士業の「専門」「No.1」「実績◯件」の表示:5士業の決まりと根拠の書き方

「相続に強い」「建設業許可の専門」「実績◯件以上」。士業の事務所のサイトを作るとき、こうした言葉は最初に候補に挙がります。検索結果の題にも多く並んでいるので、書かなければ埋もれるように見えるかもしれません。

当社は2026年9月24日に、弁護士、司法書士、行政書士、社会保険労務士(以下、社労士)、税理士の五つの士業について、三つずつ、合わせて15の市で、検索結果の1ページ目と地元の事務所のサイトを数えました。題まで書き留めていた範囲で、「強い」を含む結果を拾うと延べ24件ありました。そのうち21件は、弁護士や行政書士、相続の専門家を探すポータルや一覧サイトの題です。地元の事務所が自分のページの題に入れていたのは2件で、残りの1件は他の都市の事務所でした。ポータルの中の事務所の紹介ページで、事務所の名前の横に「◯◯問題に強い弁護士」と付いているものもありました。

「強い」は、多くの場合、事務所ではなくポータルが事務所に付けている言葉でした。事務所が自分で書くときは、所属の会の決まりがかかります。当社の立場は、言い切りの表示より、取扱い分野と、数えた件数の根拠を書く、です。

5つの士業で、線の引き方が違う

当社は法律の専門家ではありません。以下は、公開の資料を当社が読んだ範囲で、詳しくは士業ごとの規程のページにあります。

弁護士は、日本弁護士連合会の業務広告に関する指針が、「専門」「専門分野」の表示を、客観性が担保されないまま表示すると誤導のおそれがあるので、控えるのが望ましいとしています。「スペシャリスト」「プロ」「エキスパート」も同じ扱いです。「取扱い分野」は評価を伴わない表示として認められ、「積極的に取り組んでいる分野」という言い方が勧められています。「得意分野」は主観の表示として認められますが、実際に得意でない分野なら別です。「最も」「一番」「完璧」は注意が要る語、「常勝」「不敗」は使えない語です。訴訟の勝訴率は表示できず、件数を延べでふくらませる書き方は誇大な広告の例に挙がっています。

司法書士は、読めた山形県司法書士会の運用指針が、「専門分野」について弁護士とほぼ同じ線を引いています。「信頼性抜群」「顧客満足度」も注意が要る語に入り、取扱件数や実績を過大に表すことは、事実に合致しない広告の例です。会は広告が事実に合致していることの証明を求めることができ、証明できなければ事実に合致しない広告とみなしうるとされています。

行政書士、社労士、税理士では、「専門」を名指しした記述は、当社が読んだ範囲には見当たりませんでした。そのかわり、行政書士には倫理の品位の条文と、景品表示法の優良誤認(実際よりよく見せる表示)がかかります。社労士には、連合会の会則第43条の4第3項の「誇大若しくは虚偽」がかかります。税理士は、読めたのが古い版の運用指針(平成14年版の写しで、現行と同じとは限りません)だけですが、誇大又は過度な期待を抱かせる広告を禁じ、「最高の税務知識を提供します」を誤導の例に挙げていました。

比べる言葉は、五つとも厳しく見ています。弁護士と司法書士は、特定の事務所と比べる広告を禁じています。行政書士と社労士には景品表示法の比較広告の考え方がかかり、主張が客観的に実証されていること、数値や事実を正確かつ適正に引用すること、比較の方法が公正であることの三つが求められます。税理士の古い版の運用指針も、特定の会員の事務所と比べた広告を禁止される広告に入れていました。「No.1」「地域一番」は、この三つを同じページで示せないなら、書かないのが無難です。

並べると、弁護士と司法書士は「専門」の語そのものに線を引き、ほかの三つは語ではなく根拠の有無で線を引いています。どちらの線でも、根拠を示せる表示は残り、示せない表示は残りません。

数えた事務所の書き方

題を書き留めていた範囲で、地元の事務所の題に「専門」を入れていたのは、行政書士と社労士で見た3件でした(所在地を確かめられなかった1件を含みます)。弁護士と司法書士の地元の事務所の題には、「専門」は見当たりませんでした。決まりの線の違いと、向きがそろっています。

