小さな会社の集客方法:お金をかける前にできることと、かけるならどこから

「集客 方法 小さな会社」「中小企業 集客 方法」で検索すると、1ページ目には、紹介、口コミ、ホームページ、SNS、Googleマップ、チラシ、広告、ポータルサイトと、手段を十から二十五ほど並べた一覧の記事が多く出てきます。どれも間違いではありません。ただ、人手も予算も限られた小さな会社で迷うのは、手段の名前よりも、どれから始めるか、お金をかけるならどこからか、始めたものをいつやめるか、のほうではないでしょうか。

この記事は、手段の一覧ではなく、手をつける順番と、始める・やめるの判断の基準を書きます。地方で店や会社、士業の事務所を営む方に向けた記事です。公的機関の資料と当社の調査記録から分かる事実と、当社の見立ては分けて書きます。

結論:数えてから、お金のかからない経路、そのあとでお金をかける経路

  • 最初にするのは、新しい手を打つことではなく、今のお客がどこから来たかを手元の記録で数えることです。費用はかかりません。
  • 次に、お金のかからない経路のうち、数えた結果で太かったものを広げます。紹介の頼み方、Googleビジネスプロフィール、既存のお客への連絡、地域の団体の四つです。
  • お金をかけるなら、最初の候補は、どの経路から来た人も確かめに来るホームページの手入れです。広告、チラシ、ポータルサイトは、始める前に「何件来れば続けるか」を決め、三か月単位で数えて判断します。
  • 小さな会社の制約は、予算だけでなく人手でもあります。お金のかからない経路は時間を使うので、続けられる数に絞ります。

この順番は当社の見立てです。以下、それぞれの理由と、見る数字を書きます。

前提:商圏は市区町村の中、足りないのは人手

中小企業庁の「2024年版 小規模企業白書」は、小規模事業者の主な商圏範囲について「約6割の小規模事業者が、主な商圏範囲として『同一市区町村』と回答している」としています。一般消費者向け(BtoC)の事業者では約7割です(第2部第1章第1節、第2-1-8図)。

同じ節は、全国の中小企業経営者を対象にした「大同生命サーベイ(2023年4月度調査)」をもとに、新規顧客・販路を開拓するうえでの課題として「開拓に必要な人材の不足」と答えた割合が4割を超え、最も高いことを紹介しています(第2-1-18図)。また、2019年と比べて2023年の顧客数が増える見通しの事業者は、変わらない・減る見通しの事業者より、販路開拓の取組の大半で実施している割合が高く、とくに「自社ホームページ・SNS等を活用した情報発信」などで差が大きいとしています(第2-1-12図)。出典:中小企業庁「2024年版 小規模企業白書」第2部第1章第1節。

当社はここから二つのことを読みます。一つは、商圏が市区町村の中に収まるなら見込みのお客の数には限りがあり、一度来たお客がまた来るか、誰かを連れてくるかの比重が大きくなりやすいこと。もう一つは、小さな会社にとっての「お金をかけない集客」は、お金の代わりに人の時間を使う集客だということです。なお、第2-1-12図は取組と顧客数の見通しが一緒に動いていることを示す集計で、取組をすれば顧客が増えるという因果までを示したものではない、と当社は読んでいます。

限られた時間をどこに使うかを決めるには、材料が要ります。それが次の「数える」です。

1. 既存のお客の記録から「どこから来たか」を数える

新しい道具は要りません。売上の台帳、請求書の控え、顧客名簿、予約の記録、問い合わせのメールで足ります。過去一年のお客(法人なら取引先)を並べ、それぞれの最初のきっかけを次のどれかに振り分けます。

きっかけ例分からないときの手がかり
紹介既存のお客、取引先、同業、知人から初回の打ち合わせのメモ、紹介者へのお礼の記録
既存のお客の再来・追加前に頼んだ人がまた頼んだ顧客名簿の取引日
地図・検索Googleマップ、検索結果、ホームページフォームの記録、「ホームページを見て」の一言
広告・チラシ検索広告、SNSの広告、折込、ポスティング広告の管理画面、チラシ専用の番号や特典
ポータル・予約サイト比較サイト、予約サイト、紹介会社ポータルの管理画面、手数料の請求
看板・通りがかり店の前、車両、現場の幕来店時の会話
地域の団体・行事商工会、業界団体、地域の行事名刺交換の記録
不明上のどれか分からない―

