「工務店 集客」と打って出てくる記事の多くは、見学会を工夫する、施工事例を増やす、ブログやSNSを続ける、といった内容です。間違ってはいません。ただ、どの町の工務店にもそのまま当てはまるように書かれていて、御社の町で家を建てようとしている家族が何と打ち、その1ページ目に誰のページが並んでいるかは、そこからは分かりません。反響が増えないと感じているときに知りたいのは、たぶんそちらのほうです。
当社はホームページの運営を引き受ける前に、その商圏で検索結果を数えます。工務店について、2026年9月24日に、長野県松本市、岡山県倉敷市、栃木県宇都宮市の三つの市で同じやり方を試しました。規模はあえて違えています。世帯数は、松本市が11万1千あまり、倉敷市が22万4千あまり、宇都宮市が24万4千あまりです(各市が公表している人口・世帯数。時点は2026年6月から9月)。
数えたのは、中心の言葉三つと、暮らしの側から出てくる言葉六つの1ページ目です。中心の言葉は「地名 工務店」「地名市 注文住宅」「隣の市 工務店 注文住宅」で、隣の市には安曇野市、総社市、鹿沼市を選びました。暮らしの言葉は「平屋 建てたい」「土地なし 注文住宅」「高断熱 住宅 工務店」「注文住宅 費用 相場」「実家 建て替え」「移住 家を建てる」に地名を付けたものです。そのうえで、1ページ目によく出てきた地元の工務店を市ごとに八社、合わせて24社のサイトを同じ項目で確かめました。松本については商圏調査の見本として一本にまとめてあり、この記事では三つの市を並べます。
限界も先に書きます。使った検索の道具は一つの言葉につき9件か10件を返し、見えるのは題とアドレスだけです。地図枠(地図と会社の一覧が出る枠)と広告は、三つの市の27回の検索すべてで見えていません。どの言葉が月に何回探されているかも分かりません。倉敷では、岡山市に本社を置き倉敷に展示場を持つ会社を「他の都市」に数えました。生活圏は重なるので、線引きとしては厳しめです。各社のサイトは主にトップページと一覧のページで確かめたので、下層のページの見落としはありえます。数え方そのものは検索結果の1ページ目を数えるに書きました。以下は、その範囲で見えた話です。
「地名 工務店」の1ページ目は、三つの市ともポータルの場所だった
中心の言葉三つ、合わせて27件のうち、住宅ポータル、比較サイト、フランチャイズの本部のページ(以下まとめてポータルと呼びます)は、松本で16件、倉敷で17件、宇都宮で16件でした。地元の工務店は、松本で4件、倉敷と宇都宮で8件ずつです。九つの言葉全体でも、ポータルは松本で83件中43件、倉敷で82件中41件、宇都宮で82件中47件と、どの市でも半分前後を占めていました。世帯の数が倍違っても、この形はほとんど変わりません。
いちばん厚かったのは隣の市の言葉です。「安曇野 工務店 注文住宅」は9件中8件、「総社 工務店 注文住宅」は7件、「鹿沼 工務店 注文住宅」は6件がポータルでした。倉敷の工務店で総社の言葉に入っていたのは、市ごとの専用ページを作っていた一社だけです。松本の見本でも、八社のうち七社が隣の市での施工を掲げるか事例を載せていたのに、市ごとのページを持つのは二社で、「安曇野」の言葉に入った地元は一件でした。
中心の言葉に入っていた地元のページの形も、見ておく価値があります。「倉敷 工務店」の地元2件は同じ一社のもので、どちらも「おすすめの工務店◯選」という、ポータルと同じ形の比較記事でした。「宇都宮 工務店」の地元2件も一社で、会社のサイトとSNSです。「倉敷市 注文住宅」には地元が4件入っていて、すべて会社のトップページでした。同じ言葉に、岡山市の会社が倉敷市専用のページで入っています。
ポータルは全国の地名ごとに同じ形のページを持っていて、そこでは工務店を並べて比べることが仕事です。地元の一社がホームページだけでその上に出ようとするのは、三つの市のどこでも重い課題になります。当社は、ここで正面から競うより、ポータルが取りに来ない言葉から置いていくほうが筋がよいと考えています(向き合い方は地方の会社と全国ポータルに書きました)。
地元が顔を出すのは、平屋や高断熱といった暮らしの問いに答えたページだった
