士業のブログに意味がないのではない。意味がなくなる記事の書き方

「ブログは意味がない」と言うとき、手元にあるのはたいてい、何十本かの記事と、記事を読んで連絡してきた相談者が思い当たらないという事実です。そこから「ブログという手段に意味がない」と結論するのは、一段飛ばしています。

意味がないのは、ブログではありません。誰の問いにも答えていない記事と、答えたかどうかを数えていない事務所です。前者は書き方で、後者は記録で直せます。この記事では前者を、所長が自然に手を伸ばしやすい三つの型に分けて、実際の記事の形で見ていきます。

記事が受けるのは、「まだ調べている人」の問いです

先に、記事に何をさせるのかを決めておきます。

当社が運営に携わっている相続の事務所では、広告の言葉を面談につながるものだけに絞り、すぐには依頼にならない言葉は、お金を払って取りに行かず、検索に出るページの側で受けることにしました(その判断の経緯は士業の検索広告で、どの言葉にお金を使うかに書いています)。

この分け方に立つと、記事の役目ははっきりします。親が亡くなって何から手をつければよいか分からない人、実家の名義をどうするか決めかねている人。まだ事務所を選ぶ段階にない人が、自分の状態の言葉で打ち込んだ問いに、一本で答えることです。

以下の三つの型は、どれもこの役目を果たしていません。手を抜いた記事ではなく、真面目に書いた記事ほどこの形になりやすいのが厄介なところです。

所長の日記は、すでに御事務所を知っている人にしか届きません

たとえば、こういう記事です。

題:先日、遺言の研修に参加しました

中身:会場の様子、講師の話で印象に残ったこと、改めて身が引き締まったという感想

書いた内容に嘘はなく、人柄も伝わります。ただ、この題で検索する人はいません。遺言のことで困っている人は「研修」とは打たず、「自分で書いた遺言は、そのまま使えるのか」のように打ちます。

日記に役目があるとすれば、紹介で名前を聞いた人が、面談の前に人柄を確かめる場面です。それは検索から新しい人を連れてくる仕事とは別のものです。

書き直すときは、研修の中身から、相談者の行動が変わる一点だけを取り出します。講師の話の中に「自筆の遺言が、書き方の不備で使えなかった」という例があったなら、題は「自分で書いた遺言が、亡くなったあとに使えないことはあるのか」になります。研修に行ったことは、本文の終わりに一行あれば足ります。材料は同じで、入口が変わります。

法改正の要約は、要約で止まった時点で、国のページに負けます

題:相続登記の義務化について

中身:いつから始まったか、期限、守らなかった場合、以前に相続した分の扱い

正確で、役にも立つ記事です。ただ、同じ内容は法務省のページにあり、そちらが先で、そちらが正しい。要約を読み終えた人が次に知りたいのは、制度の全体ではなく「で、うちはどうすればいいのか」です。

その問いは、たとえばこういう形をしています。

  • 父が亡くなって何年も経つ実家が、父の名義のまま。兄弟で話がまとまっていない。今から何をすればよいのか
  • 遠くに住んでいて、実家のある地域の法務局に行けない。それでも手続きは進められるのか

一つめなら、遺産の分け方が決まる前でも取れる手続き(相続人申告登記)がある、というところまで書けば、要約の記事にはない答えになります。改正を扱うこと自体は良い題材です。止まる位置が一つ手前なのです。

目安は単純で、記事の中に「この改正で、◯◯の状態にある人は、まず◯◯をする」という一文が書けるかどうかです。書けないなら、その記事は要約で止まっています。

同業向けの記事は、よく書けているほど相談者から離れます

題:遺産分割協議書の作成における実務上の留意点

中身:条文、登記の先例、判断が分かれる場面の整理

いちばん手間がかかり、いちばん書き手の力が出る記事です。同業の方から「読みました」と言われることもあるかもしれません。けれど、読んだのは同業者で、相談者ではありません。相談者は「協議書」という言葉をまだ知らず、「兄弟で分け方を決めたら、紙に残す必要はあるのか」と探します。

この型は、記事を開いても気づきにくいのが難点です。Search Console を入れておられるなら、その記事がどんな言葉で検索結果に表示されているかを見てください。条文の番号や正式な手続き名ばかりが並んでいれば、記事は同業者のほうを向いています。

消す必要はありません。採用や、同業からの紹介の場面では働きます。ただ、相談を集める記事の数には入れないでください。数に入れると、「こんなに書いたのに来ない」の「こんなに」が実態より大きくなります。

御事務所の記事を一本ずつ、「誰の問いか」で読み直す

三つの型に当てはまるかどうかは、今日確かめられます。道具は紙一枚です。

  1. 最近の記事を十本ほど開き、一本ずつ「どういう状態の人が、何を知りたくて読む記事か」を一行で書きます。書けない記事は、ほぼ三つの型のどれかです。
  2. 一行が書けた記事は、その人が使いそうな言葉で検索します。正式な手続き名は使わず、「親が亡くなった 実家 名義 そのまま」のような言い方で試してください。
  3. 出てこないときは、記事の題を一字一句そのまま検索します。それでも出てこなければ、書き方より先に、検索に出る設定になっているかを疑います。そこから先の直し方は過去の記事を書き直すべきか、新しく書くべきかに任せます。

一行が書けない記事が多くても、材料は捨てずに済みます。上の三つの例のように、同じ材料の中から相談者の問いを一つ取り出して、題と冒頭から書き直せばよいのです。

答えたかどうかを数えていなければ、やめる判断もできません

もう一方の「数えていない事務所」についても、一段落だけ書きます。先の相続の事務所も、始める前は反響を電話の本数などで「なんとなく」数えていました。この状態では、記事を読んでから電話をかけてきた人がいても、電話一本として消えてしまいます。何をどこまで数えるかはホームページからの問い合わせの数え方と、直す前に見るべき数字に書きました。

そのうえで、やめるのが正しい場合もあります。

紹介と再依頼で、受けられる件数が埋まっている。 入口を増やしても、お断りする件数が増えるだけです。この場合、記事はやめてかまいません。

書けるのが所長だけで、その時間が実務を削っている。 書き直しは、次の週に数字が変わる作業ではありません。先の事務所でも、動き始めたと感じたのは半年ほど経ってからでした。半年、実務を削り続けられないなら、始めないほうが事務所のためです。

その地域で、その業務を探している人がもともと少ない。 何をどう書いても動きません。記事の質を磨き続けることが、いちばん消耗する進み方になります。

この三つに当てはまらず、しかも数えていないなら、やめるのはまだ早い。三つに当てはまるなら、数えていなくても、やめてよい理由はすでに手元にあります。

一年分の記事の題を並べてみて、面談で相談者が口にした言い方と同じ題が一本もないなら、やめる前に題の付け方を変えてください。一本でもあるなら、その記事はもう答えています。