「紹介 増やす 方法」「紹介営業 コツ」で検索すると、上位の記事の多くは、満足度を上げる、紹介をお願いする時期を決める、紹介者に特典を用意する、といった「紹介を頼む側」の工夫を並べています。どれも間違いではありません。ただ、紹介は、紹介する人が自分の言葉で誰かに話してくれて、はじめて起きます。頼む側の工夫だけでは、紹介する人がどこで手を止めているのかが見えません。
この記事は、地方の中小事業者と士業の事務所を念頭に、紹介する人が困る場面を三つに分け、それを減らす準備(紹介用の一枚、紹介された人が確かめるページ、お礼の連絡)を書きます。あわせて「紹介 お礼 相場」で調べる方が知りたい金額の公開例と、お礼を決める前に確かめる決まり(景品表示法、税務、士業の規程、SNSのステルスマーケティング規制)を、公開資料で確かめた範囲でまとめます。
先に結論
- 紹介が止まるのは、紹介する人の気持ちより、手間の側であることが多いと当社は見ています。何を頼める会社か一言で言えない、紹介した相手に何を見せればよいか分からない、紹介したあとどうなったか分からない、の三つです。
- 三つに対応する準備は、紹介用の一枚、紹介された人が確かめるページ、お礼の連絡です。一枚とページは同じ言葉でそろえます。
- お礼の、業種を越えた「相場」を示す公的な統計は見当たりませんでした。公開されている不動産仲介の紹介特典は、成約を条件に5万円分前後の商品券などで、取引の大きさに合わせて決められています。
- 金額より先に決まりを確かめます。紹介者を自社の顧客に限ると景品表示法の総付景品の規制がかかります。弁護士は紹介の対価を払うことも受け取ることもできません。お礼を渡した人にSNSで書いてもらうなら、広告であることが分かるようにします。
紹介する人が手を止める三つの場面
この見出しの内容は、当社の見立てです。紹介は、紹介する人にとっては頼まれてもいない手間で、しかも紹介した相手がうまくいかなければ、自分の信用にかかわります。紹介が少ないとき、紹介する人が満足していないとは限りません。満足していても、次の三つのどこかで止まっていることがあります。
何を頼める会社か、一言で言えない
「いい会社だよ」とは言えても、「◯◯で困っているなら、あそこ」と言えなければ、紹介は目の前の人の困りごとと結びつきません。紹介する人は、自分が頼んだ用件しか知らないことがほとんどです。工務店なら新築も改修も外構も受けるように見え、税理士事務所なら法人も個人も相続も並んでいる。そうなると、目の前の人の相談が受けてもらえる範囲なのか、紹介する人には判断できず、「今度聞いてみるね」で止まります。
紹介した相手に、何を見せればよいか分からない
紹介する人は、話したあとに名刺の写真やホームページのアドレスを送ることが多いはずです。送った先がトップページだと、紹介された人は料金や相談の流れを自分で探すことになります。
当社が2026年9月24日に地方の事業者のサイトを同じ項目で開いた記録では、弁護士で着手金と報酬金を金額で載せていると確かめられたのは24事務所中11、お客様の声を載せていたのは松江で8事務所中0、旭川で8事務所中1、相談の入口が電話だけの法律事務所は松江で8中3、旭川で8中4でした(ホームページ集客の方法:検索・地図・広告・SNS・紹介でサイトが担う役割)。紹介された人が夜にサイトを開き、料金も声も分からず、電話の受付時間も過ぎている。紹介する人は、相手がそうなるかもしれない先に、自分の名前を添えて送ることをためらいます。
紹介したあと、どうなったか分からない
紹介したあと何の連絡もないと、紹介する人は「迷惑だったのでは」「相手に失礼はなかったか」と気にしたままになります。次に同じような人がいても、もう一度名前を出すかどうか迷います。反対に、つないだ結果が一言でも返ってくれば、次に紹介するときの迷いは小さくなる、というのが当社の考えです。
準備1:紹介用の一枚
紹介する人が話すときに使え、そのまま相手に渡せるものです。会社案内とは目的が違います。会社案内は会社を知らない人に全体を見せるもの、紹介用の一枚は「◯◯で困っている人」に、頼める用件と最初の一歩だけを伝えるものです。当社が勧める項目は次のとおりです。
| 項目 | 書く中身 | 書くときの注意 |
|---|---|---|
| 頼める用件 | よく受ける用件を三つまで | 業務の名前ではなく、相手が口にする困りごとの言葉で書く(「相続税申告」より「親が亡くなり、申告が要るか分からない」) |