では、取りに来ない言葉はどこか。地元の工務店がいちばん多く入っていた言葉を市ごとに見ると、倉敷は「倉敷 高断熱 住宅 工務店」で9件中5件(四社)、次いで「倉敷 平屋 建てたい」の4件でした。松本は「高断熱」と「移住」の3件ずつで、中心の言葉ではどれも2件以下です。宇都宮は「平屋 建てたい」と「費用 相場」が3件ずつで、中心の言葉の二つと並びました。
件数よりはっきりしていたのは、入っていたページの中身です。暮らしの言葉で入っていた地元のページは、多くがその問いに答えるコラムやブログでした。宇都宮の「平屋 建てたい」では、地元の二社が平屋についてのコラムで3枠を取り、物件の一覧は2件だけです。倉敷では一つの工務店が、九つのうち六つの言葉に、主にブログやコラムで顔を出していました。
同じ言葉でも、町によって結果はまったく違います。「松本 平屋 建てたい」は10件すべてがポータルで、そのうち8件は中古住宅や建売の物件一覧でした。平屋を建てたい人の問いに工務店として答えているページは、1ページ目に一つもありません。宇都宮の「土地なし 注文住宅」は9件すべてがポータルか物件情報で、工務店は0件です。「宇都宮 高断熱 住宅 工務店」も、9件中8件がポータルと比較サイトで、地元は1件だけでした。
ここから当社が考えているのは、暮らしの言葉なら地元が入れる、ということではありません。暮らしの言葉は、その問いに答えたページを誰かが置けばそれが入り、誰も置かなければ物件一覧や比較サイトで埋まる場所だ、ということです。倉敷の高断熱と宇都宮の平屋は、地元の誰かがすでに答えを置いた町の姿で、松本の平屋と宇都宮の土地なしは、まだ誰も置いていない町の姿です。
同じ九つの言葉で、地名がそれぞれ別のものに取り違えられていた
三つの市で同じ言葉を打つと、それぞれの町で別の取り違えが起きていました。
松本は名字でした。「松本 工務店」の9件中7件は、東京、京都、青森、横浜、兵庫、岡山、島根の「松本工務店」という社名の会社です。「松本 実家 建て替え」は10件中7件が、松本という名字の芸能人の実家の話でした。一方で「松本市」と市の字まで打つと、同じ名前の他社は一件も出てきません。
倉敷では、名字の問題はほぼありません。同じ名前の他社は九つの言葉を通して0件でした。その代わり「倉敷 実家 建て替え」の10件中3件が、市庁舎の建て替えの話でした。新聞の記事、市の計画のページ、国の資料です。残りも、全国の住宅会社のコラムや新築の物件一覧、建て替えの会社を探すサイトで、地元の工務店は1件、それも建て替えではなくリノベーションのページでした。
宇都宮では、物件探しと解体に引っ張られていました。「宇都宮 実家 建て替え」の10件中8件は、解体業者の一覧サイト、解体業者のページ、解体の費用や補助金を扱う情報サイト、そして市の老朽空き家の除却の補助金です。「土地なし 注文住宅」は、先に書いたとおり9件すべてが物件情報で、そのうち5件は建築条件のない土地の一覧でした。
取り違えの形は、打ってみるまで分かりません。名字か、市の施設か、別の業種か。ただ、三つの市に共通していたこともあります。「実家 建て替え」に工務店の答えがほとんどないことです。松本と倉敷は0件、宇都宮は1件でした。宇都宮のその1件は、ある工務店の建て替えの専用ページで、解体、仮住まい、費用、流れを一枚にまとめたものです。1ページ目がほぼ解体で埋まっているということは、実家を建て替えようとする人が、まず解体から調べ始めている、ということかもしれません。取り違えの確かめ方は検索語の取り違えに、建て替えのページをどう作るかは工務店の建て替えのページについての記事に分けて書きました。
自社の価格を数字で出していたのは、2社、1社、0社だった
24社を並べて、三つの市でいちばん揃っていた空白は価格です。
自社の注文住宅の価格を数字で示していた会社は、松本で八社のうち二社、倉敷で一社、宇都宮でゼロでした。松本の二社は、よくある質問の中で坪単価の幅を示すか、コラムの中で松本市周辺の建物価格と坪単価の目安を示していました。倉敷の一社は、相場を解説する記事の中で、自社の事例の本体価格を挙げていました。ほかに、分譲住宅や土地の価格だけを載せている会社が倉敷に二社、宇都宮に一社あり、一般的な相場を紹介する記事だけを置いている会社が松本に一社、宇都宮に二社ありました。
ところが「費用 相場」の言葉の1ページ目は、住宅会社の記事でいっぱいでした。倉敷では9件中8件が事業者のコラムで、そのうち5件は岡山市、広島県福山市、島根や鳥取の会社が「倉敷の相場」として書いたものです。宇都宮でも住宅会社のコラムが6件を占めていました。どれも中身は、県の平均や坪単価の幅といった一般的な相場の解説が中心です。
