税理士事務所のホームページを作る、あるいは作り直すとき、最初に決めることになるのは「どのページを置くか」です。制作会社の解説には、事務所概要、代表挨拶、業務内容、料金、お客様の声、アクセス、お問い合わせといった項目の一覧がよく並んでいます。どれも要るページですが、一覧からは、顧問先になる経営者がそのページの何を読んで事務所を選ぶのかが見えてきません。
この記事は、依頼する側が税理士を選ぶときに確かめること(顧問料、対応業種、地域、担当者、会計ソフト、連絡手段の六つ)から逆にたどって、それぞれを事務所のサイトのどこに、どう書くかを整理したものです。材料は、税理士を変えた、または変えようとしている経営者への公開調査と、当社が2026年9月24日に金沢市・大分市・松山市で24事務所のサイトを同じ項目で見た記録です。広告の決まりと制作費の幅にも触れます。
この記事の結論
- 「地域名 税理士 顧問料」の検索結果は、当社が数えた3つの市とも1ページ目の多くが紹介サイトや比較サイトでした。比べる人はそこで候補を絞り、事務所のサイトには「自分の会社の場合はどうか」を確かめに来る、と当社は見ています。
- そのため、ページの数より先に、六つの項目それぞれにトップから迷わず着ける答えがあるかを見ます。
- 報酬は、月額の表だけでなく、条件を決めた年額と、料金に含まれないものまで書くと、比べる材料になります。
- 地域の書き方と、事例・お客様の声は、税理士法と税理士会の決まりに触れやすい項目です。作る前に所属の税理士会で確かめます。
依頼者は、事務所のサイトに来る前にどこで比べているか
「地域名 税理士 顧問料」で検索すると、当社が数えた2026年9月24日の時点で、1ページ目の9件のうち、金沢で6件、大分で7件、松山で6件が、税理士の紹介サイト、比較サイト、会計ソフト会社の税理士検索でした(3つの市で24事務所のサイトを数えた記事)。顧問料を手がかりに税理士を比べようとする人の多くは、まずそこで候補を絞ることになるはずです。
事務所のサイトが読まれるのは、その後か、知人から紹介を受けて事務所名で調べたときです。そのとき読む人は、一覧の一行では分からなかったこと、つまり「自分の会社の場合はいくらで、誰が、どうやって見てくれるのか」を確かめに来ています。当社は、事務所のサイトを比較サイトと同じ一覧をもう一度並べる場所ではなく、その確かめに答える場所だと考えています。
依頼者が確かめていること:調査と、24事務所で見えたこと
選ぶ側の言葉は、公開された調査から拾えます。小谷野税理士法人が2026年7月23日に公表したインターネット調査(過去3年以内に税理士を変えた、または変更を検討している会社経営者・役員325名、調査期間は同年7月16日〜18日)では、前の税理士への不満の上位は、レスポンスの遅さや相談しにくさ(29.8%)、顧問料と内容が見合わないこと(26.5%)、提案や助言がないこと(26.5%)でした。新しい税理士を選ぶときに重視する点は、相談しやすさ・人柄・相性(21.1%)、クラウド会計などITへの対応(20.9%)、業界の専門知識(18.6%)が上位で、価格は7.2%でした。
税理士法人が自ら行った調査で、対象も「変えた・変えたい人」に限られます。それでも、選ぶ側が何を見ているかの手がかりにはなります。価格が7.2%と低いのは、料金がどうでもよいという意味ではないと当社は読んでいます。不満の二番目は「顧問料と内容が見合わない」でした。金額そのものより、その金額で何をしてもらえるのかが分からないことが、不満の元になっています。
日本税理士会連合会(以下、日税連)の一般向けの案内も、報酬について同じ点に触れています。税理士会が定めていた報酬規定は2002年の改正税理士法で廃止され、いまは各税理士が自己責任と説明責任に基づいて報酬を算定しています。そのうえで依頼者には、委嘱の範囲(頼む仕事の範囲)と報酬額について契約書を結ぶことを勧めています。依頼者が契約の前に知りたいのは、金額と、その金額に含まれる仕事の範囲だということです。
事務所の側がどこまで書いているかは、当社が数えた範囲で見えます。金沢・大分・松山で、検索結果によく出てくる地元の事務所を8つずつ、合わせて24のサイトを同じ項目で開いた結果です。
| 項目(各市8事務所のうち) | 金沢 | 大分 | 松山 |
|---|---|---|---|
| 顧問料の金額が読み取れた | 3 | 3 | 7 |
| 会計ソフトの名前を挙げて対応を書いていた | 3 | 2 | 4 |