| 受けない用件 | よそを案内しているもの | 一行でよい。紹介する人が迷わなくなる |
| 地域 | 出向ける市町村と、来てもらう場所 | 「◯◯県全域」と広げず、実際に動ける範囲 |
| 料金の目安 | 最初の相談の料金と、よくある用件の幅 | 金額と一緒に、何を含むかを一言 |
| 最初の一歩 | 連絡の手段、返事までの日数、その後の流れ | 電話の受付時間と、時間外の連絡先 |
| 紹介者の伝え方 | 「◯◯さんの紹介」と伝えてもらえば分かる旨 | 受付をする人にも同じことを共有しておく |
頼める用件を三つに絞るのは、紹介する人が覚えて口にできる数だからです。すべての用件はホームページに任せ、一枚には、紹介する人が「こういう人なら」と思い浮かべられる用件だけを書きます。書き方の形を、空欄つきで示します。実在の会社ではなく、項目の並べ方の例です。
- ◯◯市・◯◯市で、◯◯にお困りの方のご相談を受けています。
- よくあるご相談:◯◯、◯◯、◯◯
- お受けしていないもの:◯◯(その場合は◯◯をご案内しています)
- 最初のご相談:◯分、◯◯円(◯◯の場合は無料)
- ご連絡:電話◯◯(平日◯時〜◯時)、フォームは24時間受付。◯日以内にお返事します。
- 「◯◯さんの紹介」とお伝えください。
形は、紙の一枚と、スマートフォンで送れるページの両方があると、紹介する人が場面に合わせて使えます。紙は会って話すとき、ページはLINEやメールで送るときに使われます。ページにするなら、次の「確かめるページ」と兼ねてもかまいません。
紹介元ごとに、頼める用件を書き分ける
紹介元がお客様の場合と、他の士業や取引先の場合とでは、紹介する人が話す相手が違います。たとえば税理士が社会保険労務士を紹介するなら、相手は経営者で、用件は労務です。紹介元ごとに「頼める用件」を書き分けた一枚を作ると、紹介元が自分のお客様に合わせて話しやすくなります。社会保険労務士の場合の、紹介される業務と規模を名指しした一枚の考え方は、社労士の集客方法:紹介・セミナー・助成金など経路の全体図と決まりにも書きました。
準備2:紹介された人が確かめるページ
紹介された人の多くは、連絡の前に社名を検索してホームページを開く、と当社は見ています。そこで確かめたいのは、紹介する人の話のとおりか、自分の用件を受けてもらえるか、いくらかかるか、どう連絡すればよいか、です。ホームページが紹介の「確かめ先」になることは全体図の記事で書いたので、ここでは紹介に絞って、もう一歩具体的にします。
要になるのは、一枚に書いた「頼める用件」と同じ言葉で、用件ごとのページを用意することです。紹介する人が「相続の申告が要るか分からないなら、あそこ」と言ったのに、サイトのメニューに「資産税業務」とだけあると、紹介された人は自分の用件と結びつけられません。言葉がずれないことが、紹介する人の一言を裏づけます。確かめるページに置くものは、次の四つです。
- 頼める用件ごとの説明と料金の幅(何を含み、何が別にかかるか)
- 似た用件の事例(掲載の了解を取った範囲で)
- 最初の相談の流れと、受けられない用件のときにどこを案内するか
- 連絡の手段、返事までの日数、電話の受付時間外の連絡先
受けられない用件のときの案内先まで書いておくのは、紹介する人のためでもあります。紹介された人が断られたと感じずに済めば、紹介する人の顔もつぶれません。事例に何をそろえ、了解をどう取るかは事例ページの作り方:施工事例・お客様の声に載せる項目と同意・表示の決まりにまとめています。
紹介の数は、受付で記録する
紹介が増えているかどうかは、問い合わせごとに「誰の紹介か」を受付で記録するのが、いちばん確かな方法です。ホームページの側では、GoogleのSearch Console(無料の道具)で社名を含む検索語句のクリック数を見ると、名前を知って確かめに来た人の増減の目安になります。ただし社名の検索には、看板やチラシで知った人、以前のお客様も混ざるので、目安にとどめます。
準備3:お礼の連絡
お礼は、品物より先に連絡だと当社は考えています。紹介する人が知りたいのは、自分がつないだあと、どうなったかだからです。連絡の区切りは三つです。
- 連絡が来たとき:「◯◯さんからのご紹介で、ご連絡をいただきました。ありがとうございます」
- 最初に会ったあと:「先日お会いして、お話を伺いました」
- 決まったとき、決まらなかったとき:「お引き受けすることになりました」「今回はお引き受けできませんでしたが、◯◯をご案内しました」
