士業のホームページに問い合わせが来ないのは、名刺として作られているから

この記事は、浜松の相続の事務所を例にしています。2026年9月には、弁護士・司法書士・行政書士・社会保険労務士・税理士の五つの士業で、それぞれ三つの市の検索結果と地元の事務所のサイトを同じ項目で数えました。業種ごとの記録は弁護士、司法書士、行政書士、社労士、税理士に、ホームページで書けることと避けることは士業の広告規程のまとめに、九つの業種を横に並べた数字はデータのページにまとめています。

浜松の上位八事務所を開いて、数えたこと

当社は商圏調査の見本として、静岡県浜松市の相続の分野を、公開されている情報だけで調べました(商圏調査の見本:浜松市×相続)。そのなかで、検索結果に繰り返し出てくる地元の事務所を八つ選び、サイトを一つずつ開いて、同じ項目を横に並べて確かめています。司法書士、税理士、行政書士が混ざった八つです。

手続きごとにページを分けていたのは、八つのうち七つでした。相続登記、相続放棄、遺言、生前贈与。上位にいる事務所は、扱っている業務をほぼ漏れなくページにしています。

具体的な金額を出していたのは、八つのうち三つでした。残りの五つは、頼んだらいくらかかるのかが、サイトを読んだだけでは分かりません。そして、県外や遠方に住むお子さんに向けて、事務所に来なくても手続きが進むことを書いたページは、八つのどこにもありませんでした。

業務の一覧は、ほぼ全員がそろえている。費用と、遠くからでも頼めるかどうかは、ほとんど誰も書いていない。上位の事務所でさえ、そういう偏り方をしていました。

見たのはサイトの作りだけです。各事務所が実際にどれだけ受任しているか、広告をどれだけ出しているかは、外からは分かりません。ページが薄い事務所が仕事をしていない、という意味ではありません。

士業のサイトは、事務所を紹介する名刺として作られている

手続きの一覧、所長の挨拶、事務所の理念、所在地の地図。士業のサイトに並んでいるものは、名刺に刷ってある項目とよく似ています。誰が、どこで、何を扱っているか。

名刺は、会うことがすでに決まった相手に渡すものです。同業の先生や取引先から紹介されて来る人は、依頼するかどうかをおおむね決めたうえでサイトを開きます。その人が確かめたいのは、事務所がきちんと存在していて、先生がどういう人で、どこにあるか。名刺として作られたサイトは、この確認にはしっかり応えます。紹介で仕事が回ってきた事務所のサイトがこの形になるのは、自然なことです。

検索から来る人は違います。まだ誰にも紹介されていません。打ち込むのは業務の名前ではなく、自分の状況の言葉です。親が亡くなったあと、実家をどうすればいいのか。借金があるらしいが、相続しないことはできるのか。そして、出てきた事務所をいくつか開いて、見比べます。

見比べる人が知りたいのは、この事務所が相続放棄を扱っているかどうかより、その先のことです。いくらかかるのか。自分の件は、この事務所だけで済むのか。遠くに住んでいても頼めるのか。名刺には、どれも書いてありません。

手続きごとのページが八つのうち七つにあるということは、そのページを持っていても、見比べる人の目には違いになりにくいということです。名刺の項目をどれだけ丁寧に増やしても、隣の事務所の名刺と並べたとき、同じものが二枚並ぶだけです。

差がつくのは、費用と「どこまで引き受けるか」

手続きのページをもう一本増やすより先に、料金のページに一段落を足す。当社はそう考えています。

「事案により異なります」「お見積もりいたします」としか書かれていないと、見比べる人にとっては、問い合わせるまで何も分からない事務所になります。額を一つに決められないのは本当でしょう。ただ、金額を出していた三つの事務所は、手続きごとに数万円台から二十万円台までの目安を、幅で示していました。何に対する費用か、どういう場合に上がり下がりするか、おおよその幅はどれくらいか。ここまでなら、事案が決まっていなくても書けることを、上位の三つが実際に示しています。

