ホームページの保守費を払っても問い合わせが増えないのは、保守と運営が別の仕事だから

請求書の名目は毎月同じ「サイト保守」で、金額も同じです。サーバーは止まっていないし、フォームも届いている。それでも問い合わせは、作ったころから増えていない。払い続けてよいのか分からないまま、何年か経っている。

この状態は、制作会社の手抜きでも、契約違反でもありません。保守という仕事は、きちんと果たされています。増えないのは、問い合わせを増やすための仕事、当社が「運営」と呼んでいる仕事を、最初から誰も頼んでおらず、誰も引き受けていないからです。

保守費で買っているのは、「去年と同じように動くこと」です

保守に入っているのは、サーバーとドメインの維持、サイトを動かす仕組みの更新、止まったときの復旧、データの控え、といった作業であることが多いです。どれも、うまくいっているあいだは外から見えません。何も起きないことが成果なので、「今月は何をしてもらったのか」が分からないのは、保守が効いている証拠でもあります。

保守の物差しは「去年と同じように動いているか」です。去年より問い合わせが増えたかどうかは、そこに入っていません。文章の差し替え、ページの追加、検索で見つけてもらうための手当て、問い合わせまでの導線の見直しは、保守の外に置かれているか、「月一回まで」「三十分まで」といった上限つきで入っていることがほとんどです。「保守」という言葉には業界で決まった定義がないので、御社の場合にどうなっているかは、契約の文面と、次に書く一覧が答えになります。

一年分の依頼を並べると、契約の本当の範囲が見えます

契約書に「サイト保守一式」としか書かれていなければ、範囲は文面からは決まりません。そのときは、実際にしてきたやりとりのほうが正確です。手元のメールか手帳を開いて、次の三つを書き出してみてください。

  • この一年に制作会社へ頼んだことを、日付順に並べる(「料金表の数字を直す」「お知らせを一本足す」など)
  • それぞれに、追加の見積もりが来たか、来なかったかを書く
  • 頼んでから済むまでに、何日かかったかを書く

追加の費用がかからなかったものが、事実上の保守の範囲です。見積もりが来たもの、返事が遅れたものは、範囲の外として扱われていたものです。

「頼んでも更新してくれない」「返事が遅い」という悩みも、この一覧で説明がつくことがあります。御社は、毎月払っているのだから文章の修正くらいは入っていると考えている。制作会社は、それを別に見積もる作業として扱っている。作る仕事が本業の会社にとって、範囲の外の小さな修正は、手が空いたときの作業になります。どちらかが悪いのではなく、範囲の認識がずれたまま何年も過ぎている、ということです。

もう一つ、一覧の中で見てほしいところがあります。それぞれの依頼について、「何を載せるか」を最初に言い出したのは誰だったか。料金表を直すのも、お知らせを足すのも、決めたのは御社で、制作会社は手を動かしただけのはずです。制作会社の側から「このページをこう変えましょう」と言い出した項目が一つもなければ、それが次の話です。

何を載せるかを決める仕事は、誰にも頼まれていません

ホームページの制作の契約は、納品で終わるのが普通です。作って、公開して、検収して、そこで一区切り。そのあとに残るのは壊れないように保つ仕事で、それが保守の契約になります。

ところが、問い合わせが来るかどうかが決まるのは、納品のあとの時間です。どんな人が来ていて、どこで離れているかを見る。載せる内容を書き直す、足す、順番を変える。広告にかけている言葉を絞る。これを毎月続けるのが運営です。この仕事は、制作の契約にも保守の契約にも入っていません。制作会社は頼まれていないし、御社の側は、誰かが見てくれているものだと思っている。そうして運営は、誰の仕事でもないまま空いています。

ですから、保守の範囲を広げて、修正の回数を月一回から月四回に増やしても、何を直すかを決める人がいなければ、問い合わせの数は動きにくいままです。足りないのは作業の量ではなく、判断のほうです。

契約が納品で終わる形では、成果が出るかどうかのリスクを、払った側が一人で持つことになります。保守は、その形のまま毎月続いている契約です。これは制作会社の誠実さの問題ではなく、契約の作りの問題です。