決まらなかったときこそ、一言返します。紹介する人が気にしているのは、結果よりも、相手に失礼がなかったかどうかであることが多いからです。
伝えるのは、紹介された人が了解した範囲まで
報告に入れてよいのは、紹介された人が了解した範囲です。士業には法律上の守秘の義務があり、税理士法第38条と社会保険労務士法第21条は、業務で知った秘密を正当な理由なく漏らすことを禁じています。当社は税理士の集客方法の記事などで、紹介元への報告は契約したかどうかまでにとどめ、それ以上は依頼者の了解を取ってから、と書きました。
士業でなくても、相談の中身は、紹介した人が知り合いだからこそ知られたくないことがあります。当社は、最初の連絡の段階で「◯◯さんに、ご連絡をいただいたことをお伝えしてもよろしいですか」と一言確かめておくことを勧めています。了解の範囲が決まっていれば、三つの区切りの連絡も迷わずに出せます。
紹介のお礼の相場:公開されている例
「紹介 お礼 相場」で検索すると、商品券やギフトの金額を挙げる記事が出てきます。ただ、業種を越えて集めた統計は、当社が探した範囲の公的な資料には見当たりませんでした。ここでは、各社が自社のサイトで公開している紹介特典を例に挙げます(2026年10月3日に各社の紹介特典のページで確認)。
| 公開している会社 | 紹介者への特典 | 条件 |
|---|---|---|
| 東急リバブル(売買) | 1回目は5万円分、2回目以降は10万円分の商品券またはAmazonギフト | 紹介された人が紹介日から1年以内に売買契約を結んだ場合。紹介者・紹介された人とも個人 |
| 東急リバブル(賃貸) | 5,000円分の商品券またはAmazonギフト | 紹介された人が紹介日から1年以内に賃貸借契約を結んだ場合。個人 |
| 野村の仲介プラス | 5万円相当のギフトカード。ただし5万円と、支払われた仲介手数料(税込)の10分の1のうち低いほう | 同社で取引したお客様などが紹介し、紹介された人が成約した場合 |
どちらも成約を条件にし、金額を取引の大きさ(売買か賃貸か、仲介手数料の額)に合わせています。不動産の売買は一件の取引額が大きい業種なので、この金額をそのまま他の業種に当てはめることはできません。当社の見立てでは、世間の相場を探すより、自社の一件あたりの利益と、次の見出しの決まりから上限を決めるほうが確かです。
お礼を決める前に確かめる三つの決まり
景品表示法:紹介者を自社の顧客に限ると、景品の規制がかかる
消費者庁の景品に関するQ&A(Q31)は、紹介者キャンペーンの謝礼について、「自己の供給する商品又は役務の購入者を紹介してくれた人(紹介者)に対する謝礼は、取引に付随する提供に当たらず、景品類には該当しません」としたうえで、「紹介者を自己の供給する商品又は役務の購入者に限定する場合には、取引に付随する提供となり、景品類に該当し、通常、総付景品の規制の対象となります」と答えています(出典:消費者庁「景品類とは」Q&A)。
総付景品(くじなどによらず、取引した人にもれなく渡す景品)の上限は、消費者庁の「景品規制の概要」で次のとおりです。
| 取引価額 | 景品類の最高額 |
|---|---|
| 1,000円未満 | 200円 |
| 1,000円以上 | 取引価額の10分の2 |
「お客様限定のご紹介特典」のように紹介者を自社の顧客に限る形は、よく見かけます。その形にするなら、お礼の額がこの上限の範囲かを確かめます。業界によっては、公正競争規約(業界団体が定め、消費者庁長官と公正取引委員会の認定を受けた自主的なルール)で別の上限が決まっていることもあるので、所属する業界団体にもあわせて確かめてください。
税務:紹介のお礼が交際費になるかどうか
法人が紹介のお礼に金品を渡したときの扱いについて、国税庁の租税特別措置法関係通達61の4(1)-8(情報提供料等と交際費等との区分)は、情報の提供やあっせんを業としていない人に対価として金品を渡した場合でも、次の要件をすべて満たすなど正当な対価の支払いと認められるときは、交際費等に当たらないとしています(出典:国税庁「第1款 交際費等の範囲」)。
- その金品の交付があらかじめ締結された契約に基づくものであること
- 提供を受ける役務の内容が当該契約において具体的に明らかにされており、かつ、これに基づいて実際に役務の提供を受けていること
- その交付した金品の価額がその提供を受けた役務の内容に照らし相当と認められること