もう一つは、どこまでを引き受けるかです。これは士業ならではの事情です。相続なら、登記は司法書士、申告は税理士、遺産の分け方で争いになれば弁護士と、扱える範囲が分かれています。相談する人は、その区分けを知りません。自分の件がこの事務所で最後まで済むのか、途中で別の先生を紹介されるのかが分からなければ、比べようがありません。見本の調査ではこの項目を数えていませんが、「ここまでは当事務所で、申告は提携の税理士に引き継ぎます」という一行は、名刺の側からは出てこない、見比べる人の側の答えです。

遠方に住むお子さんに向けた書き方は、相続の事務所に限った話として相続の事務所がホームページから相談を増やすにはに書きました。ここでは、来所しなくてもどこまで進むのかを、料金と同じページに一行書いておく、とだけ言っておきます。

三つとも、事務所を紹介する言葉ではなく、見比べている人の問いへの答えです。そして浜松の上位八つでは、そのどれもが、まだ半分以上の事務所で空いていました。

御事務所の地域で、上位三つの事務所を数える

道具を入れていなくても、次の順番で確かめられます。当社が見本の調査でしたことを、三つに縮めたものです。

  1. 御事務所の地域名と、いちばん受けたい業務の名前を並べて検索します(「地域名 相続登記」のように)。
  2. 1ページ目から、全国のポータルや自治体のページを飛ばして、地元の事務所を上から三つ開きます。
  3. 三つそれぞれで、金額の目安が書いてあるか、どこから先を他の士業に引き継ぐか書いてあるか、来所しなくても進むか書いてあるか、を見ます。同じ三点を、御事務所のサイトでも見ます。

上位の三つが費用を書いていなければ、そこは御事務所が一段落書くだけで、見比べる人の目に違いが出る場所です。三つとも書いているなら、その地域では費用はもう並ばれていて、差を作る場所はほかを探すことになります。

上位の三つと作りで並んでいるのに、それでも相談が来ないなら、原因はページではなく商圏の側にあるかもしれません。その業務の需要がもともと少ないか、中心の言葉を地元の事務所が何年もかけて押さえているか。その場合、料金の一段落を足しても数字はほとんど動きません。

士業のサイトは当社の得意分野だが、同じ商圏では一つしか預からない

当社は、相続の事務所のサイトの運営に携わっていて、士業のサイトを得意な分野としています。浜松の見本も、相続を題材にしました。

そのうえで、同じ商圏で同業の事務所を同時にお預かりすることはしていません。理由は、この記事の中身そのものにあります。費用の一段落や、引き受ける範囲の一行が違いになるのは、隣の事務所がまだ書いていないからです。同じ地域の二つの事務所を手伝えば、当社は両方に同じ一段落を書くことになり、違いはそこで消えます。すでにお預かりしている商圏ではお引き受けできないため、愛知県外の事務所様からのご相談を歓迎しています。

また、引き受ける前には、見本と同じ形で商圏を調べます。上位三つと作りで並んでも見込みが立たない商圏だと分かれば、その理由をお伝えして、お引き受けしません。

直すのは料金の一段落から。新しい記事は最後

順番は、手のかからないものから、見比べる人に早く届くものからです。

一番目は、料金のページに、手続きごとの幅と、上がり下がりする理由を書くこと。二番目は、各手続きのページの冒頭に、どこまでを引き受け、どこから先を誰に引き継ぐかを一行書くこと。この二つは、所長ご自身が書くのがいちばん正確で、いちばん早い作業です。外の人間が聞き出して書くより、間違いがありません。すでにサイトに来ている人に効くので、検索の順位が変わるのを待つ必要もありません。

三番目は、いまあるページの書き直しです。検索に出ない設定のままのページや、中身が薄いまま置かれたページがないかを先に確かめます(過去の記事を書き直すべきか、新しく書くべきか)。新しく書くのは、そのあとです。

四番目が、状況の言葉に答える新しいページです。時間がいちばんかかり、書いてから相談に変わるまでに何か月もかかります。ここを続ける体制が事務所の中にないなら、外に任せるかどうかを考えるのはこの段です。相続の事務所で実際にどれだけ時間がかかったかは、事例に数字ごと書きました。

上位の三つの事務所が費用を書いていないなら、御事務所が最初に直すのは記事ではなく、料金のページの一段落です。