士業の事務所は集客のためにSNSをやるべきか、決める前に確かめること

職員の方から「うちもSNSをやったほうがいいのではないか」と提案があった。同業の事務所が始めているのを見かけた。

当社の答えを先に書きます。相続のように、何かが起きてから、急に、年齢の高い方が探す業務では、SNSから新規の相談は来にくい。その時間は、いまあるページの書き直しに回したほうがよい。運営に携わっている相続の事務所で、実際にそうなりました。

決める前に、御事務所の相談者が何を見て連絡してきたかを確かめる

最初に確かめていただきたいのは、SNSの話ではありません。いま御事務所に相談に来ている方が、最初の連絡をするまでに何を見たのか、です。

これは調べられます。新しい道具も費用も要りません。

  • これから面談される方に、冒頭で一言聞く。「今回はどちらで当事務所をお知りになりましたか」。それだけです。
  • 紹介で来られた方にも聞く。紹介を受けたあとに、御事務所の名前を検索したかどうか。見たページがあれば、どこを見たか。
  • 過去の記録を開いて、「どこから来たか」を書いた欄があるかを確かめる。なければ、今日から一列足す。

これを何か月か続けると、御事務所の相談がどこを通って来ているのかが見えてきます。検索して出てきたページを読んで電話した、という方が多いのか。紹介で名前を聞いてから調べた方が多いのか。広告を見た方が多いのか。

この答えが出ないうちにSNSを始めると、うまくいってもいかなくても理由が分かりません。数え方の具体的な手順はホームページからの問い合わせの数え方と、直す前に見るべき数字に別途まとめました。

聞いてみると、紹介で名前を知った方が、会う前にサイトを見て料金や引き受ける範囲が分からず、そこで止まっていた、ということが見えることもあります。その場合、足りないのは新しい入口ではなく、すでに向かってきている方が読むページのほうです。

運営に携わっている事務所で、始めてみて分かったこと

当社が運営に携わっている相続の事務所での話を書きます。

途中で、事務所の中から「SNSもやったほうがよいのではないか」という話が出て、始めることになりました。これは当社が提案したものではなく、事務所側の判断で始まったものです。そして、いまのところ、実際の相談にはなかなかつながっていないようです。

これは、担当された方の努力が足りなかったという話ではないと思っています。やってみて分かった構造のほうが大きい、というのが当社の見方です。

その構造を、順に書きます。

この事務所は相続が中心です。相続の相談をされる方の年齢層と、SNSを日常的に使う層は、重なりが薄くなります。まず、ここで一段狭くなります。

次に、SNSの上では、亡くなった後の手続きの話は広がりにくく、生前の話題が中心になります。これは投稿の仕方の問題というより、その場所で読まれるものの性質だと感じています。

すると、続けていくうちに、相続と直接は関係しない、老後のお金や資産の話題まで扱わないと伸びなくなります。ところが、その領域は競合がかなり強い。資本の面でも人手の面でも、個人事務所の規模では不利な戦いになります。

つまり、伸ばそうとすればするほど、御事務所が本来受けたい相談から離れた話題に寄っていき、そこには自分より手数の多い相手がいる、という形になります。努力の量で押し返せる種類の話ではありません。

合う業務と、合いにくい業務があります

いま書いた構造は、相続だから起きたことです。業務が違えば、重なり方も変わります。

ですので、「士業にSNSは向かない」とは申しません。そのかわり、御事務所の業務がどちら寄りかを考える物差しを、三つ挙げておきます。当てはめれば答えが出るというものではなく、考えるときの手がかりとしてお読みください。

一つめは、依頼者の年齢層です。御事務所の相談者の中心になる年齢の方が、日常的にその場所を見ておられるかどうか。ここが離れているほど、届きにくくなります。

二つめは、探すきっかけです。依頼者が御事務所を探すのは、「急に必要になったから」でしょうか。それとも「前から考えていたことを、そろそろ」でしょうか。急に必要になった方は、その場で調べて、出てきたところに連絡します。この動きは検索の側で受けるほうが合っています。一方、前から考えていた方には、以前から名前を見かけていたことが効く場合があります。

三つめは、業務が発生後のものか、事前のものかです。何かが起きてから動く業務ほど、探されるのは検索の側になります。起きる前に考えておく種類の業務なら、日頃目に入る場所に何かがあることに意味が出てきます。

三つとも「発生後・急な必要・高い年齢層」に寄っている業務であれば、SNSからの新規の相談は、期待するほどには来ないかもしれません。逆に寄っている業務なら、試してみる価値はあると思います。

そしてもう一つ、見落とされやすい点があります。その場所で伸びる話題と、御事務所が受けたい業務がずれていないか。ずれたまま伸ばそうとすると、先ほどの事務所と同じことが起きます。士業のサイト全体をどこから見直すかについては士業のホームページから問い合わせが来ない理由と、見直しの順番に書きました。

やるなら、紹介された方が確かめる場所として

新規の相談を取る以外の目的で置いておく、という考え方はあり得ます。紹介を受けた方は、会う前に御事務所の名前を調べます。そのときに、扱っている仕事や、どういう人がやっているのかが分かるものがあると、連絡しやすくなることがあります。これは新規を集める働きではなく、すでに向かってきている方の背中を押す働きです。

この目的なら、毎日書く必要も、伸びる話題に寄せる必要もありません。続けるかどうかは、面談の冒頭で「ご覧になりましたか」と聞けば判断できます。この物差しを決めずに始めると、続けるほどやめにくくなります。

手が足りない事務所は、やらないことを先に決める

士業の事務所で、Webにかけられる手は多くありません。所長ご自身か、事務の合間の職員の方か、ということが多いはずです。

そういう状態でやることを足すと、どれも中途半端になります。ですので、やることを決める前に、どこに手をかけないかを先に決めたほうがよいと感じています。何をやらないかを決めるのも、判断のうちです。

その前提で、比べていただきたいものがあります。仮にSNSに毎週いくらかの時間を使うとして、同じ時間を、検索から来た方が読むページの書き直しに使った場合とどちらがよいか、という比較です。

先ほどの事務所で当社が手をかけたのは、その書き直しのほうでした。何をどう書き直したかは過去の記事を書き直すべきか、新しく書くべきかに、二年の経過は相続の事務所のホームページで、二年のあいだにやったことに書いています。

御事務所でも、今日その場で確かめられます。ご自分のサイトの記事の一覧を開いて、最後に手を入れたのがいつかを見てください。そのうえで、依頼者が使いそうな言葉で実際に検索して、そのページが出てくるかどうかを見てください。出てこないページがあるなら、そこに手を入れる余地が残っているということです。

SNSに使うつもりの毎週一時間を、検索に出ていない記事一本の書き直しに回してください。投稿は流れますが、書き直したページは残ります。