2026年9月、伊豆の下田、長野の白馬、沖縄の宮古島で、小さな宿(民宿、ゲストハウス、ペンション、ロッジ、一棟貸し)の公式サイトを8軒ずつ開きました。どれも、その地域で宿を探す言葉を検索したときに出てきた宿です。確かめたのは、泊まる日を決めた人が、そのサイトの中で予約を終えられるかどうかでした。
先に当社の考えを書いておきます。公式サイトで予約されない理由の多くは、公式で予約する理由と、その手段が書かれていないことにあります。その場で空室が見られるか、公式だけの条件があるか。どちらもなければ、客は、宿を並べて比べられる予約サイト(楽天トラベルやじゃらん、Booking.com のようなサイト。OTAと呼ばれます)に戻って予約します。そして、予約エンジン(公式サイトに組み込んで、空室と金額を出し、その場で予約を確定させる仕組み)を入れるかどうかは、客室の数と、電話で受けられる手間で決めてかまいません。入れないという答えもあります。
24軒のうち、その場で予約を終えられたのは7軒でした
ここで「その場で予約できる」と数えたのは、公式サイトから空室を見て、日付と人数を選び、そのまま予約を確定できる宿です。
白馬は8軒中4軒でした。残る4軒は、電話・メール・フォームで申し込む形です。
下田は8軒中2軒です。ほかに、自分のサイトの中に予約のカレンダーを置いているものの、仕組みまでは確かめきれなかった宿が2軒。空きを問い合わせる申し込みを送って返事を待つ宿と、電話とLINEだけの宿が1軒ずつ。予約のボタンを押すと、OTAの一社にしかつながらない宿が1軒。残る1軒は公式サイトが見つからず、OTAのページだけがありました。
宮古島は8軒中1軒です。外部の予約システムのプランへ直接つないでいる宿がもう1軒あり、これは空室の表示までは確かめられませんでした。電話・メール・フォームで受ける宿が5軒(うち1軒はOTAへのリンクも並べています)、残る1軒は画面を読み取れませんでした。
合わせると、確かめられたのが24軒中7軒、確かめきれなかったものを足しても10軒です。残りの多くは、申し込みを送っても予約は確定せず、宿からの返事を待つ形でした。
この24軒は、検索の1ページ目に公式サイトで出てきた、どちらかといえば見つけてもらえている側の宿です。下田の観光協会の民宿一覧では、詳細を開けた18軒のうち10軒が、ホームページの欄が空いていました。
OTAでは、日付を入れれば空室と金額が一度に出て、そのまま確定まで進みます。公式サイトで同じことをしようとした人は、多くの宿で電話番号かフォームにたどり着きます。電話の受付時間を書いていた宿は、15時から20時、9時から20時、9時から22時と書いていました。その時間の外で泊まる宿を決めている人にとって、公式サイトは「予約する場所」ではなく、写真と中身を「確かめる場所」になります。
金額を書く宿と、予約できる宿が分かれていた
いちばんはっきりしていたのは白馬です。公式サイトのページに金額を載せていたのは3軒で、3軒とも予約エンジンのない側でした。予約エンジンのある4軒は、金額を予約エンジンの画面に任せていて、ページには書いていません(予約エンジンの中の金額までは今回確かめていません)。
3つの地域に広げても同じでした。金額を載せていたのは下田2軒、白馬3軒、宮古島5軒の計10軒。この10軒の中に、その場で予約できると確かめられた宿は1軒もありませんでした。
公式だけの条件、つまり「公式サイトからの予約がいちばん安い」「直接予約なら割引」「公式限定の長期滞在プラン」のような記載も数えました。下田2軒、白馬1軒、宮古島3軒の計6軒です。このうち、その場で予約できると確かめられたのは1軒だけで、ほかの4軒は電話かフォームで受ける宿でした(残る1軒は、仕組みを確かめきれなかったカレンダーの宿です)。そのうちの1軒は、直接予約なら割引と書いたすぐ近くに、OTAへのリンクを並べていました。反対に、予約エンジンを持つ7軒のうち、公式だけの条件をページに書いていたのは1軒です。
予約の手段を持つ宿は理由を書かず、理由を書く宿は手段を持っていない。24軒はおおむね、この二つに分かれていました。理由と手段の両方がそろっていたのは2軒(うち1軒は仕組みが未確認)。読み取れた22軒のうち8軒は、そのどちらもありませんでした。
分かれる理由は、見ていて想像がつきます。予約エンジンを入れた宿は、金額もプランもそちらに任せ、ページは入口のボタンを置く場所になります。入れていない宿は、ページに書ける言葉と金額しか持っていないので、それを書きます。どちらも、客が「なぜ、ここで予約するのか」を読む場所を空けたままです。