| LINEで相談を受けていると確かめられた | 0 | 0 | 3 |
| オンライン面談の明記があった | 1 | 0 | 5 |
| 税理士の変更についての専用ページがあった | 4 | 0 | 1 |
| お客様の声や事例が見当たらなかった | 2 | 5 | 4 |
2026年9月24日時点、当社調べ。同じ税理士事務所でも、町によって「当たり前」の水準がこれだけ違います。松山では料金もオンライン面談も珍しくなく、大分では料金を載せているだけで少数派です。対応業種と担当者の書き方は今回の項目に入れていないので、数はありません。
六つの項目を、どのページにどう書くか
ここからは、項目ごとに載せる場所と書き方を、当社の考えとして書きます。先に全体を表にします。
| 依頼者が確かめること | 主に載せる場所 | 書き方の要点 |
|---|---|---|
| 顧問料 | 料金のページ(独立した一枚) | 条件を決めた年額、料金に含まれないもの、金額は文字で |
| 対応業種 | 業務のページ、事例 | 業種名と、その業種で実際にしている仕事 |
| 地域 | 事務所案内、料金のページ | 訪問する範囲と、オンラインで対応する範囲 |
| 担当者 | 事務所と担当者のページ | 誰が担当し、税理士本人とはどう会うか、登録の情報 |
| 会計ソフト | 業務のページ、よくある質問 | 対応するソフト名、今のソフトのまま頼めるか、記帳の分担 |
| 連絡手段 | 問い合わせのページ | 手段ごとの受付時間と、返信の目安 |
顧問料:月額の表に、年額と「含まれないもの」を足す
24事務所で料金を載せていたところの多くは、売上の区分ごとの月額と、決算料を別々に並べていました。読む人は自分の区分を探し、月額を12倍し、決算料と記帳の料金を足して、ようやく年額にたどり着きます。業種と年商を置いたモデルケースで年額まで書いていた事務所は、この計算を読む人の代わりにしていました。
もう一つ書いておきたいのは、料金に含まれないものです。年末調整、償却資産の申告、消費税の申告、税務調査の立ち会い、訪問の回数などです。不満の二番目が「顧問料と内容が見合わない」だったことを考えると、含まれないものを先に書くのは、依頼を遠ざける文章ではなく、比べる材料を渡す文章です。金額は画像やPDFにせず、文字で書きます。
料金のページがあっても、「地域名 税理士 顧問料」の検索でそのページが出てくるとは限りません。3つの市で見ると、料金を載せている事務所でもトップページが出ていたり、どのページも出ていなかったりしました。題の付け方とページの分け方は顧問料を載せても「顧問料」で出てこない理由に書きました。
なお、税理士会の広告の運用指針は、当社が読めた古い版(平成14年版の写し)では、報酬金額を明示することを禁止するものではないとしたうえで、報酬についての曖昧で不正確な表現を誤導の例に挙げていました。現行の版で同じかどうかは確かめられていません。
対応業種:業種名と、その業種でしている仕事を一緒に書く
「飲食業」「建設業」「医療」と業種名を並べるだけでは、依頼者には「受けてもらえる」ことしか分かりません。選ぶときに知りたいのは、自分の業種のお金の流れや手続きを分かっているかです。たとえば建設業なら工事ごとの原価の管理、飲食業なら日々の現金売上の記帳というように、その業種で実際にしている仕事を一、二行添えると、業種名が判断の材料になります。調査で18.6%が挙げた「業界の専門知識」に答える書き方です。
「〇〇業に強い」「専門」と書く場合は、それを裏付ける事例や件数を同じサイトで示せるかを先に考えます。裏付けのない「強い」は、広告の決まりでいう過度な期待を抱かせる表示の側に寄ります。
地域:訪問する範囲と、オンラインで対応する範囲を分けて書く
「県内全域対応」の一行は、遠くの依頼者には本当に来てもらえるのかが分からず、近くの依頼者には何も伝えません。訪問するのはどの市町まで、それより外はオンライン面談と郵送やクラウドでのやり取り、と分けて書くと、自分がどちらに入るかが読めます。訪問に交通費がかかるなら、料金のページにも書きます。