取れる道は三つで、足りないものの種類で決まります

一年分の一覧を見て、足りないのが作業の回数と速さなら、今の会社と保守の範囲を決め直すのがいちばん負担の少ない道です。「文章の修正を月に何回まで含める」「依頼から何営業日で返す」を書面にします。費用は上がるかもしれませんし、相手に余力がなければ断られることもあります。

社内に文章を書ける人がいるなら、お知らせや事例の部分だけ、自社で更新できる形にしてもらう道もあります。管理画面のアカウントを発行してもらい、触ってよい範囲を決め、簡単な手順書をつけてもらう。ここまでを一度の作業として頼めば、その後の小さな更新は社内で回ります。ただし、何を載せるかを決める人がいないという問題は、これでは解けません。兼任の担当者に任せると何が止まるかは運用を丸投げして失敗する理由に書いています。

足りないのが「何を載せるか」を決める人なら、運営ごと外に任せることになります。このとき見るべきなのは、作る技術よりも、毎月何を数え、何を判断し、何を報告してくれるかです。頼む前に契約で決めておくことは運用代行を頼む前に契約で決めておくことにまとめました。

どの道を選んでも、問い合わせが来ない理由がホームページの外にあることはあります。その仕事を探している人が商圏にそもそも少ない、あるいは上位の顔ぶれが強すぎて入る余地がない。そうであれば、保守を見直しても運営を任せても、数字は動きません。道を選ぶ前に、今来ている問い合わせを数えておくと、どこを直すかを誤りにくくなります。数え方は問い合わせの数え方に書いています。

移るときに、手元に残しておくもの

運営を別のところに任せるなら、移る前に御社の手元に残しておくものが三つあります。

一つめは、ドメインです。アドレスが制作会社の名義のままだと、移すときに相手の協力が要ります。同じアドレスを使えなくなると、名刺もメールアドレスも作り直しになり、検索で積み上げてきたものも一度ゼロに近づきます。名義の確かめ方と整え方はドメインの名義が制作会社のままになっていないかに書きました。

二つめは、今あるページのアドレスの一覧です。作り直すとページのアドレスが変わることがあり、そのままでは検索から来ていた人がたどり着けなくなります。移る前に一覧を控え、新しいサイトで同じアドレスを使うか、古いアドレスから新しいアドレスへ転送する設定を入れてもらいます。

三つめは、計測のアカウントです。アクセス解析やSearch Consoleが制作会社のアカウントの中で作られていると、契約が切れたときに過去のデータごと見られなくなることがあります。御社のアカウントを作り、そこに管理者として入れてもらっておきます。

どれも、関係が普通のうちに「社内の管理の都合で整理したい」と頼むのがいちばん通りやすい依頼です。揉めてからだと、同じ依頼がずっと重くなります。

当社が保守だけを受けない理由と、運営を引き受けるときに約束すること

当社は、保守だけのお仕事はお受けしていません。保守が要らないと考えているからではありません。サーバーを止めず、仕組みを新しく保つことは運営の土台で、運営を引き受けるときは、その作業も含めて行います。

受けない理由は、保守だけの契約が、この記事で書いてきた形そのものだからです。問い合わせが来ても来なくても、毎月同じ額が支払われ、成果が出るかのリスクは払う側に残ったままになる。当社は報酬の中心を成果が出たあとに置き、その形でしか引き受けないと決めています。保守だけを受ければ、その決めごとの外で仕事をすることになります。また、同時にお預かりするのは五つの事業までと決めていて、その枠は、毎月の判断を続ける仕事のために空けています。

運営を引き受けるときに約束するのは、次のことです。引き受ける前に御社の商圏を調べ、見込みが立たなければ引き受けません。同じ商圏で同業は一社だけで、御社の競合を同時に手伝うことはありません。何を成果と数えるか、毎月どう報告するか、終えるときにデータと権限をどう引き渡すかは、始める前に書面にします。ドメインとサーバーは御社の名義で契約していただきます。毎月、何をして何が変わったかをお伝えし、うまくいかなかった判断もそのまま報告します。十二か月たっても見込みが見えなければ、当社から終わりを申し出ます。費用の内訳は料金に載せています。

一年分の依頼の一覧を並べて、足りないのが作業の回数なら、今の会社と範囲を決め直してください。足りないのが「何を載せるか」を決める人なら、それは保守の契約をどう見直しても買えません。