「土地家屋調査士 集客 方法」で調べると、ほかの業種と同じように、ホームページ、ポータルサイト、SNS、広告、紹介と、手段を並べた記事が出てきます。ただ土地家屋調査士の仕事は、依頼する人が自分から事務所を探すより、ハウスメーカーや工務店、不動産会社、司法書士から回ってくることが多い仕事だと当社は見ています。そして連合会の職務倫理規程は、紹介を受けたことに対価を払うことを禁じています。紹介が中心なのに、紹介料という手が使えない。ここが、ほかの業種の集客の記事をそのまま当てはめられないところです。
この記事では、依頼が生まれる場面ごとに入口を分け、紹介元、地図、ホームページ、個人からの相談の役割と、手をつける順番をまとめます。開業している調査士の方や、これから開業する方に向けて書いています。当社は法律の専門家ではないので、個々の判断は所属の調査士会で確かめてください。
この記事の結論
- 当社の見立てでは、調査士の依頼の多くは、建物を建てた、土地を分けて売る、といった取引の途中で、取引に関わる会社や士業から回ってきます。集客の中心は紹介元との関係で、ホームページはその紹介元が「この事務所なら」と人に渡せる確かめ先です。
- 紹介元には、紹介料ではなく、頼みやすさで応えます。業務ごとの報酬の目安、かかる日数、必要な書類を一枚ずつのページにしておくと、紹介元がお客様に説明しやすくなります。
- 個人が自分で探す場面もあります。相続した土地をどうするか、隣との境界がはっきりしない、といった相談です。法務省の相続土地国庫帰属制度では、境界が明らかでない土地は申請の段階で却下されるとされていて、こうした用件のページは、個人の相談の入口になります。
依頼が生まれる場面と、使う言葉
言葉は当社が想定した例で、検索の回数を調べたものではありません。
| 場面 | 誰が探すか | 使いそうな言葉の例 | 事務所の側で用意するもの |
|---|---|---|---|
| 建物を新築した(建物表題登記) | ハウスメーカー、工務店、司法書士 | 事務所の名前 | 報酬の目安、日数、必要な書類、連絡の窓口 |
| 土地を分けて売る(分筆、境界の確定) | 不動産会社、土地の持ち主 | 「土地 分筆 費用 ◯◯市」 | 報酬の目安と、何で金額が上がるか |
| 建物を壊した(建物滅失登記) | 解体業者、持ち主 | 「建物滅失登記 費用」 | 報酬の目安、自分で申請する場合との違い |
| 相続した土地をどうするか | 相続人 | 「相続 土地 境界 ◯◯市」「国庫帰属 境界」 | 境界をはっきりさせる手順と、ほかの士業との分担 |
| 隣と境界でもめている | 土地の持ち主 | 「境界 トラブル 相談 ◯◯市」 | 相談の流れと、受けられることと受けられないこと |
上の三行は、紹介元が名前で事務所を確かめる場面です。下の二行は、個人が言葉で探す場面です。ホームページは両方に答えます。
入口ごとの役割分担
| 入口 | 役割 | 職務倫理規程で気をつけること |
|---|---|---|
| 紹介元(ハウスメーカー、工務店、不動産会社、司法書士など) | 取引の中で依頼を回してもらう | 紹介を受けたことに対価を払わない(第14条第3項)。紹介したことの対価も受け取らない(同条第2項) |
| ホームページ | 紹介元が渡せる確かめ先と、個人の用件の入口 | 虚偽や誇大な広告をしない(第17条)。報酬の基準の説明の入口にする(第29条) |
| Googleビジネスプロフィール | 事務所の名前や「近く」で探す人に、場所と電話番号を見せる | 事務所の名前に地名や業務の名前を足さない(Googleのガイドライン) |
| 紹介サイト・集客サービス | 個人の依頼と出会う | 支払いが問い合わせや受任の件数に連動する形は、第14条第3項に当たらないかを会で確かめる |
| 勉強会・相談会 | 紹介元や地域の人に覚えてもらう | 不当な手段で依頼を誘致しない(第14条第1項) |
Googleのガイドラインは、ビジネス名を店舗や看板、ウェブサイトで実際に使っている名称にそろえ、所在地やサービスの説明を名前に加えないこととしています。
手をつける順番
- 紹介元の一覧を作る。この一年に依頼を回してくれた会社と士業を書き出し、それぞれ何の業務だったかを並べます。
- 業務ごとのページを作る。建物表題登記、土地分筆登記、境界の確定、建物滅失登記のように、紹介元から多く来る業務から一枚ずつ。報酬の目安、かかる日数、用意する書類、現地の条件で金額が変わる点を書きます。
- 報酬の目安を載せる。連合会の報酬ガイド(2026年6月1日現在)は全国平均を示していて、たとえば建物表題登記の平均は91,740円(消費税と実費を含まない)です。事務所の金額か全国平均かを分けて書き、何で金額が上がるかを同じ画面に置きます。
- 地図の情報を合わせる。営業時間、電話番号、事務所の場所。
- 個人の用件のページを作る。相続した土地、境界のトラブルなど、事務所で受けてきた相談を一枚ずつ。ほかの士業(司法書士、弁護士)に回す場面も書いておくと、読む人が迷いません。
- 紹介サイトや集客サービスは、支払いの形を会で確かめてから使う。
紹介元ごとに、知りたいことは違う
紹介元は、お客様に調査士を紹介したあと、その仕事が自分の取引の日程に間に合うかを気にしています。当社の見立てでは、紹介元ごとに知りたいことは次のように分かれます。業務ごとのページには、この問いへの答えを先に書いておくと、紹介元がそのままお客様に渡せます。