対応地域のために周辺の市町ごとのページを作るなら、注意が一つあります。国税庁の「税理士制度のQ&A」は、ウェブサイトへの表示を「外部に対する表示」に含め、「○○○税理士事務所□□□分室」「○○○税理士事務所□□□オフィス」のように税理士事務所と誤認されるおそれのある表示があれば、二ヶ所事務所に当たるとしています。税理士法第40条第3項は、税理士が事務所を二以上設けることを禁じています。地域のページには、その町に事務所があるように読める名前や住所、電話番号を置かず、本拠の事務所名と所在地をどのページからも読めるようにします。なお、当社が見た24事務所に、周辺の市町ごとの専用ページを持つところはありませんでした。
担当者:誰が見て、税理士本人とどう会うか
依頼者が契約の前に気にするのは、契約したあと誰とやり取りするかです。所長の税理士が直接見るのか、職員が担当して税理士は決算のときに確認するのか。担当が変わることはあるのか。面談は毎月か、決算の前だけか。事務所の規模によって答えは違いますが、どの形でも、書いてあれば依頼者は自分に合うかを判断できます。調査で上位だった「相談しやすさ・人柄・相性」は文章だけでは伝わりにくい項目ですが、担当者の顔写真、経歴、担当している業種が分かると、問い合わせる前の迷いは小さくなります。
税理士については、所属する税理士会と登録番号を書いておくと、依頼者が自分で確かめられます。日税連の案内によれば、税理士は事務所の所在地を管轄する税理士会に所属して日税連の名簿に登載されており、日税連の「税理士情報検索サイト」で氏名や事務所所在地から検索できます。国税庁の「税理士をお探しの方へ」も、このサイトを案内しています。
会計ソフト:ソフトの名前と、今のソフトのまま頼めるか
依頼者が会計ソフトの欄で確かめたいのは、自分が使っているソフトのまま頼めるか、変える必要があるならその手間と費用を誰が持つか、です。対応するソフトの名前を挙げ、記帳は依頼者がするのか事務所が代行するのか、領収書や通帳のデータをどう渡すのかまで書くと、依頼したあとの毎月の作業が想像できます。24事務所で会計ソフトの名前を挙げて対応を書いていたのは、金沢3、大分2、松山4でした。大分の2事務所は、どちらも同じ会計システムの会社の製品名だけでした。調査で20.9%が重視すると答えた項目なので、書いていないことで候補から外れている事務所もあると当社は見ています。
連絡手段:手段ごとの受付時間と、返信の目安
前の税理士への不満の一位は、レスポンスの遅さと相談しにくさでした。電話、メール、LINEやチャット、オンライン面談のうち何が使えるか、受付の時間帯、返信までのおおよその目安を書きます。目安は、いまの体制で守れる範囲で書きます。守れない目安は事実と合わない表示になり、契約後の不満の種にもなります。LINEで相談を受けていると確かめられた事務所は、金沢と大分ではゼロ、松山では3つでした。
作る・作り直すときに置くページ
六つの項目を受け止めるために、当社が最低限と考える構成です。ページの数は事務所の規模で増減しますが、上から順に優先します。
- 料金:顧問料の表、条件を決めた年額のモデルケース、含まれないもの、確定申告など単発の料金。
- 事務所と担当者:税理士と職員、所属税理士会と登録番号、担当の決め方、所在地と訪問の範囲。
- 業務:法人の顧問、個人の確定申告、創業や法人化の相談など、依頼者の用件ごとに一枚ずつ。対応業種と会計ソフトはここに書きます。
- 税理士を変えたい方へ:変更の手順、引き継ぎに要る書類、時期による違い、変えないほうがよい場合。書き方は税理士の変更ページの記事にまとめています。
- よくある質問:会計ソフト、記帳の分担、面談の頻度、契約期間と解約。
- 事例とお客様の声:載せるなら、委嘱者の了解を得たうえで、委嘱者が特定されない書き方にします。
- 問い合わせ:連絡手段ごとの受付時間と返信の目安、初回相談の料金と時間。
どのページから手を入れるかは、事務所の町で何が欠けているかによって変わります。金沢市で8事務所を同じ項目で見た例は金沢市の税理士事務所の商圏調査の見本にあります。
広告の決まりで、作る前に押さえておくこと
当社は法律の専門家ではありません。ここに書くのは、公開されている資料を読んだ範囲で、ホームページを作る側として気をつけていることです。
税理士法第39条は、税理士が所属税理士会と日税連の会則を守ることを義務としています。各税理士会には会則に基づく「会員の業務の広告に関する細則」がありますが、本文は会員向けの場所で案内されていて、当社は現行の本文を公開の場所で読めていません。読めた範囲では、次の四つがサイトの作りに直接関わります。
- 信用失墜行為の禁止(第37条)と、広告の細則・運用指針:事実と合わない表示、誤導や誇大な表示、他の事務所と比べる表示を避けます。