相場の記事は書かれているのに、「この会社で建てるといくらか」は、ほとんどのサイトで分からない。家を建てたい人が来場を決める前に知りたいのは、たぶん後者です。倉敷では、坪単価を数字で出した岡山市の会社が、倉敷市向けのページで「倉敷市 注文住宅」と「倉敷 平屋 建てたい」の1ページ目に入っていました。価格を出したから入った、とは言えませんが、価格を出している会社が少ない町では、出すこと自体が比べられる理由になります。
価格を出すかどうかは、御社の判断です。坪単価の幅で出すのか、実際の事例の総額の幅で出すのかでも、伝わるものが違います。考え方は料金を載せるべきかに、工務店の価格の出し方は工務店の価格の載せ方についての記事に書きました。なお、工務店には医療や士業のような業種固有の広告の決まりは今回調べていません。土地や分譲住宅の価格を載せるときは不動産の表示の決まり(不動産の公正競争規約)の対象になりうるので、そこは確かめてから進めてください。
建て替え、性能、事例の場所:町ごとに「当たり前」が違った
ほかの項目は、町によって揃い方が違いました。
施工事例に建てた市町村を書いていたのは、松本で二社、倉敷で八社とも、宇都宮で少なくとも六社です(倉敷と宇都宮の一部は要約を介した読み取りで、下層での確認が残っています)。お客様の声を載せていたのは、松本で四社、倉敷と宇都宮で六社ずつ。LINEで相談を受けていたのは、松本と宇都宮で二社、倉敷で五社でした。倉敷で事例に市町村を書いても、隣の会社との差にはなりません。松本では、書いているだけで少数の側に入ります。
2026年9月に入ってからの更新があったのは、松本で四社、倉敷で八社、宇都宮で六社でした。ただし中身を見ると、読み物の記事だったのは松本で一社、倉敷で四社、宇都宮で三社です。残りは見学会や展示場の案内、完成の報告、社内の行事の報告でした。更新の日付が新しいことと、探している人の問いに答えるページが増えていることは、別のことです。
三つの市に共通していた空白もあります。建て替えの専用ページや相談の案内を持っていたのは、松本と倉敷でゼロ、宇都宮で二社でした(宇都宮の一社は専用ページ、一社は建て替えかリフォームかの相談の案内です。倉敷には、建て替えかリフォームかの相談会を催している会社と、リノベーションの別の名前で実家のページを持つ会社が一社ずつありますが、建て替えの専用ページではありません)。断熱や気密の性能を実測の数字で示していたのは、どの市でも一社ずつです。残りは、断熱の等級や設計上の数字を書く会社と、「高気密・高断熱」という言葉だけの会社に分かれました。宇都宮では、言葉だけか記載なしの会社が八社のうち四社、松本では五社です。性能の数字を載せるなら、それが実測か設計値か等級かを分けて書くことで、読む人は比べやすくなります。
見学会や来場予約の入口は、松本と倉敷で八社とも、宇都宮で六社が置いていました。資料請求は、どの市でも六社です。来場への入口は、三つの市とも、どの会社もよく作り込んでいます。薄いのはその手前です。いくらで建つのか、どこに建てた家なのか、自分の条件(平屋、土地がない、実家の建て替え)に答えるページがあるか。そこに答えきれていない会社が、三つの市のどこでも多数でした。
同じ工務店でも、町によって「当たり前」の水準がこれだけ違います。どこかの町でうまくいった形をそのまま持ち込むより、御社の町でよく出てくる八社を並べて、その町で何が欠けているかを見るほうが、次に作る一枚を決めやすいと当社は考えています。
ホームページが効きにくい工務店と、それを今日見分ける方法
ここまで数えて、当社の立場ははっきりしています。工務店がホームページに手を入れるなら、「地名 工務店」で上に出ることを目指すより先に、来場予約の手前で比べられる材料を置くことです。自社の価格、どこに建てた家なのか、実家の建て替えや土地がない人への答え、性能の実測の数字。三つの市とも、中心の言葉はポータルの場所で、その材料を置いている地元の会社は少数でした。
