書くなら、何人までの会社でその金額か、何が含まれて何が別料金かを同じ場所に書きます。助成金の報酬を割合で書くなら、受給額に対してか申請額に対してか、受給できなかったときに何がかかるかも書きます。無料相談は書けます。時間と範囲を書けば足ります。

事例・実績の件数、助成金の受給額

条件つきです。出すこと自体を禁じる決まりは見当たりません。会則第43条の4第3項の「誇大若しくは虚偽」に当たらないよう、何を数えたのか、いつからいつまでかを書きます。助成金は審査を経て決まるものなので、受給を約束するように読める言い方は避けます。事例は第21条の守秘があるので、依頼した会社の了解と、会社が特定されない書き方が前提です。

お客様の声

条件つきです。守秘は事例と同じです。事務所が選んで載せた声は事務所の表示で、頼んで書いてもらった口コミはステルスマーケティングの規制の対象になりえます。

専門・得意の表示

条件つきです。名指しした条文は読んだ範囲にありません。業務を絞って書くのは問題にならないと考えますが、裏づけのない「専門」は誇大の側に寄ります。障害年金など、事務所名と別の名前で専用のサイトを立てるなら、どのページにも社労士の氏名と事務所の所在地を書きます。

比較・最上級の言葉

避けます。倫理綱領の「相互の信義」と、景品表示法の比較広告の三つの要件(主張が客観的に実証されている、数値や事実を正確かつ適正に引用する、比較の方法が公正)がかかります。「県内トップクラス」「地域一番」は、根拠を同じページで示せないなら書きません。

労使のどちらに立つか

社労士に特有の項目です。避けるのは、片方の味方だと言い切る書き方です。法第1条の使命は事業と労働者の両方を挙げ、第1条の2は「公正な立場」、会則第43条の2は適正な労使関係を損なう行為の禁止、倫理綱領は「中立公正」を掲げています。経営者向けのページでも、「会社の味方」と名乗るより、会社が何をすれば法に沿うのか、従業員とのあいだで何を決めておくのかを書く形にします。「辞めさせ方」のように、従業員を相手にした手段として読める題も避けます。

不安をあおる書き方

避けます。会則第43条の4第1項は、不当な方法での勧誘を禁じています。法改正の施行日や罰則を知らせるのは役に立つ情報です。そこに「放っておくと会社が危ない」のような、依頼を急がせる言い回しを足さないことです。

メールでの広告と、問い合わせのあとのやり取り

社労士の決まりがいちばん具体的な場所です。会則第43条の4第4項は承諾を得ない電子メールでの広告を、第2項は依頼しない意思を示した人への勧誘を禁じています。フォームから問い合わせた人を、そのまま案内メールの送り先に加えない。資料請求の画面で、案内メールを送ってよいかを別に聞く。断った人には送らない。この三つは、ホームページの作りで決まります。

ポータル・紹介サイトへの掲載料

条件つきです。掲載料を名指しした条文は見当たりません。法第23条の2は、第26条・第27条に違反する者からの事件のあっせんを禁じています。紹介元の業者が自分で社労士の業務をしていないか、社労士を名乗っていないかを確かめ、依頼が決まるたびに払う形なら、所属の会に確かめてから決めます。

記録の保存

広告の記録の保存を定めた条文は見つかりませんでした。法第19条の二年の保存は業務の帳簿の話です。当社は、公開したページの文面と日付、案内メールの送り先の承諾の記録を残すことを勧めます。

3つの市の19事務所で見た書き方

当社は9業種・27の商圏で検索結果と事業者のサイトを数えました(まとめは9業種・27の商圏のデータ)。社労士は福井市、仙台市、沼津市で、福井六つ、仙台八つ、沼津五つ、19の事務所のサイトを同じ項目で見ています。広告の決まりの目で読み直すと、次のことが目につきます。

料金は19のうち13が載せていました。福井の四つは、金額がどれも料金のページやPDFの奥にあり、トップで金額が見えたところはありません。仙台では、少なくとも三つがトップで顧問料の金額を出していました。トップに出すなら、その金額の条件もトップから一度でたどれるかが、上の第43条の4第1項の読み方では大事になります。

助成金の報酬を受給額の割合で書いていた事務所は、福井と仙台で少なくとも四つありました。そのうち一つは、顧問先と一般で割合を分けて書いていて、条件が一目で読める書き方でした。

相談が無料だとトップに書いていたのは19のうち13です。無料と書くこと自体に問題はありません。ただ、同じトップに、頼んだ会社の声を載せていたのは二つでした(どちらも仙台)。一つは業種と従業員数だけの匿名、もう一つは会社名と所在の区市、代表者名まで出していました。実名で出すなら、了解の範囲は匿名より広くなります。

事例や実績を件数や金額で書いていたのは、福井の二つで、どちらも助成金です。そのうち一つは、県内での位置を示す言い方を添えていました。根拠が同じページにないなら、比較・最上級の項目に当たります。