件数だけでなく、売上の合計も横に書きます。件数は多いのに売上が小さい経路と、件数は少ないのに大きな仕事が来る経路は、扱いが違うからです。分からないものは無理に振り分けず「不明」のまま残します。当社の目安では、「不明」が三割を超えるなら、次の手は集客ではありません。受付で「何をご覧になってご連絡いただきましたか」と聞き、書き残すところからです。問い合わせを受けた時点で何の列に書くかは、問い合わせの記録シート(Excel)。管理表に「面談に進んだか」の列はあるかに書いています。

数えた結果の読み方

  • 紹介と再来で半分を超える:お金をかける前に、紹介の頼み方と既存のお客への連絡を整えます。その人たちが会う前に開くホームページの手入れが、最初にお金をかける候補です。
  • 地図・検索が目立つ:Googleビジネスプロフィールと、来た人が確かめるページを整えます。
  • 広告・ポータルが大半:止めれば止まる状態です。いきなり止めず、ほかの入口を育ててから絞ります。
  • 不明が多い:上に書いたとおり、聞いて書くところからです。

この読み方は当社の見立てで、業種と町によって変わります。

2. お金のかからない経路:紹介、Googleビジネスプロフィール、既存のお客、地域の団体

この四つは費用がほとんどかかりませんが、時間はかかります。全部を同時に始めるより、数えた結果で太かった経路から一つか二つに絞ります。

紹介:頼む相手、頼む時、渡すものを決める

紹介は待つものと思われがちですが、頼み方は決められます。当社の見立てでは、決めるのは次の三つです。

  • 頼む相手:仕事に満足してくれたお客、取引先、仕事が重ならない隣の業種(工務店と不動産会社、税理士と司法書士など)。
  • 頼む時:納品や引き渡しの直後、お礼を言われたとき。仕事の記憶が新しいうちのほうが、相手も紹介する場面を思い浮かべやすいと当社は考えています。
  • 渡すもの:「どんな人を紹介してほしいか」を一文で。たとえば「〇〇市で、親の家の片付けと売却を一緒に考えている方」。名刺と、その内容が書いてあるページのアドレスも添えます。

紹介してくれた人には、紹介された人と会ったこと、仕事になったかどうかを、差し支えない範囲で伝えます。謝礼には業種ごとの決まりがあることもあります。たとえば弁護士は、日本弁護士連合会の弁護士職務基本規程第13条で、依頼者の紹介を受けたことに対する謝礼その他の対価を支払うことが禁じられています。士業の方は、所属する会の規程を確かめてから頼み方を決めてください。

紹介で名前を聞いた人は、会う前に社名で検索してホームページを開くことが多い、と当社は見ています。そこで料金や頼み方が分からずに止まる場面については、ホームページ集客の方法:検索・地図・広告・SNS・紹介でサイトが担う役割に書きました。

Googleビジネスプロフィール:無料で、地図と検索に載る

Googleビジネスプロフィールは、Googleマップと検索結果に事業者の名前、住所、営業時間、口コミなどを載せる登録です。Googleは「ビジネス プロフィールを作成し、Google にビジネス情報を掲載するのに料金はかかりません」としています(出典:Google「Google ビジネス プロフィール」よくある質問)。

優先する目安は、お客が「市の名前と業種」で探して来る商売かどうかです。来店して使う店や、地域で頼む先を探される工務店、士業の事務所では、ここが入口の一つになります。見る数字は、プロフィールの「パフォーマンス」にある通話とウェブサイトのクリックです。名前やカテゴリー、写真、口コミへの返信など自社でできることと、口コミの頼み方の決まりは、Googleマップ集客とビジネスプロフィール運用:自社でできることと口コミの決まりにまとめています。