料金を載せるかどうかそのものは、料金は載せるべきかに書きました。宿の場合は、それとは少し話が違います。宿の金額は、同じ部屋がOTAにも並んでいて、客がいつでも比べられます。公式の金額がOTAより高い、あるいはOTAにしかないプランがあるなら、ページをどう直しても公式では予約されません。そのときに直すのは、ページではなく値付けと部屋の出し方です。ポイントや使い慣れた画面を理由にOTAを選ぶ人もいて、その人たちまで公式に移すことを目標にする必要はないと考えています。
予約エンジンは、入れれば予約が入るものではありません
白馬村観光局は、村の宿が参加する公式予約サイトを運営しています。その事業報告(令和6年度)では、公式予約サイトの手数料の目標3,650,000円に対し、実績は671,171円でした。報告書自身が、参画施設のケアが後手になり、プラン作りや部屋出しの手伝いが十分にできなかった結果だと書いています。観光局は同じ年度に、宿が自社の予約システムを入れる際の設定の補助もしています。
予約の仕組みがあっても、部屋とプランが入っていなければ、客には空室が見えません。予約エンジンを入れると、日ごとの空きを入れ、OTAに出している部屋と数を合わせ、季節ごとにプランを作り直す仕事が増えます。これは、電話で予約を受ける手間を、別の手間に置き換えることです。
ですから、入れるかどうかは次の二つで決めてかまいません。一つは客室の数です。日ごとの空きが入れ替わる部屋が多いほど、電話で一件ずつ答えるより、空室を見せたほうが早くなります。もう一つは、電話を受けられる手間です。予約の電話が鳴りやすい時間に、夕食の支度やチェックインで手がふさがる宿では、出られなかった電話がそのまま他の宿の予約になります。
反対に、部屋が少なく、連泊や長期の客が多く、電話に出られる時間が決まっている宿なら、入れない選択は十分にあります。宮古島で週や月の料金を出していた3軒は、どれも予約エンジンを置いていませんでした。1か月泊まる人は、空室の〇×より先に、部屋の様子や決まりごとを確かめたいはずで、その作りは理にかなっていると思います。
入れないと決めたなら、代わりに書くことがあります。金額、公式で予約する理由、そして申し込みのあと何時までに返事をするか、です。24軒の中には、フォームを送っただけでは予約は確定せず、返信のメールで確定する、と申し込みの画面に書いている宿がありました。空きを確かめたあとに決済のリンクを送り、支払いで確定する、と書いている宿もありました。確定までの道筋が書いてあれば、電話とフォームでも、客は迷わずに待てます。
御社の公式サイトで、予約の完了まで何回押すかを数える
当社が24軒で見た順番を、そのまま自社のサイトで試せる形にしました。
- スマートフォンで、宿の名前を検索して、自社の公式サイトを開きます。
- 泊まりたい日を一つ決めます。埋まりやすい来月の土曜日と、平日の一日の二つで試すと違いが分かります。
- トップページから「予約」を探し、押した回数を数えます。予約の完了、または申し込みを送る直前まで数えます。
- 途中で画面の上のアドレスを見て、OTAの画面に移っていないかを確かめます。
- 金額が出たのが何回目かを書き留めます。最後まで出なければ「出ない」と書きます。
- 予約のボタンの近くに、公式で予約する理由が一行でも書いてあるかを見ます。
- 同じ日を、自社が載っているOTAで同じように数えます。
私たちが見た範囲では、予約エンジンのある宿は、空室と金額を予約エンジンの画面に任せていて、ページには公式で予約する理由がほとんどありませんでした。予約エンジンのない宿は、ページに金額が出るものの、最後は電話番号かフォームで止まりました。御社の数字がどちらに近いかで、足りないのが手段か理由かが分かります。なお、当社の24軒はページを開いて中身を確かめたもので、スマートフォンで予約を最後まで進めてはいません。御社のサイトでは、ご自身の指で最後まで押してみてください。
電話やフォームで受けているなら、予約の記録に「公式サイトを見て」の欄を一つ足しておくと、公式からの予約が何件あったかをあとから数えられます。記録の付け方は問い合わせ記録シートに書きました。3つの地域で、宿を探す言葉の1ページ目を誰が取っていたかは、小さな宿のホームページ集客にまとめています。
数え終えて、御社のサイトに「その場で空室が見られる」と「公式だけの条件」のどちらもなければ、先に決めるのは、予約エンジンを入れるかどうかではなく、そのどちらを持つかです。