1. 士業業界における市場環境
1-1. 士業の業務環境と市場の課題
士業(税理士・行政書士・司法書士・弁護士・土地家屋調査士)は、それぞれ特定の法律に基づき、独占業務を有する。しかし、近年の市場環境変化により、以下の課題が発生している。
✅ 価格競争の激化
- 相続税申告、登記手続き、遺言書作成などの士業業務は、オンライン化・自動化が進んでおり、単価の下落傾向が続いている。
- 特に、相続登記は2024年4月の相続登記義務化を控え、市場拡大の一方で競争も激化している。
✅ 生前案件の受注率が低い
- 士業の多くは反響営業に依存しており、積極的に生前案件を提案・獲得する意識が低い。
- 結果として、顧客は税理士・銀行・FP(ファイナンシャルプランナー)などの他業界に相談し、士業が案件を取りこぼしている。
✅ 他業界との競争の激化
業界 | 相続案件への関与方法 | 士業への影響 |
---|---|---|
税理士 | 相続税申告、相続対策の税務アドバイス | 税務相談を入り口に、士業(司法書士・弁護士)へ案件を流さないケースが増加 |
銀行・信託会社 | 遺言信託、資産管理信託 | 遺言作成・管理を銀行内で完結させることで、士業への案件流入を阻害 |
保険会社・FP | 生命保険を活用した相続税対策 | 士業に相談せず、保険商品の提案のみで完結する事例が増加 |
2. サービスの概況
2-1. サービスの特徴
当サービスは、士業(特に行政書士・司法書士・税理士)向けに、生前案件の獲得を支援し、受注率を向上させる仕組みを提供しているという部分がコンセプト。
✅ 士業が自ら営業せずに、生前案件を増やせる仕組みを提供
✅ 顧客に生前対策の必要性を伝え、相談・成約へとつなげる支援を行う
✅ 士業が競争力を維持できるよう、案件の取りこぼしを防ぐ仕組みを提供
2-2. 強み
✅ 1. 競争環境の中で士業が案件を取りこぼさない仕組みを提供
- 士業は営業が苦手であり、受注に積極的になれないため、案件獲得を支援する仕組みにはニーズがある。
- 銀行・税理士・保険会社が案件を囲い込む前に、士業が生前案件を確保できる環境を整える点は競争優位性がある。
✅ 2. 受注率向上の仕組みがあることで、士業が「待つだけの営業」から脱却できる
- 士業が自ら営業をしなくても、顧客の意識を高め、成約につなげる支援が提供できる点は有効。
- 従来の紹介営業に依存せず、新規案件獲得の手段を増やせる。
2-3. 弱み(課題)
⚠ 1. 士業の意識改革が必要
- 士業は営業行為に強い抵抗があり、「積極的に生前案件を取る」という意識を持たないことが多い。
- 特に行政書士・司法書士の一部には、「受注支援=営業代行」と捉え、抵抗を示す可能性がある。
⚠ 2. サービスの効果を数値で示しにくい
- 「受注率がどれくらい上がるのか?」は客層や母数によって異なる可能性がある。
- 成果報酬型であればリスクは少ないが、士業側の導入ハードルを下げる説明が必要。
3. サービス導入における法的リスク
3-1. 士業の紹介料・業務斡旋に関する規制
貴社のサービスが士業向けに提供される場合、紹介料(キックバック)や業務斡旋に関する法規制を適切に考慮する必要がある。
士業 | 紹介料の受領・支払いに関する規定 | 考慮すべき点 |
---|---|---|
税理士 | 法律上の禁止規定なし | 契約内容を明確にし、適正な手数料体系を設計する必要がある。 |
弁護士 | 事件のあっせん禁止(弁護士法第27条) | 報酬を得る目的で案件を紹介する形はNG。 |
司法書士 | 業務の紹介料の授受は禁止(司法書士法第49条の2) | 単なる紹介ビジネスではなく、付加価値を提供する必要がある。 |
行政書士 | 明確な法的禁止規定なし | 行政書士会の指導対象となる可能性がある。 |
営業活動におけるポイント
- 士業に案件を紹介する形ではなく、「業務提携」に基づく関係を構築することが望ましい。
- 手数料モデルを採用する場合、契約内容を明確にし、士業の法的リスクを回避する必要がある。
3-2. 非弁行為について
弁護士法第72条により、弁護士資格のない者が法律事務を行うことは禁止されている。また、弁護士と業務を不適切に分担する「非弁提携」も禁止されている。
サービスが非弁行為に該当しないよう、以下の点に留意する必要がある。
士業業務 | 独占業務 | 営業活動での注意点 |
---|---|---|
遺言書作成 | 弁護士・行政書士 | 「法的な文言の修正をアドバイスする」ことは非弁行為に該当するため、禁止。 |
相続登記 | 司法書士 | 「登記の方法を指導・代行する」ことはNG。顧客対応は司法書士に委ねる必要あり。 |
遺産分割協議 | 弁護士 | 「相続人に具体的な分割案を提示する」行為は禁止されるため、単なる情報提供に留める。 |
✅ 非弁行為を避けるための対策
- 「情報提供」以上の行為(法的アドバイス)を行わない。
- 士業との契約を明確にし、業務範囲を厳密に区別する。
- 顧客と士業の間に入って、手続きの代行をしない。
4. まとめ
✅ このサービスは士業が生前案件を取りこぼす現状に対して、有効な解決策を提供できる余地がある。
✅ ただし、士業の営業意識は低く、抵抗も強いと感じるため、導入時の説明や意識改革が必要。
✅ 士業ごとの紹介料規制や法的リスクを回避しつつ、契約内容を適切に設計することが重要。
✅ 銀行・保険・税理士との競争環境を理解し、士業が他業界に負けずに案件を確保できる仕組みを整えるべきというポジション。