実績の件数の書き方は、士業で分かれました。

  • 弁護士:24事務所のうち、解決事例を載せていたのは6で、事例の件数を数字で掲げる事務所はありませんでした。
  • 司法書士:20事務所のうち、相談や処理の件数に触れる書き方は3つで、そのうち一つは件数の数字のない文言だけでした。
  • 行政書士:24事務所のうち6が、事例や実績の件数を書いていました。静岡市では、件数の代わりに「100%」「多数」「NO.1」という言い方をしている事務所が三つありました。熊本市では、グループの別の組織の相談件数を載せている事務所と、同じサイトの中で実績の数が二通りに書かれている事務所がありました。
  • 社労士:19事務所のうち、件数や金額の実績を書いていたのは福井市の二つで、どちらも助成金です。一つは県内での位置を示す言い方を添えていました。仙台市では、障害年金の専用サイトで相談の件数や受給の率を掲げるものが、1ページ目に出ていました。
  • 税理士:相談の実績の件数を掲げる事務所が、大分市で一つ見えました。ほかは、事例を数件ずつ載せる形でした。

「100%」や「NO.1」は、何を分母にした率か、何の順位かが書かれていなければ、行政書士でも社労士でも、上の比較や優良誤認の線にそのまま当たります。二通りに書かれた数は、どちらかが古いままになっているのだと思いますが、読む人にはどちらが正しいか分かりません。

言い切りの代わりに書くもの

当社は、言い切りの表示を、次の二つに置き換えることを勧めています。

一つ目は、取扱い分野を、読む人の用件の言葉で書くことです。「相続専門」と書く代わりに、「相続登記、住所の変更の登記、抵当権の抹消を扱っています」と並べます。読む人が探しているのは事務所の格付けではなく、自分の用件を頼めるかどうかです。用件の名前が並んでいれば、それが答えになります。

二つ目は、件数を書くなら、数え方と一緒に書くことです。

  • 何を数えたか(相談、受任、申請、許可、完了)。
  • いつからいつまでか、何年何月時点か。
  • 延べか、実数か。
  • 数えた記録が手元にあるか。

当社自身も、数字を出すときはこの形にしています。9業種・27の商圏のデータでは、何を、いつ、どの道具で数えたかと、数えられなかったことを同じページに並べました。数字の横に数え方があれば、読む人は数字の大きさではなく、数え方を見て信用するかどうかを決められます。

「専門」と書かなければ検索で埋もれる、という考え方もあると思います。ただ、上に書いたとおり、1ページ目の「強い」はほとんどがポータルの題で、地元の事務所が同じ言葉を題に入れても、題の言葉では差がつきません。差がつくのは、その用件についてページの中に何が書いてあるかです。

事務所が小さく、件数を書くとかえって小さく見える、という心配もあると思います。それなら、件数は書かなくてかまいません。取扱い分野と、その手続きの流れ、費用、かかる期間を書けば、件数がなくても、頼めるかどうかは判断できます。

公開前に確かめること

スマートフォンのページ内検索で足ります。題、ボタン、画像の中の文字も見ます。

  1. 「専門」「プロ」「エキスパート」「強い」「No.1」「一番」「最も」「トップクラス」「100%」を探します。
  2. 見つかった言葉ごとに、根拠が同じページにあるかを見ます。なければ、取扱い分野の言い方に直すか、消します。
  3. 件数や率を書いた箇所ごとに、何を数えたか、いつ時点か、延べか実数かが書いてあるかを見ます。
  4. 同じサイトの中で、同じ実績の数が二通りに書かれていないかを見ます。
  5. グループの別の組織の数を、事務所の数と読まれる場所に置いていないかを見ます。
  6. ポータルに載っているなら、そこで御事務所の名前の横に付いている言葉も読みます。弁護士と司法書士は、規程に反する第三者の情報発信に協力することも禁じられています。

士業ごとの決まりは、弁護士の広告規程、司法書士の広告規則、行政書士の広告規制、社労士の広告規制、税理士の広告規制にあります。三つの市で数えた全体は、行政書士のホームページ集客や社労士のホームページ集客などの記事に書いています。

1で見つかった言葉のうち、根拠を同じページに書けないものが一つでもあれば、その一語を、取扱い分野の言い方に直すところから始めてください。