2026年9月24日、長野県松本市の工務店を題材にした商圏調査の見本を作るために、「松本 工務店」と検索しました。1ページ目の九件のうち七件は、東京、京都、青森、横浜、兵庫、岡山、島根の会社でした。どれも社名が「松本工務店」です。松本市の工務店は一件、残る一件は住宅のポータルでした。
松本市で家を建てたい人が打ちそうな、いちばん素直な言葉です。その1ページ目が、松本市とは関係のない土地の、同じ名前の会社で埋まっていました。この記事では、この一行から分かることを書きます。
1ページ目は、その言葉が何を探す言葉なのかの見立てです
検索結果の1ページ目は、その言葉を打った人が何を探しているのかについて、検索エンジンが立てた見立てを並べたものです。「松本 工務店」では、その見立てが「松本という名前の工務店を探している人」の側に寄っていました。松本は地名であると同時によくある名字で、工務店は業種の名前であると同時に社名の一部でもあります。二つが並ぶと、社名として読まれます。
同じ見本で、市の字を付けた「松本市 注文住宅」「松本市 注文住宅 費用 相場」の二つには、同じ名前の他社は一件も出てきませんでした。打つ側にとって「松本」と「松本市」は同じ土地のことですが、検索結果の顔ぶれはこの一字で入れ替わります。
言葉を選ぶときに検索回数を見ることは、当社も実際の調査でしています。ただ、回数を見る前に1ページ目を見ます。「松本 工務店」が月に何回検索されていても、1ページ目が同じ名前の会社で埋まっているなら、その回数には、松本工務店という会社を探している人が混じっていると考えるほうが自然です。回数が多い言葉だから御社の客が多い、とは言えません。
ページの題に地名と業種を入れ、本文にもそう書いたのに、その言葉で上に出てこない。そういうときは、書き方を直す前に、言葉そのものが別の用件に取られていないかを見てください。
取り違えは、生活の言葉にも、用件の言葉にも起きます
見本の記録から、形の違う例をあと三つ挙げます。
「松本 実家 建て替え」は、十件のうち七件が、松本という名字の芸能人の実家の話でした。地図が二件、残る一件は実家を解体して売るべきかを扱う個人の記事で、工務店のページは一件もありません。名字に引っ張られるのは業種の名前と並んだときだけではなく、「実家」のような暮らしの言葉と並んだときにも起きていました。同じ見本の「松本 高断熱 住宅 工務店」でも、九件のうち三件は他県の同じ社名の会社です。
地名ではなく、用件の言葉のほうが別のものに取られることもあります。静岡県浜松市の相続の見本では、「浜松 実家 名義変更」の1ページ目の三分の一ほどが、自動車の名義変更のページでした。この例からアクセスについて言えることはアクセスが増えない原因と確かめ方に書いたので、ここでは、手続きの正式な名前を使わずに打った言葉が、同じ言葉を使う別の手続きのほうへ流れていた、という点だけ押さえておきます。
もう一つは、群馬県高崎市の学習塾の見本で見た「箕郷 塾」です。箕郷は、平成18年に高崎市と合併した旧町の名前です。1ページ目の九件のうち七件は、塾探しと関係のないページでした。中身は、別の市の塾ランキング、比較サイトに載った音楽教室、地元の小中学校の口コミや学校情報のページです。塾のページは、全国チェーンの教室が一件、地元の個人塾が一件だけでした。
それぞれの言葉の全体の結果は、松本市×工務店の見本と高崎市×学習塾の見本に載せています。
取られている言葉と、空いている言葉を分けて見る
四つを並べると、「用件の違うページが並ぶ」という同じ見た目の中に、二つの形が混じっています。
松本の二つと浜松の一つでは、用件の違うページが一つの別の意味にまとまっていました。同じ名前の会社、同じ名字の芸能人、車の手続き。その言葉には、御社の用件とは別のはっきりした探しものがあって、そちら側のページが厚く積み上がっているということです。ここに正面からページを置いても、並ぶ相手は同業ではなく、別の意味そのものになります。