既存のお客への連絡:次に要る時期を記録しておく

一度頼んでくれたお客への連絡は、新しいお客を探すより、手間と反応が読みやすい経路です。ただ、時期を考えずに案内を送っても読まれにくい、と当社は考えています。効くのは「次に要る時期」が分かっているときです。点検や交換の時期、更新や届出の期限、季節の講習、決算の前。前回の取引日と次に要る時期が顧客名簿にあれば、その少し前に一通送れます。なければ、今日から一列足します。

メールで案内を送るときは、特定電子メール法(特定電子メールの送信の適正化等に関する法律)の決まりがあります。総務省・消費者庁のパンフレットによれば、広告宣伝メールは原則として、あらかじめ同意した人にだけ送れます。例外として、取引関係にある人、名刺などの書面で自分のメールアドレスを知らせてきた人などがあります。送るときは、送信者の氏名または名称と、受信を拒否できる旨、その連絡を受けるメールアドレスまたはURLを表示します(出典:総務省・消費者庁「特定電子メールの送信の適正化等に関する法律のポイント」)。

地域の団体:会費と時間を、半年で来た件数と比べる

商工会や商工会議所、業界団体、地域の行事、異業種の交流会は、顔を合わせることで紹介が生まれる経路です。お金はかからないと言われがちですが、会費と、会合や行事に使う時間がかかります。当社は、入る前に「半年で何件の紹介か相談につながれば続けるか」を決め、名刺を交換した相手と、その後の紹介や相談を記録しておくことを勧めています。数えるときは、1の表の「地域の団体・行事」の行に入れます。

3. お金をかける経路は、始める前に「続ける件数」を決める

お金をかける経路でうまくいかないのは、始める理由はあるのに、やめる理由を決めていないときだと当社は見ています。手応えがないまま何か月も続けるか、一か月で見切ってしまうか。どちらも、始める前に基準がないことから起きます。

一件あたりにかけてよい費用を、先に出しておく

計算の例を挙げます。一件の仕事の粗利(売上から材料費や外注費を引いたもの)が5万円で、問い合わせ十件のうち三件が仕事になる会社なら、問い合わせ一件の値打ちはおよそ1万5千円です。この会社が月3万円の広告を出すなら、広告から来る問い合わせが月二件を下回る状態が続くと、広告費が粗利を上回っていることになります。数字は説明のための例です。御社の粗利と仕事になる割合は、1で数えた記録から出せます。同じお客が何度も頼む商売なら、その分を一件の値打ちに足して考えます。

比べる期間は三か月です。問い合わせが月に数件の会社では、一か月の増減は偶然の幅に収まってしまうからです。件数の数え方と、比べ方の順番はホームページから問い合わせを増やす方法:手をつける順番と見る数字に書いています。

経路ごとの、始める目安とやめる目安

経路始める目安見る数字絞る・やめる目安
ホームページの手入れ紹介や地図で来た人が、料金・対応地域・頼み方を確かめられない問い合わせの件数と、面談・見積もりに進んだ件数手入れから三か月たっても、問い合わせと面談の件数が動かない
検索広告急ぎで探される用件がある、または期間の決まった募集がある広告から来た問い合わせと、仕事になった件数広告から来た問い合わせ一件の費用が、一件の値打ちを三か月続けて上回る
チラシ・ポスティング配る地域が商圏と重なり、見た人の行き先(電話番号やページ)が決まっているチラシ専用の番号や特典、「チラシを見て」と言われた件数同じ地域に二、三回配って、記録の上で反響が出ない
ポータル・予約サイト自社の町で、その業種の検索1ページ目をポータルが多く占めているポータルから来た件数と、手数料・掲載料手数料を引くと粗利が残らない、またはポータルから来たお客が次から直接来ない