| 紹介元 | 気にしていること | ページに書いておくこと |
|---|---|---|
| ハウスメーカー・工務店 | 引き渡しまでに登記が間に合うか | 依頼から申請までの日数の目安、早めに知らせてほしい時期、連絡の窓口 |
| 不動産会社 | 売り出しや決済の日までに分筆や境界の確定が終わるか | 日数が延びる場面(隣の土地の所有者が多い、立会いの日程が合わないなど)と、途中の連絡の仕方 |
| 司法書士 | 表示の登記と権利の登記の順番がそろうか | 登記が済んだときの連絡の仕方と、書類の受け渡し |
| 解体業者 | 建物を壊したあと、滅失登記を誰がするか | 依頼の方法と、持ち主に用意してもらうもの |
この表は当社が想定したもので、地域や事務所によって違います。御事務所で紹介元に「いつも何を聞かれるか」を書き出すと、そのままページの見出しになります。
職務倫理規程と国庫帰属制度で、集客の場面で押さえること
日本土地家屋調査士会連合会の土地家屋調査士職務倫理規程(2025年8月22日施行)は、第14条で、不当な手段で事件の依頼を誘致してはならない(第1項)、依頼者の紹介をしたことについて対価を受け取ってはならない(第2項)、紹介を受けたことについて対価を支払ってはならない(第3項)としています。第17条は、広告や宣伝で虚偽や誇大な内容、品位を欠く内容を禁じ、第12条は業務上知った秘密を守ることを求めています。
紹介元へのお礼を品物や金銭で考えたくなったときは、第14条第3項に照らして所属の会で確かめます。紹介元に返せるものは、返事の速さ、日程の見通し、紹介元のお客様への説明のしやすさです。業務ごとのページは、そのための道具になります。
相続した土地の相談については、法務省の「相続土地国庫帰属制度において引き取ることができない土地の要件」が、境界が明らかでない土地や、所有権の存否や範囲に争いがある土地を、申請の段階で却下される類型に挙げています。境界が明らかとされるには、申請者が認識している隣の土地との境界が表示されていること、隣の土地の所有者の認識と食い違いがなく争いがないことの両方が要るとし、測量や境界確認書の提出までは求めていないとしています。ページを作るときは、「国庫帰属には測量が必須」のような書き方をせず、この線に沿って、事務所が手伝えることを書きます。
報酬の目安の載せ方と、ホームページを作る費用の幅は、土地家屋調査士のホームページ制作の費用:作り方ごとの目安と、報酬の目安の載せ方にまとめています。
数え方:紹介元ごと、業務ごとに分ける
- 受けた依頼の記録に、「誰からの紹介か、何を見て来たか」を一行残す。紹介元の名前、ホームページ、地図、個人の直接の連絡、で分けます。
- 業務の種類と報酬の額を同じ行に書く。
- 半年ごとに紹介元ごとの件数を並べ、増えている先と止まっている先を見る。
止まっている紹介元には、担当者が替わっていないか、事務所の業務ごとのページを渡せているかを確かめます。記録の形はホームページからの問い合わせの数え方に、チラシやLINEのQRコードに付ける目印の作り方はUTMパラメータの作り方に、地図の側の数字の見方はGoogleビジネスプロフィールのパフォーマンスの見方に書きました。
当社の進め方
当社は、作って終わりにせず、問い合わせが来るようになるまで手を入れ続ける形でホームページの運営をお引き受けしています。始める前に商圏調査(5万円・税別、二週間ほど。お引き受けに進めば契約料に充当)で、その地域で検索されている言葉と1ページ目の顔ぶれを数え、上の表のどの入口から手を入れるかを決めます。料金と進め方は料金に載せています。紹介料にあたる支払いを含まない形かどうかは、契約の前に所属の会で確かめてください。
今日、御事務所で確かめられること
- この一年の依頼を、紹介元ごとに数えます。
- 紹介元から多く来る業務について、報酬の目安、日数、書類を一枚にしたページがあるかを見ます。
- 使っている集客のサービスがあれば、支払いが問い合わせや受任の件数に連動していないかを契約書で確かめます。
- 地図の事務所の名前に、地名や業務の名前が足されていないかを見ます。
- 相続した土地の相談を受けたことがあれば、その流れを一枚のページにできるかを考えます。
出典
- 日本土地家屋調査士会連合会「土地家屋調査士職務倫理規程」(令和7年8月22日施行。第12条、第14条、第17条、第29条) https://www.chosashi.or.jp/media/syokumu-rinri_20250822.pdf
- 日本土地家屋調査士会連合会「土地家屋調査士 報酬ガイド」(令和8年6月1日現在) https://www.chosashi.or.jp/media/hoshuguide_single_r07.pdf
- 法務省「相続土地国庫帰属制度において引き取ることができない土地の要件」 https://www.moj.go.jp/MINJI/minji05_00461.html
- Google ビジネス プロフィール ヘルプ「Google に掲載するビジネス情報のガイドライン」 https://support.google.com/business/answer/3038177?hl=ja
- (法務省・Googleの資料は2026年10月17日確認。連合会の資料は土地家屋調査士の制作の記事で同日確認したもの)