反対の考え方もあります。家は見学会で決まるのだから、ホームページは見学会に呼べれば足りる、というものです。OBの紹介や地元での看板で見学会が埋まっている会社にとっては、これが当たっていると思います。そういう会社が、ポータルの厚い言葉に時間をかけても、見学会の予約が紹介より早く増えるとは言いにくいです。ただ、中心の言葉の1ページ目がポータルで埋まっている以上、紹介のない家族の比較は、来場予約より前にポータルの上で始まっていると見るのが自然です。その比較の途中で御社のサイトが開かれたとき、価格も建てた場所も分からなければ、候補から外れる理由になります。
ほかにも、効きにくい場面を数えた範囲で挙げておきます。「移住 家を建てる」は、宇都宮では9件中6件が県や市の移住の案内で、工務店は0件でした。この言葉の1ページ目は、もともと公的な窓口の場所です。空いて見える言葉が、探す人の少ない言葉である可能性は、どこにでも残ります。地図枠や広告が画面の上を占める言葉なら、記事で1ページ目に入っても目に触れにくくなります。
家を建てる家族の数そのものも、ホームページでは変わりません。三つの市のうち、市の持家の着工戸数を確かめられたのは宇都宮だけでした。令和6年度は1,313戸で、前の年度の1,196戸からは増えましたが、平成28年度の1,819戸と比べると3割近く少なくなっています(宇都宮市統計書 令和7年版)。栃木県の持家は令和7年度に4,247戸で、前の年度から12.9%減です(栃木県「令和7年度の栃木県内の新設住宅着工戸数」)。全国では、令和7年の持家は201,285戸で、前年から7.7%減、4年続けての減少でした(国土交通省「建築着工統計調査報告(令和7年計)」)。期間の区切りが違うので、割合は出しません。24万世帯あまりの市で、持家は年に千三百戸ほど。その取り合いの中で、一棟の違いが経営に響く業種だということは、先に押さえておきます。松本と倉敷の市の数字は、公開されている表を今回の調べ方で読めず、不明です。
各社が年に何棟建てているか、広告にどれだけ使っているか、紹介でどれだけ受注しているかも、外からは分かりません。サイトが薄い会社が仕事に困っている、という意味ではありません。
御社の場合にどちらなのかは、道具がなくても、スマートフォンで今日見分けられます。当社が三つの市で差を見た順です。
- 「地名 工務店」と「地名市 注文住宅」の二通りで検索し、1ページ目にポータル、同じ名前の他社、地元の工務店がそれぞれ何件あるかを数えます。二つで顔ぶれが大きく入れ替わるなら、御社の地名にも取り違えがあるかもしれません。
- 「地名 実家 建て替え」で検索し、1ページ目が何で埋まっているかを見ます。名字の話か、市の施設か、解体か。工務店のページが何件あるかを数えます。
- 「地名 平屋 建てたい」と「地名 土地なし 注文住宅」で検索し、物件の一覧が何件で、建てる側の問いに答えたページが何件あるかを数えます。
- 御社のサイトをスマートフォンで開き、価格の見当がつくところまで何回で届くかを数えます。施工事例を三つ開いて、建てた市町村、平屋か二階建てか、土地から探したか建て替えかが書いてあるかを見ます。
- この三か月の来場予約のうち、ホームページを見て来た人が何人いたかを、来場のときの記録から数えます。記録がなければ、次の見学会から「何を見て来られましたか」と一行だけ聞きます。数え方は問い合わせの数え方にまとめています。
三つの検索のどれもが、地元のどこかの会社がすでに答えたページで埋まっていて、御社がそこに足せる事例もないなら、ホームページより見学会と紹介の流れを整えるほうに時間を使う場面です。一つでも答えのない問いが見つかり、その問いに御社が実際に建ててきた家で答えられるなら、最初に作るのはそのページです。
この記事にたどり着いた道筋
この記事は、「工務店 集客」のような、業種と悩みを掛け合わせた言葉で読まれることを想定して書いています。その言葉で検索すると、上位には業種の名前を入れ替えただけの一般論が並びやすいものです。そこに、三つの市で実際に数えた中身のあるページを置きました。
御社のお客様になる家族も、同じように探しています。「宇都宮 実家 建て替え」「倉敷 平屋 建てたい」のように、地域と用件と迷いを掛け合わせた言葉です。当社が御社の商圏でするのは、それと同じことです。誰が上位にいて、どこが空いていて、御社が実際に知っていることで答えられる場所はどこかを数え、そこにページを置く。見込みが立たなければ、調べた結果とともにそうお伝えします。調べ方の中身は商圏調査に書いています。