仲介手数料と査定の根拠をホームページに:21社で書いていたのは1社と4社

2026年9月、広島県福山市、高知県高知市、長野県上田市で、家や土地の売却を扱う地元の不動産会社のサイトを21開きました。査定の依頼のフォームは、21社のうち16社にありました。そのうち4社は、入力が何秒で終わるかを掲げていました。

同じ21社で、売却の仲介手数料を書いていたのは1社です。査定の価格を何から決めるのか、どういう方法で出すのかに一文でも触れていたのは4社でした。2024年7月に始まった、800万円以下の空き家などの報酬の特例に触れていた会社はありません。

査定を頼む入口はよく作られているのに、頼む前に知りたいこと、つまり売ったらいくら払うのか、出てくる価格は何を根拠にしているのかは、ほとんどのサイトに書かれていませんでした。

21社は、三つの市で九つの言葉を検索し、1ページ目によく出てきた地元の会社です(上田は1ページ目の地元が五社だけでした)。各社のサイトは主にトップページと売却のページで確かめていて、下層のページやよくある質問を見落としている可能性は残ります。全体の記録は不動産会社のホームページ集客にまとめています。料金を載せるかどうかの一般的な考え方は料金を載せるべきかに書いたので、ここでは不動産の売却に固有の話だけを書きます。

「査定」の言葉の1ページ目には、一括査定のサイトが先にいた

三つの市の九つの言葉で、1ページ目は延べ247件でした。そのうち68件が、売りたい人が複数の会社にまとめて査定を頼む、一括査定や査定の比較のサイトです。「土地 査定」では、福山と上田で9件のうち8件がポータルで、地元の会社は1件ずつでした。高知でもポータルが5件です。売りたい人が「査定」の言葉で探したとき、先に出てくるのは一括査定のほうです。

一括査定のサイトから来る依頼は、同じ家に何社もの査定が並ぶ依頼です。そこでは、査定の額と返事の速さで比べられやすくなります。地元の会社のサイトで、入力の秒数を掲げた査定のフォームを置くのは、その比べ方の中で速さを示すことです。それ自体は悪くありません。ただ、手軽さで比べる土俵に立つかぎり、全国の一括査定のサイトと同じ場所で競うことになります。

一括査定のサイトに書けないことがあります。御社の手数料の考え方と、御社が査定の価格を何から決めているのかです。当社は、地元の会社がサイトで一括査定と違う入口を作るなら、フォームを速くするより、フォームの手前にこの二つを書くほうが筋がよいと考えています。

手数料を書いていたのは1社、特例に触れていたのは0社

21社のうち手数料を書いていた1社は、通常の仲介の手数料を率の式で示し、買取なら仲介の手数料はかからない、と並べて書いていました。買取を扱う会社は21社のうち14社ありますが、買取と仲介を比べる説明を置いていたのは2社です。売る人にとって、仲介と買取の違いは、手数料がかかるかどうかも含めて、最初に知りたいことの一つのはずです。

手数料を書かない理由として考えられるのは、額を出すと値引きの材料にされる、上限いっぱいと書くと高く見える、といったことでしょう。ただ、仲介の報酬の上限は国土交通大臣が定めていて、宅地建物取引業法は、事務所ごとに見やすい場所に報酬の額を掲示することを求めています(第46条)。店頭ではすでに見えている情報です。サイトに書かないことで伏せられるものではありません。

800万円以下の空き家などの特例は、なおさら先に書く意味があります。物件の価格が800万円以下の宅地や建物の売買の仲介では、仲介にかかる費用を勘案して、原則の上限を超えて報酬を受けられるようになりました。上限は30万円の1.1倍です。そのかわり、仲介の契約を結ぶときに、あらかじめ報酬の額を依頼者に説明し、合意しておく必要があります(高知県「空き家等に係る媒介報酬規制の見直しについて」)。空き家の売却を受ける会社なら、この特例を使うのか、使うならどういう家にいくらになるのかをサイトに書いておくことは、契約のときに求められる説明を、前もってしておくことにもなります。

書くときの注意も一つあります。業界の規約は、「格安」「業界一」「当社だけ」といった言葉を、裏付けとなる合理的な根拠の資料がなければ使えないとしています(不動産の表示に関する公正競争規約 第18条)。手数料の話は、安さを言うより、何に対していくらか、特例を使うのはどういう場合かを書くほうが、決まりの上でも読む人にとっても扱いやすいはずです。上限の率の数字は、告示の原文か国土交通省のページで確かめてから書いてください。

査定の根拠に触れていたのは4社、机上と訪問の区別は1社

査定の説明のある4社の中身は、福山の2社が「周辺の事例をもとに」という一行、高知の1社が訪問の査定で現地や役所を調べることへの言及、上田の1社が机上の査定と訪問の査定の区別とかかる日数の目安でした。価格を何から決めるのかを、自社の言葉で段を追って書いた会社はありません。

材料がないわけではありません。成約や取引の事例を載せていた会社は21社のうち14社で、そのうち10社は町名まで書いています。自社で売った家の町と条件は、査定の価格を説明する材料そのものです。ただ、確かめた範囲では、査定の説明の中で自社の成約の事例を指し示していた会社はありませんでした。事例は事例、査定は査定で、別の場所に置かれています。

町の単位でも、先に動いていたのは一括査定の側でした。「上田市 土地 査定」の1ページ目には、一括査定のサイトが町名の単位で作ったページが入っていました。地元の21社で、売る人に向けて町名や学区ごとに何が売れてきたかをまとめたページを持つ会社はゼロです。高知では、1ページ目に出た地元の会社の「エリア別の土地相場」のページが一件だけありましたが、21社の外で、中身は開けていません。

反対の考え方もあります。査定の根拠を細かく書けば、それより高い額を出す他社に負ける、というものです。一括査定で額を並べられる場では、その通りかもしれません。ただ、根拠を読んでから査定を頼んできた人は、高い額だけを探している人とは限りません。どちらの依頼が媒介の契約まで進むかは、分けて数えるまで分かりません。

御社のサイトで、査定のボタンの手前を読む

道具は要りません。当社が21社で見た順番のまま書きます。

  1. スマートフォンで御社のトップページを開き、査定のボタンまでと、手数料が書いてあるところまで、それぞれ何回で届くかを数えます。
  2. 査定のページを開き、査定の価格を何から決めるのかが一文でもあるか、机上と訪問の違いとかかる日数が書いてあるかを見ます。
  3. 成約の事例のページと査定のページのあいだに、行き来できるリンクがあるかを見ます。
  4. 空き家や買取を扱っているなら、800万円以下の家の報酬をどうしているか、買取と仲介で何が違うかが、どこかに書いてあるかを見ます。
  5. この三か月の査定の依頼を、一括査定のサイトから来たものと御社のサイトから来たものに分け、それぞれ何件が媒介の契約に進んだかを並べます。分けていなければ、次の依頼から「何を見てご連絡いただいたか」を一行だけ残します(記録の形は問い合わせの数え方に書きました)。

一括査定から来た依頼と御社のサイトから来た依頼で、媒介の契約に進む割合がほとんど変わらないなら、手数料と査定の説明に手をかける理由は薄く、サイトから来た依頼のほうが進んでいるなら、書き足すべきはフォームの速さではなく、その手前の二つです。