表の目安は当社の見立てです。業種と町によって、どの経路が先に来るかは変わります。

ホームページの手入れを、最初の候補にする理由

当社は2026年9月24日に、9業種・27の商圏で地元の事業者のサイトを同じ項目で確かめました。自社の注文住宅の価格を数字で示していた工務店は24社中3社、売却の仲介手数料を書いていた不動産会社は21社中1社、お客様の声を載せていた社会保険労務士事務所は19事務所中2でした(記録の詳細は前掲のホームページ集客の方法の記事)。

紹介で名前を聞いた人も、地図で見つけた人も、広告を押した人も、頼むかどうかを決める前に開くのはホームページです。ここに判断の材料がないまま広告やチラシで人を増やしても、増えた人が同じ場所で止まる、というのが当社の見立てです。料金の目安、対応する地域と用件、頼み方、連絡の方法。この四つが揃っているかを確かめてから、外に向けてお金を使う順番にしています。

検索広告:月の上限は自分で決められる

Google広告では、1日の平均予算を自分で設定します。Googleのヘルプによれば、ある日の費用が1日の平均予算の2倍になることはありますが、月末の時点で1日の平均予算の30.4倍を超える費用が発生することはありません(出典:Google 広告 ヘルプ「超過配信と 1 日の平均予算について」)。月の上限が読めるので、上の「一件あたりにかけてよい費用」と並べて試しやすい経路です。一方で、止めれば止まる入口でもあります。広告に頼っている状態から抜ける順番は、広告を止めると問い合わせが止まる。その状態から抜け出す順番に書いています。

ポータルとチラシ:町によって効き方が違う

ポータルサイトに載るかどうかは、業種の常識より、自社の町の検索1ページ目を見て決めるほうが外れにくい、と当社は考えています。当社の同じ記録では、宇都宮市の工務店の九つの言葉の1ページ目82件のうち47件を、住宅ポータルや比較サイトなどが占めていました。小さな宿の三つの土地では、延べ253件のうち123件が予約サイトです。一方、「地名 行政書士」の1ページ目に出た地元の事務所は、宇都宮で9件中8件、熊本で10件中2件と、同じ業種でも町によって大きく違いました。

チラシは、商圏が市区町村の中に収まる事業者が多いこと(前出の白書)を考えると、配る範囲を絞りやすい手段です。ただ、反響を数える仕組みがないまま配ると、効いたかどうかが分からず、続けるかやめるかを決められません。チラシだけに載せる受付の番号や、チラシを持ってきた人への特典など、チラシから来たと分かる印を付けてから配ります。InstagramなどのSNSで知ってもらう場合の、ホームページとの分担とプロフィールのリンクからの数え方は、インスタ集客を地域の店舗・中小企業で:SNSとホームページの役割分担と数え方に書きました。

当社が運営をお引き受けするときの順番

当社も、ホームページの運営をお引き受けする前に、御社の記録で問い合わせがどこから来ているかを伺い、有償の商圏調査で、その町で検索されている言葉と上位の顔ぶれを数えてから、どこに手を入れるかを決めています。月額は低く始め、問い合わせが増えるにつれて上がる形です。流れは進め方に書いています。

今日、自社で確かめられること

  1. 過去一年のお客を書き出し、最初のきっかけを、紹介、再来、地図・検索、広告・チラシ、ポータル、看板・通りがかり、地域の団体、不明に分けて、件数と売上を数える。
  2. 「不明」が多ければ、今日から受付で「何をご覧になってご連絡いただきましたか」と聞き、書き残す。
  3. 顧客名簿に「前回の取引日」と「次に要る時期」の列があるかを見る。なければ足す。
  4. 最近仕事をしたお客を一人思い浮かべ、「どんな人を紹介してほしいか」を一文に書いてみる。
  5. スマートフォンで自社の名前を検索し、Googleビジネスプロフィールが出るか、出るなら営業時間とウェブサイトのリンクが正しいかを確かめる。
  6. 今お金をかけている経路ごとに、一件の粗利と仕事になる割合から「一件あたりにかけてよい費用」を出し、直近三か月の実績と並べる。

一つ目だけでも、次に時間とお金をどこに使うかはかなり絞れます。