- 守秘の義務(第38条):事例とお客様の声は、委嘱者の了解と、特定されない書き方が前提です。
- 二ヶ所事務所の禁止(第40条第3項)と国税庁のQ&A:地域のページや別の名前のサイトでの、名前と住所の扱いです。
- 景品表示法とステルスマーケティングの規制:頼んで書いてもらった口コミの扱いです。
項目ごとの「書ける・条件つき・避ける」は、税理士の広告規制:ホームページで書けること、避けることに分けて書きました。公開の前に、所属の税理士会から現行の細則と運用指針を取り寄せて照らし合わせてください。
制作費の幅(2026年10月2日確認)
税理士事務所向けの料金を公開している制作サービスを三つ見ました。税理士向けの型を使う月額型では、税理士繁盛のエントリープランが初期費用0円・月額4,800円(キャンペーン価格で、通常は初期48,000円・月額6,800円。基本はトップページのみ)、株式会社WEBマーケティング総合研究所の「税理士パック」が初期費用65,780円・月額6,490円から(税込、最低契約期間4か月、公開用5ページと雛形9ページ)でした。一から作る型では、株式会社オルトベースが税理士・公認会計士のホームページの平均受注単価を45万〜65万円と公表しています(税込か税抜かの表記は見当たりませんでした)。
金額の差は、主に「誰が文章を書き、誰が直すか」の差です。上の六つの項目は、料金の改定、担当者の交代、対応ソフトの追加のたびに書き換えが要ります。制作費を比べるときは、公開後に料金や担当者の欄を事務所の中で直せるか、直せないなら一回いくらかかるかも確かめておくと、作ったあとで止まりにくくなります。
当社は、作って終わりにせず、問い合わせが来るようになるまで手を入れ続ける形で運営を引き受けています。料金は、始めるときに契約料20万円と実費をいただき、そのあとの月額は低く始めて、問い合わせが増えるにつれて上がる仕組みです(料金)。始める前に、その町で検索されている言葉と上位の顔ぶれを数え、六つの項目のどれが町の中で欠けているかを確かめます。
作り方ごとの3年の総額と、見積もりで確かめることは、税理士のホームページ制作の費用:作り方ごとの目安と、見積もりで確かめることに詳しくまとめています。
今日、自分の事務所のサイトで確かめられること
- スマートフォンでトップページを開き、顧問料・対応業種・地域・担当者・会計ソフト・連絡手段の六つそれぞれに、何回の操作でたどり着けるかを数えます。たどり着けない項目が、最初に書き足すところです。
- 料金のページで、売上の規模と記帳を任せるかどうかを一つ決め、その依頼者の年額が計算なしで読めるかを見ます。料金に含まれないものが同じページにあるかも見ます。
- 対応している会計ソフトの名前と、今のソフトのまま頼めるかが書いてあるかを見ます。
- 日税連の税理士情報検索サイトで所長の名前を検索し、表示される事務所名と所在地が、サイトの表記と合っているかを確かめます。
- 問い合わせのページにある受付時間と返信の目安が、いまの実際の体制と合っているかを、職員の方と一緒に確かめます。
- 地域のページや別の名前のサイトに、「□□オフィス」のような名前や、本拠以外の住所・電話番号がないかを見ます。
出典(いずれも2026年10月2日確認)
- 日本税理士会連合会「税理士に相談する」(報酬規定の廃止、契約書の勧め、税理士情報検索サイト)https://www.nichizeiren.or.jp/consultation/expart/
- 国税庁「税理士をお探しの方へ」https://www.nta.go.jp/taxes/zeirishi/search/search.htm
- 国税庁「税理士制度のQ&A 5 税理士事務所」https://www.nta.go.jp/taxes/zeirishi/zeirishiseido/qa/05.htm
- 税理士法(e-Gov法令検索、第37条・第38条・第39条・第40条)https://laws.e-gov.go.jp/law/326AC0000000237
- 小谷野税理士法人のプレスリリース(2026年7月23日、PR TIMES)https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000011.000144559.html
- 各社の公開料金:税理士繁盛「エントリープラン」、株式会社WEBマーケティング総合研究所「税理士パック」、株式会社オルトベース「税理士のホームページ制作」