箕郷は違いました。並んでいたのは、別の市の塾、音楽教室、学校の口コミと、ばらばらのものです。一つの別の意味に取られているのではなく、「箕郷」と「塾」の両方に答えるページが少ないために、片方だけに当たるページで隙間が埋まっている、と当社は見ています。見本でも、ここは入る余地の一つに挙げました。
見分けるには、用件の違うページの中身を見ます。一つの別の意味にまとまっていれば、取られている言葉。ばらばらなら、空いているかもしれない言葉です。
空いているかもしれない、にとどまるのには理由があります。検索結果の画面だけでは、答える人がいないから空いているのか、その言葉で探す人がほとんどいないから空いているのかを見分けられません。何回検索されているかは有料の道具を使わないと分からず、見本では扱っていません。加えて、見本で使った検索の道具は各言葉につき九件か十件しか返さず、地図枠と広告が出ていたかも見えていません。松本の名字の現象は、松本市内のスマートフォンから検索すれば、地域の設定によって弱まる可能性もあります。見本にあるのは、ある日の、ある見え方の記録です。
一語ずらすと顔ぶれが入れ替わる。入れ替わった先も数える
取られている言葉は、捨てる前に一語ずらしてみる価値があります。「松本」を「松本市」にすると、同じ名前の他社は消えました。「松本 平屋 建てたい」のように建てたい家の形を足した言葉では、十件すべてが住宅のポータルで、同じ名前の会社も芸能人も出てきていません。松本の見本で実家の建て替えを余地に挙げたとき、ページを作るならタイトルに「松本市」と市の字まで入れることを前提にしたのは、このためです。
ただし、「実家」を足した言葉が芸能人に取られていたように、足した一語が別の意味を呼び込むこともあります。どの一語が効くかは、打って見るまで分かりません。
もう一つ、入れ替わった先が空いているとはかぎりません。「松本市 注文住宅」では同じ名前の他社は消えましたが、九件のうち七件は全国のポータルとフランチャイズで、地元の工務店は二件でした。「松本 平屋 建てたい」の十件も、八件は中古住宅や建売の物件一覧です。取り違えが消えたあとに見えてくるのは、次の相手です。そこから先の数え方は検索結果の1ページ目を数えるに書きました。
御社が受け取っている報告に、地名と業種を並べただけの言葉の順位が載っているなら、その言葉の1ページ目も一度自分で見てください。並んでいるのが別の土地の同じ名前の会社なら、その順位は、同業との比べ合いの結果ではありません。
書く前に、二回検索して、用件の違うページを数える
道具は要りません。見本で当社がやった順番のまま書きます。
- 御社の地名と業種を、ふだん口にする形で並べて検索します。「松本 工務店」のような形です。
- 地名に「市」を付けて、もう一度検索します。町や区の単位で商売をしているなら、その名前でも同じようにします。
- それぞれの1ページ目を、題とアドレスだけ見て、御社と同じ用件のページとそうでないページに分けて数えます。
- 同じ用件でないページには、何に取られているかを一言ずつ書き添えます。同じ名前の会社、人の名前、別の手続きや商品、ばらばら、のどれかです。
二回の結果を並べると、次の手が決まります。一回目にだけ用件の違うページが多いなら、ページの題と最初の段落は、市の字を付けた形で書きます。二回とも多く、しかも一つの意味にまとまっているなら、建てたい家の形や困りごとを一語足すか、地区の名前に替えて、もう一度同じように数えます。ばらばらなら、空いているかもしれない言葉として、検索回数を確かめる候補に残します。二回とも同じ用件のページで埋まっているなら、取り違えは起きていません。次に見るのは、その1ページ目に誰が並んでいるかです。
1ページ目に並んでいるのが一つの別の意味の探しものなら、その言葉で書き続けるより先に、一語ずらした言葉の1ページ目を数えてください。