更新の中身にも一つ気づきました。福井と沼津で、別の事務所に同じ日付・同じ題の記事が載っていました。記事を配信するサービスの記事と見ています。配信された記事でも、自分のサイトに載せれば自分の事務所の表示です。法改正の日付や手続きの中身が自分の説明と食い違っていないかは、載せる側で読むことになります。

労使のどちらに立つかという書き方は、今回の横並びの項目に入れておらず、数えていません。19のサイトに「経営者の味方」の類の言い回しがあったかどうかは、ここでは言えません。

外部に運用を頼むときに確かめること

制作や運用、広告を外に頼むときに当社が確かめている三つを書きます。

一つ目は報酬の形です。業者への支払いを問い合わせや顧問契約の件数、受けた報酬の額に連動させると、業者は依頼を誘う側に立ちます。法第23条の2の「事件のあつせん」や名義の利用との境目に近づく形です。社労士の決まりで、この点を名指しした条文は見つけられませんでした。報酬を件数に連動させない形にするかどうかは、所属の会で確かめてから契約してください。

二つ目は、相談の受付と、その後のやり取りを業者に渡さないことです。問い合わせには会社と従業員の事情が書かれていて、第21条の守秘がかかります。フォームの通知と電話の転送先は事務所にします。業者が案内メールや電話で追いかける形は、会則第43条の4第2項・第4項から見ると、事務所自身の勧誘として扱われると考えておくほうが安全です。業者のページが社労士でない者の名前に「社労士」を含めていないか(第26条)も見ておきます。

三つ目は原稿の確認の流れです。業者が書いた文章でも、公開すれば事務所の広告です。料金、助成金、件数、声、労使に触れるページは、公開の前に社労士本人が読む順番を契約に書いておきます。契約で決めておくことは運用代行を頼む前に契約で決めておくことにまとめています。

公開前に確かめる順番

一枚を公開する前に、当社はこの順で読みます。所属の会に細則や内規があるなら、それを先に読みます。

  1. 顧問料の金額の横に、人数の区分と、含まれるもの・別料金のものが書いてあるか。助成金の報酬は、何に対する割合か、受給できなかったときにどうなるかが書いてあるか。
  2. 件数・受給額・年数に、数えたものと期間が書いてあるか。根拠のない順位の言い方が残っていないか。
  3. 事例と声に会社の了解があり、実名なら、名前を出すことまで了解に含まれているか。
  4. 片方の味方だと読める一行、従業員を相手にした手段として読める題がないか。
  5. 依頼を急がせる言い回しがないか。
  6. 問い合わせのフォームで、案内メールの承諾を別に取っているか。断った人を送り先から外す手順があるか。
  7. 配信を受けた記事の中身を、自分で読んだか。公開した日付と文面を残したか。

4と6は、社労士の会則と法の使命の規定から出てくる、社労士ならではの確かめどころです。

あわせて読む

社労士のホームページで、どの業務の言葉に誰が並んでいるかは社労士のホームページ集客:3つの市で検索結果と19事務所のサイトを数えたに、守秘の中で事例と声をどう書くかは社労士のホームページに事例と声がないときに書きました。他の士業の広告の決まりは、弁護士の広告規程、司法書士の広告規則、行政書士の広告規制、税理士の広告規制にまとめています。

出典

  • 社会保険労務士法(e-Gov 法令検索、第1条・第1条の2・第16条・第19条・第21条・第23条の2・第26条)https://laws.e-gov.go.jp/law/343AC0000000089
  • 厚生労働省「社会保険労務士法の一部を改正する法律の施行について」https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/roumushi/shahoroumu01/01.html
  • 全国社会保険労務士会連合会「全国社会保険労務士会連合会会則」(令和6年11月29日施行)https://www.shakaihokenroumushi.jp/Portals/0/doc/nsec/soumu/2024/全国社会保険労務士会連合会会則(R6.11.29施行).pdf
  • 全国社会保険労務士会連合会「社会保険労務士倫理綱領」https://www.shakaihokenroumushi.jp/Portals/0/doc/nsec/kouhou/2022/社会保険労務士倫理綱領.pdf
  • 全国社会保険労務士会連合会「組織概要」(会則等の掲載ページ)https://www.shakaihokenroumushi.jp/organization/tabid/231/Default.aspx
  • 消費者庁「比較広告に関する景品表示法上の考え方」https://www.caa.go.jp/policies/policy/representation/fair_labeling/guideline/pdf/100121premiums_37.pdf
  • 消費者庁「ステルスマーケティング規制について」https://www.caa.go.jp/policies/policy/representation/fair_labeling/stealth_marketing/
  • 日本経済新聞「社労士広告『100%経営者の味方」は不適切 労使中立反する797件是正」(見出しのみ確認。本文は読めていません)https://www.nikkei.com/article/DGXZQOTG146H20U5A810C2000000/