試しに一週間、広告の出稿を止めてみた。問い合わせがぴたりと止まった。あわてて再開したら、また戻った。
ここで、広告費をやめてそのぶんを検索対策に回そう、と考えたくなります。ただ、順番を一つ間違えると、問い合わせがしばらくゼロに近くなり、耐えきれずに広告を戻し、結局もとの場所に戻ることになります。この記事で扱うのは、その順番です。
止まるのは、仕組みとして当たり前です
広告は、お金を出している間だけ表示される仕組みです。水道の蛇口と同じで、閉めれば止まります。止まったこと自体は、失敗でも異常でもありません。
それに、広告を出した途端に問い合わせが来るということは、御社が売っているものと、その価格と、伝え方が、ある程度は噛み合っているということでもあります。
ですから、問題は「広告を止めると止まる」ことではありません。「広告以外の入口が、何年経っても一本も育っていない」ことのほうです。
止まるのは、来た人を受け止める先が育っていないからです
広告費を払って連れてきた人が、御社のサイトのどこに降りているかを思い出してみてください。たいていは、トップページか、広告用に作った一枚のページです。
その一枚は、広告を止めた瞬間に誰も来なくなります。検索から人が来るページというのは、性質が違います。誰かが困ったときに打ち込む具体的な言葉に、正面から答えているページです。費用はいくらかかるのか、何を準備すればいいのか、どういう場合は断られるのか。そういう、聞きにくいことが書いてあるページに、人は検索から着地します。
ここで一つ、見落とされがちなことがあります。広告で来た人が何を知りたがっていたかは、すでに御社の中に記録として残っているということです。ゼロから「何を書こうか」と考えるより、その記録をたどるほうが、はるかに速い。
今日、その場で確かめられること
道具を入れていなくてもできます。紙とスマホがあれば足ります。
広告の管理画面を見られる場合
- 表示回数やクリック数の多い言葉ではなく、実際に問い合わせまで進んだ言葉を、十ほど書き出します。
- その言葉を、一つずつ自分で検索してみます。広告の枠ではなく、その下の検索結果に、御社のページが出てくるかどうかを見ます。
- 出てこない言葉について、その言葉に正面から答えているページが御社のサイトにあるかを探します。トップページや会社概要しか当たらないなら、ない、ということです。
管理画面を代理店が持っていて、自分では開けないこともあります。その場合は「問い合わせにつながった検索語の一覧がほしい」と頼んでください。御社のお金で集まった記録です。遠慮する話ではありません。
管理画面を見られない場合
- 問い合わせのメールと電話の記録を、直近三か月ぶんさかのぼります。相手が最初に言った言葉、メールの一行目を、言い換えずにそのまま書き出します。
- その言葉を、スマホの検索窓に入れます。広告の枠は飛ばして、その下を見ます。
- 上位に出てきたページを開いて、何が書いてあるかを読みます。金額、手順、期間、断る条件。
- 最後に御社のサイトを、同じスマホで開きます。その言葉を知りたい人の気持ちで、上から読みます。最初の画面で「これは自分のことだ」と分かるかどうか。
サーチコンソールやアクセス解析を入れているなら、もう一つ見る場所があります。検索での表示回数がほとんどゼロのページが何本あるかです。広告用のページは、たいていここに並びます。並んでいること自体が悪いのではなく、それしかないことが問題だ、と見てください。
書き出した言葉と、御社のページが一本も結びつかないなら、広告を止めれば止まるのは当然です。検索する人から見て、御社のサイトはまだ存在していないのと同じ状態だからです。入口そのものが増えない理由は、アクセスが増えない原因と確かめ方に分けて書きました。
広告が向く商売と、検索の積み上げが向く商売
広告が向くのは、今まさに困っている人が多い商売です。水漏れ、鍵、急な故障、当日の対応。それから、期間が決まっているもの。季節商品、イベント、新規開校。こういう商売では、広告は合理的な道具です。止めれば止まりますが、それを分かったうえで使っているなら、何も間違っていません。
検索の積み上げが効くのは、相談するまでに時間がかかる商売です。相続、家の建て替え、治療、教室選び、設備の入れ替え。この人たちは、数週間から数か月かけて調べ、比べ、ようやく問い合わせてきます。そして調べている間じゅう、広告枠の外にあるページを読んでいます。
御社がどちらに近いかは、問い合わせてきた方に「いつごろから考えていましたか」と聞けば、だいたい分かります。「今日壊れた」なら前者、「半年前から気になっていた」なら後者です。後者なのに広告だけで集めているなら、いちばん長く調べている時期の人に、一度も会えていないことになります。
順番は、広告を先に止めないことです
やってはいけないのは、広告費を検索対策の費用に振り替えるつもりで、先に広告を止めることです。検索からの入口が育つには、早くて数か月、業種によっては一年近くかかります。その間、問い合わせは細ります。
現実的な順番は、こうなります。
- 広告はそのまま続けます。今の件数を落とさない。
- 問い合わせにつながっている言葉を十ほど決めて、その言葉に答えるページを、月に一本か二本ずつ増やします。
- 問い合わせを、広告経由と検索経由に分けて数えます。数え方は問い合わせの数え方と、直す前に見るべき数字に書きました。
- 検索からの件数が積み上がってきたら、同じ言葉に出している広告から順に、少しずつ絞ります。
- 絞ったぶんだけ全体の件数が落ちるなら、戻します。
当社が運営に携わっている相続の事務所のサイトでは、この数年で年間の反響が増え、広告費は15%ほど減りました。当社の施策だけで説明できる数字ではありません。事務所側の体制も市況も動いています。ただ、絞るという判断ができたのは、検索から来る相談を分けて数えられるようになってからでした。どの言葉を残してどの言葉を絞ったかは、士業の検索広告で、どの言葉にお金を使うかに書いています。
分けて数えると、もう一つ見えることがあります。問い合わせは来ているのに面談や受注に進まない場合、原因は入口の数ではなく、降りたページの中身か、返事の速さにあることもある、ということです。そこは広告でも検索でも同じで、入口を増やすほど損が大きくなります。絞る前に、進まなかった問い合わせに何日で返事をしたかを見てください。
問い合わせの言葉を書き出すこと、その言葉に答えるページを自社の言葉で書くこと、返事を速くすること。この三つは外に出さなくてもできますし、自社のほうが上手くできます。外の手を借りる意味があるのは、どの言葉から手を付けるかの順番を決めるところです。自社だけで決めると、社内で使い慣れた言葉に寄って、お客さまが打ち込む言葉から離れていきます。
広告経由と検索経由を分けて三か月数えるまでは、広告の予算に手を触れないでください。