裏を返すと、取り決めのないまま、その都度の気持ちで渡すお礼は、交際費として扱われることがありえます。御社の場合にどう扱うのがよいかは、規模や状況で変わるので、顧問の税理士に確かめてください。当社の見立てでは、紹介制度を設けるなら、条件と金額を前もって書いておくことが、紹介する人にとっての分かりやすさと、経理の整理の両方に役立ちます。
士業:紹介の対価そのものが禁じられていることがある
弁護士は、日本弁護士連合会の弁護士職務基本規程第13条により、依頼者の紹介を受けたことへの謝礼その他の対価を払うことも、依頼者を紹介したことへの対価を受け取ることもできません(詳しくは弁護士の集客方法:経路ごとの役割と、業務広告の規程で気をつけること)。税理士と社会保険労務士については、当社が読んだ法と会則の範囲では、他の士業とのあいだの紹介料を名指しした条文は見当たりませんでした。一方で、資格のない業者から業務のあっせんを受けることは禁じられています(税理士は日本税理士会連合会の会則第61条など、社会保険労務士は社会保険労務士法第23条の2)。紹介する側の士業にもそれぞれの会の決まりがあるので、お礼の形は、双方が所属の会に確かめてから決めます。
対価が使えない場合でも、ここまでの一枚、確かめるページ、お礼の連絡は使えます。お金を使えない士業にとっては、紹介する人の手間を減らすことが、紹介を増やす手段の中心になると当社は考えています。
紹介者にSNSで書いてもらうとき:ステルスマーケティングの規制
2023年10月1日から、広告であることを隠した宣伝(ステルスマーケティング)は、景品表示法の不当表示として規制されています。紹介とSNSを組み合わせるときに分かれ目になるのは、紹介する人の投稿が「事業者の表示」に当たるかどうかです。消費者庁のQ&Aのうち、紹介にかかわりそうなものを当社が読んだ範囲で並べます(出典:消費者庁「ステルスマーケティングに関するQ&A」)。
| 場面 | 消費者庁のQ&Aの考え方 |
|---|---|
| お客様が頼まれずに、自分の意思で投稿した(Q21) | 事業者の依頼に応じたものでなく、自主的な意思による表示であれば「事業者の表示」に当たらず、「PR」などの記載は要らない |
| 個別に投稿を頼み、報酬を渡す(Q19) | 「事業者の表示」に当たる可能性が高い |
| 商品やサービスを無償で提供し、投稿を頼む(Q5) | やり取りの内容、無償提供の目的、取引関係の有無など、個別の事情によっては「事業者の表示」に当たる |
| 星5をつけることを条件に割り引く(Q6) | 事業者が表示の内容を決めているといえ、「事業者の表示」に当たる |
| 「◯◯社の社員です」とだけ書く(Q12) | 所属を書くだけでは、事業者の表示であることが明瞭とはいえない場合がある |
ここからは当社の見立てです。紹介のお礼を渡している相手に「SNSにも書いてください」と頼むと、その投稿は事業者の表示として扱われる側に寄ります。頼むなら、「広告」「PR」など広告であることが分かる表記をお願いします。紹介のお礼と投稿のお願いは別のものとして扱い、お礼の条件に投稿を入れないほうが、紹介する人も迷わずに済みます。いただいた声を自社のサイトに載せるときの決まりは、先に挙げた事例ページの記事に書いています。
今日、自社で確かめられること
- 過去1年の新しい依頼を並べ、紹介で来たものに紹介元の名前を書き込みます。分からないものは、次に会ったときに聞きます。
- 紹介をくれた人に一人、何と言って紹介してくれたかを聞きます。その言葉が、自社のサイトのどのページに書いてあるかを探します。
- 頼める用件を、お客様が口にする言葉で三つ書き出し、受けない用件を一つ書きます。これが紹介用の一枚の下書きになります。
- スマートフォンで社名を検索して自社のサイトを開き、紹介された人のつもりで、料金、最初の相談の流れ、電話の受付時間外の連絡先にたどり着けるかを確かめます。
- 直近の紹介で、紹介元に結果を伝えたかを振り返ります。伝えていなければ、紹介された人の了解の範囲で一言送ります。
- 紹介のお礼を渡しているなら、紹介者を自社の顧客に限っていないか、限っているなら金額が総付景品の上限の範囲か、士業なら所属の会の規程に照らして問題がないかを確かめます。
一つ目と二つ目だけでも、御社の紹介がどこから来ていて、紹介する人がどんな言葉で話しているかが見えてきます。その言葉が、一枚とページをつくるときの出発点になります。